シャッターの音に心惹かれて
子育て中のタスクの多さに「好きなこと」を忘れていたのですが、その昔、ティーンの頃、写真や音楽、カルチャーが大好きだったんです。女子高校生写真家のHIROMIXと同世代なので、彼女に憧れて「写ルンです」でたくさんの写真を撮ったっけ。
そんな背景もあり、また今年に入って大好きな写真家さんやフィルムカメラが似合う女性との出会いもあり、フィルムカメラって楽しそうだなと考えるようになりました。写真家さんに撮ってもらったときの「ズシャ」って重たいシャッター音もなんだか心地よくて。
加えて仕事人としての一面ではなく「私」としての発信をしていきたいとも思っていたところでした。そんなタイミングが重なって、「もしかしたら私の趣味、写真っていいかも…!もう1回やってみよう!」と思ったのが、“たまごやきアカウント”の始まりです。
ふりかえってみれば、我が家は田舎町の写真館でした。
七五三や成人式のときにスタジオ撮影をするようなお店で、結婚式~出産祝い~七五三~学校写真~成人式と、かっこよく言えば、その町の子どもたちの成長を撮影していたんです。
余談ですが…、学校写真もやってましたので私の小学校・中学校の卒業写真は父親が撮影です。修学旅行も一緒でした(笑)
とはいえ、ご想像の通り、写真館は斜陽産業。フィルムがデジタルになり、また現像・プリントアウトをするお客様も減り、仕事の多くを占めていた工事写真・現場写真もどんどんデジタルに変わっていきます。
またプリントだけではなく記念撮影もしかり。街の写真館よりも大手の子どもスタジオや自然光で撮影するハウススタジオが選ばれるようになると、田舎町の写真館は徐々に経営が厳しくなってしまい、父には年齢的な目のダメージも相当あり、つい数年前に閉店しました。仕事の張り合いをなくした父はどうも元気がないのです。
実家にはもう使わなくなってしまった撮影機材一式と父のプライド、そして思い出が、たくさん、たくさん眠っているのでした。
そこでふと、「ひょっとしたらフィルムで撮影するのは楽しいかもしれない!」と頭をよぎったのが2024年のゴールデンウィークの時です。
実家に帰ったときに機材の収納棚を見ました。もう何年も使っていない行方のないオールドカメラたちは無造作にしまわれて、まるで出番をまっているかのよう。「フィルムカメラを1台持って行ってもいいかな?」と父に話すと、なんだかうれしそう。収納棚からボディを出し、思い出話と説明を受けながら使えるカメラを選びました。
似たようなサイズ感のカメラが多いのは、「昔はボディを5台も6台も持っていなければ、卒業写真授与が撮れなかった」からだとか。
確かに卒業証書は、1人あたり3枚撮ったとしても、1学年150人近くいたわけですから450枚。フィルムチェンジをする時間がないと思うと、当然、たくさんのボディが必要になります。卒業式で撮り忘れはあり得ませんよね…!
父の職業に対する話はそんなに聞いたことがなかったので、プロの一面を垣間見れて新鮮でした。また、カメラを操作する所作も、何年も同じ動作を繰り返してきたこなれた専門家の動きでとてもきれいだった。
実際にカメラのボディの操作チェックをしてもらったところ、愛用機だったCONTAX RTSは思うように動かず、CONTAX 167MTも動かず…、CONTAX 137だけが動いたのでお預かりすることにしました! あとかわいい CONTAX TSV IIIも我が家に連れて帰ってきました。レンズが「こんにちは」と言っているような動きで出てきます。
父は、父が大切にしていたカメラを私が使うことになり、なんだか得意げでした。最近はふさぎ込みがちですしあまり笑わなくなってしまったのだけど、ファーストショットのレンズを父に向けたら最高の笑顔をしてくれました。
私が心惹かれたフィルムカメラのシャッター音の「ズシャ」、も、とっても重みがあって心地よいものでした。父を撮ったあとに、父と母の2ショットを撮影したら母もうれしそう。レンズを向けるって愛情表現の最たるものの一つだと思う。
「大切にしていたことを引き継ぐことは、堅物の父からあの笑顔が出るほど嬉しかったんだな~」と思い出すと少し泣けてきます。思いを引き継ぐっていうカメラの楽しみ方もあるんだな。
【後日談】
しかし…私が撮影した【ファーストショット】は写っていませんでした…😿このオチまでついて、カメラを継いだ私の思い出。
そんな残念なエピソードまで含めて、私の記憶には父の最高の笑顔が残っています。私の趣味はカメラです! たくさん使おう。
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