「ピーウィーの大冒険」は夢十夜を彷彿とさせる。
【あらすじ】
とある郊外の一軒家に住む
ピーウィー・ハーマンは、
赤い自転車が大のお気に入り。
ある日、マジック・グッズを買いに町へ出た
ピーウィーは何者かに自転車を
盗まれてしまう。
警察は頼りにならないと、彼は自転車を
探すべく独自に調査をし始める。
インチキ占い師から「アラモ」へ向かえと
告げられ、ピーウィーはテキサスの
アラモ伝道所を目指すのだが…。
本作は子供番組で人気を博した
ポール・ルーベンス演じるキャラクター
「ピーウィー・ハーマン」の初主演映画であり、
ティム・バートン長編映画監督デビュー作品。
コミカルな動きと表情なのにどことなく怖い。
このキャラクターが子どもから大人気とは…!
と驚愕したのだけど、日本でいうところの
「バカ殿」みたいな感じかな。
バカ殿だって海外の方が見たら
白塗り?!え?!ってなるよね。
そしてこちらはティム・バートンが初めて
長編映画の監督をした作品。
音楽を担当したのは元オインゴ・ボインゴの
ダニー・エルフマンで、
2人はこの後長いタッグを組むこととなる。
この映画を観終わったときの感覚は
夏目漱石の「夢十夜」を読んだときと似ていると
思った。
【以下ネタバレ有り】
ストーリーは超シンプル。
ピーウィーが盗まれた自転車を探す旅。
それだけ。
ピーウィーの強烈なキャラクターと
シンプルなストーリーの組み合わせは
下手すれば観客が飽きてしまうところだが、
やはりティム・バートンの世界観はすごい。
飽きない楽しさが散らばっている。
たとえば、ピーウィーがベッドで目覚めるシーン。
目覚まし時計についた糸はレコードに
繋がっており、引っ張ると音楽が流れる。
そして掛け布団は自動で下へと巻き取られ、
頭上の窓にはゴジラの置き物。
ピーウィーが穴に飛び込み、ポールをつたって
下に降りるとパジャマからいつものスーツに
着替えが済んでいる。
ただの起床シーンなのに
こんなにも賑やかなのである。
さらにピタゴラスイッチのような
全自動朝食マシーンも登場する。
このオリジナルの機械の魅せ方は後の
「チャーリーとチョコレート工場」などにも
通じるものがありますよね。
その後洗面所へと移動するピーウィー。
窓に目を向けたかと思いきや、実はそれは水槽。
鏡、窓、水槽、魚…。
これ、とても「夢十夜」の第八夜を
思い出しましたよ。
そう思うと、この映画自体が夢の中のよう。
というか、ティム・バートンは夢の世界を
見せてくれるのだなと。
ピーウィーが自転車を探す途中に出会った女性は
トラックを運転中にストップモーションアニメで
化け物へと変わる。
真っ暗闇でピーウィーの目だけが
アニメで浮かび上がるシーンもある。
ここも強烈にティム・バートンが誘う夢の世界
だなと感じた。
ちなみにティム・バートンも
ダニー・エルフマンも
ピーウィー役ポール・ルーベンスからの
直々の指名だったそうで、
ここから映画界での2人の大活躍が
始まったんだなあと驚いた。
劇中では、ピーウィーがオインゴ・ボインゴの
ときのダニー・エルフマンのステップを
真似しているシーンもあり微笑ましい。
そして地味に面白いなと思ったのは
ピーウィーと近隣住民の仲が良好なこと。
ピーウィー「水を撒くよ!」
住民「わかった!(笑顔)」
で大量の水を放出されても変わらず笑顔。
ピーウィーの奇妙さが普通に受け入れられている
世界。
あと、終盤にピーウィーが自転車を見つけ、
取り返そうとして警察に拘束されるのだけど、
そこで「あなたの物語は映画になる!」と言われ、
映画が作られましたよ。というラストなのが
意外で笑ってしまった。
こんなはちゃめちゃコメディで
急にメタ構造になることあるんだ。
その映画をピーウィーに恋するドティに
冒頭で誘われていたドライブインシアターで
観ることになるのも笑った。
こんなはちゃめちゃコメディで
急に伏線回収してくることあるんだ。
随所に色んな映画のオマージュがあったり、
ティム・バートンらしさが盛り込まれていたり、
シンプルなストーリーと強烈なキャラ以外にも
面白さがあり楽しかった。
が、このしばらく後にピーウィー役の
ポール・ルーベンスはポルノ関連で2度逮捕
されており、何とも言えない気持ちに。
【ピーウィーの大冒険/
ティム・バートン】
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