
「映画 クレヨンしんちゃん ヘンダーランドの大冒険」で魔法の呪文を唱えてみれば。
【あらすじ】
新たに群馬に出来た
夢いっぱいのおとぎの国「ヘンダーランド」
印象的なCMで話題沸騰中のテーマパーク。
しかしその実態は魔女たちによる
悪の巣窟だったのだ。
しんのすけは
ねじ巻き人形のトッペマ・マペット、
そしてスゲーナ・スゴイデスのトランプの
力を借り、魔女たちに立ち向かう。
私はこの作品がだーーーーーいすき。
何故かって?
ストーリーも捻りがあるし、
哀愁のある演出も文句なしのハッピーエンドも
全て揃っている。そして何より
トッペマ・マペットが最高だからさ!!!
勇気と知恵と行動力があり、そして優しく、
キュートである。
トッペマには
「私はトッペマ あなたのしもべ
だけど何の役にも立たない
だって私はただのマペット」
というテーマソングがあるのだが、
これが劇中で四度流れる。
その四度がどれも効果的なんですよ!!
全て違う感情を刺激する。
凄いですよ、この演出は。
【以下ネタバレ有り】
トッペマのテーマソングをまず最初に聞けるのは
その登場時である。
幼稚園の遠足で「ヘンダーランド」に来た
しんのすけはみんなとはぐれてしまう。
そして迷い込んだサーカスのテントの中で
サーカス団長のクレイ・G・マッドにより
トッペマの展示を見せられる。
一度目のトッペマのテーマソングの役割は
自己紹介。
どこか物悲しい音楽と歌詞で歌い踊るだけの
ねじ巻き人形だったのも束の間、
しんのすけがそのねじを巻いたことで
自由に生き生きと動き出すトッペマ。
さあ!ここから始まる冒険だ!と思いきや、
テントから抜け出そうとする二人の前に
チョキリーヌ・ベスタが現れ、
魔法を受けたトッペマは消されてしまい、
サーカステントから追い出されるしんのすけ。
えっ?!?!一旦帰宅するんですか?!
面白!!!
家に帰ったしんのすけがお風呂に入っていると
なんとトッペマが現れる。
トッペマは死んだわけではなく、
チョキリーヌの呪いによって夜の間しか
姿を現すことが出来なくなったと話す。
そしてヘンダーランドは、
世界征服をたくらむ異世界の魔女
マカオとジョマの基地であり、
「私の故郷も滅ぼされた。
世界征服計画を阻止する協力をしてほしい」
と頼む。
だがしんのすけは怖がってその頼みを断る。
えっ?!?!一旦断るんですか?!
面白!!!
トッペマは寂しげに去っていくが、
魔法のトランプ スゲーナ・スゴイデスを
脱衣所のしんのすけの服の中に残していた。
しんのすけはそれをおもちゃ箱にしまうのだ。
そして!ここからですよ!はい!
しんのすけのいつもの日常のバックに
トッペマのテーマソングがより一層哀しげに
オルゴール調として流れるのだ。
遅刻してバスに乗り遅れみさえに自転車で
送ってもらったり、風間くんたちと遊んだり、
みさえにイタズラして怒られたり、
ひろしとお風呂に入ったり、
いつも通りの賑やかな日常。
しかし、しんのすけは心の片隅でずっと
トッペマのことを気にしていたのだろうなと。
二度目にかかるトッペマのテーマソングは
そんなしんのすけの心情を映し出す。
さあ、ここからどうやって冒険のスタートを
切るのか。
ここで現れるのが新たな刺客、
雪だるまのようなス・ノーマン・パーである。
ス・ノーマンはひょうきんな人柄と話術で
ふたば幼稚園の子供たちの人気者となる。
が、しんのすけは、トイレでス・ノーマンに
魔法のトランプの在処を聞かれたことで、
危機感と恐怖を覚え、怪しむようになる。
さらに家に帰ると何とそこには
ス・ノーマンがいるのである。
彼は先回りしてみさえの信頼も勝ち取り、
野原家に上がり込んでいたのだ。
しんのすけの訴えは耳に届かない。
この恐怖感凄い。
自分だけが気付いている恐怖。
そんなス・ノーマンの招待で一家で
「ヘンダーランド」へと向かうことになるが、
何事もなく帰宅。だが安心したしんのすけは
風呂場でみさえとひろしに襲われそうになる。
なんと2人は「ヘンダーランド」で捕まり
人形と入れ替わっていたのだ。
ここもめっっっっっちゃ怖い。
「怖いから」とトッペマの頼みを断ったように、
幼稚園児であるしんのすけの恐怖をきちんと
描いている作品だなと感じる。
絶体絶命の状況で再び現れたトッペマ。
偽物の2体を倒してもらい救われたしんのすけは
本物の2人を救出するため今度こそトッペマと
「ヘンダーランド」へ乗り込む覚悟を
決めるのであった。
翌日「ヘンダーランド」に向かうしんのすけ。
駅員さんの助けを借り1人で電車に乗る。
ここ、泣けるんだな。ここ。
座席に座ってじっと前を見つめ動かない
しんのすけ。
周りに座る人々は次々と変わっていく。
だが、しんのすけはじっと座り続けている。
表情に過度な演出がないのが良い。
ただ座り続けているのだ。
そうして夕方になり辿り着いたしんのすけ。
トッペマが現れる夜まで待てず、
1人「ヘンダーランド」の中へと入っていく。
しんちゃん!怖いって断ったあなたが!
