映画トンソン荘事件の記録 雑感
前々回に取り上げた蓮(はちす)ダムの帰り道に立ち寄ったユナイテッドシネマ橿原で鑑賞してきた映画トンソン荘事件の記録について紹介したい。
(あらすじ)
詳しくは動画をチェックして頂きたい。
要は"ある事件"の犯人が犯行中に撮影したビデオに本来ならば映らないはずの"あるもの"が映し出された映像を入手することが出来るのだが、入手をしたことにより…というのが映画の内容だ。
ちょっと映画の内容のネタバレになるので映画が気になるという方はこれから記載する内容については見ないでもらいたい。
予告を見ただけでは、本当にそんな事件があって撮影された映像が入手できたと思わされるが、勿論そんな事件は起きていないので全てフィクションだ。フィクションをあたかも本当に起こったことだと勘違いしてしまうような最初の犯行時の映像を入手したという経緯(いきさつ)を冒頭のシーンで説明するあたりから細部に至る所全てが本物だと錯覚してしまう印象を受けた。
これは、正直騙されたと思った。
映画館にいた観客の皆が鑑賞後に口を揃えてフィクションだとは思わなかったと話す。冷静に考えたらいくら保管期限が過ぎた証拠品言えども映画の制作サイドに対し渡すかとなるとプライバシーの問題で業者に回収され所有権を放棄したとしても、実際の映像をスクリーンで流すのは映画のワンシーンでも話されていたことだが被害者の遺族に対する配慮が欠ける行為になり場合によっては映像を使ったことが訴訟になりかねない。
問題のシーンは犯行中に鏡に映る男の背後に本来ならばいないはずの"あるもの"が映されていたわけだが犯行に至るまでに男が女と揉めた末に女性の命を殺めてしまうのだが、犯行が終わり犯人の男が女性の亡骸を呆然としながらベッドに座り込むもじっとはできないから廊下をウロウロしていたりして、ビデオの撮影を止めるという流れになっているのだがこれがひと昔流行っていた呪いのホームビデオを彷彿させる。その辺りの細かな撮影方法であったり、いかにも一般の方が撮影したような工夫が施されている辺りからも、鑑賞客が気にしないであろう映像の細部に至る演出までも細かくチェックされているために非常によく出来ていると思う。
映像に映し出された"あるもの"とは鏡にその場には居ないはずの学生服姿の少年が映し出しされていた。犯人の男が鏡に映し出された少年に気づくと男は鏡に何か映ったと話した後に映像は終わるのだが、男が撮影した映像には、現れた少年が何かを話していることに気付くと音声の解析をしていく。
そして少年の声が解析出来たと同時に少年の訴えが判明した。それが"父さん"と話していた。
仮にジャパニーズホラーならば、父さんという一言が何故少年からそのセリフが出たのかの謎を追うのは追うが根本的な解決をしないまま恐怖が繰り返されていく展開になりやすいが、韓国ホラーは違う。
少年は一体どこから来て何故父さんと訴えたのか。
理由を探るためにまずはトンソン荘のオーナーの取材からスタートしていくとやがてトンソン荘のオーナーが絡んでいたある事件に結びつくのだがここからはホラーではなくミステリーになる。
おっと、これ以上話すと話しすぎになるので続きは是非映画を見て頂きたい。
個人的にはまさかこう繋がるとは予想だにしていなかったからこそ、少年の父さんという訴えがまさかまさかの理由を知ったら言葉には言い尽くし難い感情になるかと思います。そりゃ、憑いてきますね。理由がわかったからこそ、呪いたくて憑いてきたわけではないというのは判明できた。
しかし、そこからエンドに至るまでのシーンは果たして必要なのか。
少年は命絶えてもどうしても訴えたかった自分自身の思いを伝えるために現れた。ならば、少年の目標は達成しているはずなのに何故に取り憑いた編集の女性に対し探させようとしたりして関係のない人に対し思い通りにコントロールしようとしたのか。
最終的にはある寺院へ行き、祭壇に飾ってある少年の遺影が倒れ、ここにいるよというアピールなのかよくわからないが、少年の願いを叶えたと言っても良いはずなのに呪われチームがバラバラになってしまう。バッドエンドで終わらせたいなら、謎をわざとあやふやにさせる(疑問はわざと鑑賞客にぶつけさせる)のが良かったと思うが謎が解けた以上は少年が安堵して昇天していくようならハッピーエンドのほうが辻褄として合うし、観ていてこれだけは何でだ?としか思えなかった。最後までホラーで終わらせたい拘りなのか。
一番の謎は祈祷師による女性のお祓いのシーン。
取り憑かれた女性のリアリティに欠ける。
本当に取り憑かれたのならば、ここ最近の映画でイメージが近いとしたら死霊館のシスター・呪いの秘密に登場するモリースだろう。顔の表情は誰が見てもおい大丈夫か?と訊ねなければならない程やつれ、数日間寝ていない(悪夢に苛まれる)ため眼の下はクマだらけ、食事も喉が通らないために痩せてしまうのだが、取り憑かれた女性を見ていると明らかにやつれた印象もなければ美しさだけは捨てない拘りが垣間見れて、本当に取り憑かれているのかと怪しくなってしまう。女性の取り憑かれぶりとエンドまでの話の展開が残念だったが、メインとなるトンソン荘事件についてがわかりやすい展開だったとも考えたらわたしの評価は次の通り。
★★★★
取り憑かれた女性がリアリティに欠け、またエンドまでの展開もドタバタでホラーに持ち込んだという印象で、色々な意味で蛇足が付いてしまったから良作だと思える映画だったのに勿体ない。しかしながら、韓国ホラーの怖いと思うレベルは申し訳ないが日本のホラーを凌いでしまったなあと思うぐらい力が入っていている。細部においても、伏線を回収するあたりにおいても、韓国ホラーのほうがストーリー性がしっかりしている。今のままではジャパニーズホラーは怖いですか?と言われかねない現状に危機感を抱いている。スペインで上映された映画禁じられた遊び(中田秀夫監督)で低評価だったのは主人公の元同僚が妻を亡くし何もかもやる気が沸かないという割には本人はめちゃくちゃ美の意識は忘れておらず服も洗濯だけはしているようだとも考えたら、果たして精神的に追い詰められた人間が行えるのか?と考えたら今はショックでも美的センスだけは捨てないというの考えがどう推察しても芽生えないからこそ謎でしかない。だったら職場復帰が出来るだろと突っ込まれてもしょうがない。怖さはあっても現実世界からかけ離れてしまっては浮世離れした恐怖でしかない。
映画トンソン荘事件の記録 感想は以上。
上映館は少ないがお金を払い見る価値はあるので是非チェックして頂きたい。
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