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健忘症との日々

朝起きて、枕元やリビングに転がるお菓子の空き袋を片付ける。
もう驚きもない。
流石に、ふと鏡を見た時に腕に青あざや内出血があったり、指の爪が剥がされてなくなっている時は嫌な気持ちに包まれるけれど。

わたしは色々な理由で健忘を起こしている。

ひとつは解離性健忘。
何かしら(おそらく)自分にとって嫌な物事が起きた時に、自己防衛のために記憶が無くなる、らしい。

家族と会話をして昔話をされても全く分からない時も多いし、昔と言っても数年前の出来事を話されても分からないことも多い。
まるで他人がその期間わたしの人生を生きていたのではないか、と思ってしまうくらい。

もうひとつは、ベンゾジアゼピン系の向精神薬や睡眠薬をもう10年程は飲み続けているのでそれのせいだと思っている。
少なくとも今服用している睡眠薬で前向性健忘が起きていることは担当医からも言われている。

健忘は本当に厄介。

忘れたくないことは忘れてしまい、
忘れたいことは忘れられない、そんな事も多い。

健忘する対象を自分で決めることが出来たらいいのにな、と何度も思う。

いちばん辛いのは、相手が嬉しそうにわたしとの思い出を話してくれた時、どうしても記憶から抜け落ちていて、かと言って嘘をついて覚えてる振りをして切り抜けられそうにも無いので正直に
「ごめん、、覚えてない」
と伝えた時の、相手の目の奥に悲しい色が拡がるのが見える時。

ごめんね、としか伝えられないことがもどかしい。
思い出したい。そんなに素敵な想い出がわたしに存在していたことを何故忘れてしまうのか、意味がわからない。

覚えてないことを告げられた友人や家族は、どんな想いをしたのだろう。
苦しくなる。

正直適当に相槌でも打ってやり過ごせばいいのではと何度も思った。
でもきっとそれはいつかボロが出るし、そうする事に対してわたしは誠意を感じられない。

わたしは健忘を起こします。
ごめんなさい。
それしか伝えられない。

今日楽しかったことも、いつか思い出せなくなるのかな。
そう思うことが怖くて、わたしは写真やムービーを出来るだけ撮るようになった。

スーパーの帰り道に見かけた綺麗な夕焼け。
道の端で静かに綺麗に咲いている花。
わたしに笑顔を向けてくれるペット。

どれも恒久的なものではない。
だから、出来るだけ記録に残す。

友達と会っても、今までは遊んで「じゃあね」で終わっていたけれど、積極的に写真を撮るようになった。

薬のせいで助かったことも多い。
薬のせいで失ったものも多い。

これから悪化するのか、よくなるのかも分からない。
確実に言えるのは健忘と付き合う生活はまだまだ続きそうだということ。

大切な想い出だけは、奪わないで欲しい、と願いながら今日を終える。

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