1人で敵に立ち向かおうだなんて泣けるよ。
魔法のトランプの力で最初の敵クレイ・Gを
倒そうとするも失敗。
そこにトッペマが現れ、クレイ・Gを倒し、
彼の衣類になっていたひろしを救出する。
本作ではトランプの魔法を試すためや
信じてもらうためのお約束として
しんのすけが雛形あきこさん(ご本人役)を
呼び出すのだが、トランプはしんのすけの願望が
反映しているため、いつもビキニで登場し
自己紹介をする。
これが実写なら、おい…と眉を顰めたくなるが
アニメなのでコメディだなと思える。
こういういつものおバカなノリがあるからこそ
散らばっている感動ポイントを
引き立たせるのだな、とも。
そして!!!きました!!
トッペマのテーマソング三度目!
トッペマは次に現れた敵チョキリーヌを
自分もろとも抱え込み、彼女を撃破する。
チョキリーヌ「お前……死ぬ気?」
トッペマ「運命のレールを元に戻すだけよ」
ここ胸熱すぎる。
だが、トッペマも瀕死となり、
駆け寄ってきたしんのすけに
テーマソングを口ずさむと、
「ちょっと休んだらまた頑張れるから」と
眠りにつくように消えてしまう。
トッペマ…………。号泣です。
三度目、トッペマはテーマソングで
別れを告げるのだ。
何の役にも立たないわけないでしょ。
ただのマペットなわけないでしょ!
トッペマ…。
そしてここではチョキリーヌの衣類になっていた
みさえを救出。
トッペマの力を借りることはもうできない。
野原一家でラスボスへと立ち向かうこの展開。
よく出来ている…。
マカオとジョマとの対決は、
2人のキャラも相まって有名ですよね。
とても魅力的で今も愛されている
キャラクターではあるのだが、
「オカマ」という言葉を当たり前のように
使っていた時代である、ということは
反省しなければならないと思う。
やっとのことで勝利を収めた野原一家。
なんとそこへス・ノーマンが現れ、
襲いかかろうとする。
が、そこに囚われの身から解放された
メモリ・ミモリ姫が現れ、
魔法でス・ノーマンを溶かす。
ス・ノーマンの正体はマカオとジョマによって
姿を変えられたゴーマン王子だった。
冒頭でこの王子は姫を救うべく戦っていたのだが
マカオとジョマに敗れ、その際2人に
「次に会うときはもっとクールな男の子に
してあげる」と言われ封印されたのである。
さらに、トッペマもしんのすけから
ス・ノーマンの話を聞いた際に
「もしかしたら…」勘付いた様子を見せていた。
こういう小さな伏線をちゃんと張ってくれるのも
良い。
そして!きましたよ!四度目!最後の!
トッペマのテーマソング!
メモリ・ミモリ姫は、
「自分の身体が封印されている間、
心は人形のトッペマに宿っていた」と語る。
状況が飲み込めないしんのすけに
いつものテーマソングを口ずさみ微笑む。
すると、しんのすけはトッペマの無事を喜び
抱きつくのである。
四度目のテーマソングは台詞よりも多くのことを
説明するのである。
トッペマーーーーッッッ!!!!!!!!
粋すぎる!!!
だから好きなの。この物語も、トッペマも。
【映画 クレヨンしんちゃん
ヘンダーランドの大冒険/
本郷みつる】
