「寫眞館」で残したい笑顔はありますか?

【あらすじ】
物語の始まりは戦前。
丘の上で写真館を営む主人。
ある日訪れたのは一組の夫婦。
婦人は恥ずかしそうに
下を向くばかりだったが、
写真館の主人はなんとか婦人の笑顔を
写真におさめた。
だが翌年、その夫婦と共にやってきたのは、
ムスッとした彼等の愛娘だった。
またもや主人は必死に
笑顔を引き出そうとするが…。
主人と少女の交流を時代変遷と共に描く
無声短編アニメーション。

絵本が動いているかのような
優しいタッチの可愛らしい絵柄。
シューベルトのピアノソナタにのせて物語は
進んでいく。
明治、大正、昭和と激動の時の流れの中で
変わらない場所がある、変わらない習慣がある、
それがどんなに安心することか。

台詞がなくとも、表情や動きで彼らの思いが
充分に伝わり、こちらの感情を揺さぶります。

【以下ネタバレ有り】


といってもネタバレは存在しない。だって
もうどんなお話なのか、結末がどうなるのか、
だいたい想像はつきますよね。
でもそれでも泣けるんだこれが。

連れてこられた少女が成長していき
節目節目で写真館を訪れる。
自分の結婚の写真も子どもとの写真も決して
笑わない。
そして愛する人たちが戦死し、1人老婆となった
笑顔も涙も見せなかった彼女。
そんな彼女がラスト、写真館の主人と並び
笑顔で写真を撮る。

そりゃ最後こうなりますよ、なラスト。
それが良いんだよ。
何回観ても泣くのはどうしてだろうか?
情報は少ない。どんな生活かもわからない。
何を考え、何が好きで、何が嫌いか、何も
わからない。でも想像は尽きない。

彼女は確かに笑わなかった。
でもそれはきっと人前で、
写真という形に残る中で。

そんな彼女がラストに笑顔で写真に写り、
それが写真館に飾られる。
大勢の人に見てもらっても良いと思えたのだ。
泣くでしょ、そりゃ。

【寫眞館/なかむらたかし】

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