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イネカメムシ -Lagynotomus elongatus-
最近、よく見るようになった噂のカメムシさん。
1.外見
茶色く前翅と体の縁が白い線となっていることが特徴的なカメムシ。体形はいわゆるカメムシよりはスラっとした体形。
2.仲間
イネカメムシ属に似た種類はいない…というよりはイネカメムシとそっくりなシロヘリカメムシは実は属から違うといった感じ。
シロヘリカメムシは茶色でスラっとして白いヘリがあるところまで似ているが、頭の中央部が前に突き出るかなどで見分けることができる。
3.生態
イネに付き、稲の未成熟果実から中身を吸いだして食べるイネの害虫。
中身を吸いだされたイネは斑点米という商品価値のないものになってしまう。
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この斑点米の原因となるカメムシはクモヘリカメムシやアカスジカスミカメムシ等様々な種類が関わっているが、イネカメムシというだけあって、種としてのイネへの依存度が高く他の害虫と違って基本的にはイネしか食べない。
その影響で、農薬防除が行われるようになると、イネではないメヒシバ等のイネ科雑草でも繁殖できる他カメムシたちと違って、駆除の影響をダイレクトに受けてイネカメムシは激減、絶滅危惧種になるほど減ってしまった。
…はずなのだが
4.現在の発生状況
イネカメムシは関東各所ではレッドデータブックに載るほどに激減していたが、ここ最近大発生しており農業業界、虫屋界隈を驚かせている。
そもそも、イネカメムシはイネに強く依存しているため、イネを求めて田んぼを移動し続ける習性がある。つまり、いった先々で農薬を受けることになり死滅しやすく、絶滅危惧種となるまで減ってしまっていた。
逆に言えば、農薬が減少の主な原因であり抵抗さえできれば増える可能性はあったのだ。
そして現在イネカメムシは抵抗性遺伝子の獲得に成功しているらしく、それが2024現在の大発生につながっているのだろう。
また、最近の農薬散布スケジュールではイネカメムシが特に好む出穂期に農薬を散布することが少なくなったのも原因なようだ
5.駆除方法
今回は大発生中の害虫を扱うということで、虫屋目線での駆除方法を提案したい。
➀鳥やカマキリ等の大型捕食者を使う。
イネカメムシは他のイネを加害するカメムシと比べて体が大きく、捕食者がすくないことが大発生の原因の一つだと指摘されている。
確かに、イネを加害するカメムシとしては大きいが、ツヤアオカメムシやクサギカメムシといった他の大型カメムシ程度の大きさであり、自然界で捕食者がいないサイズというわけではない。よって、鳥やカマキリといった水田では大きめといえる捕食者がいれば十分に抑えられるだろう。
➁ライトで集める。
イネカメムシは夜行性のカメムシで、夜から朝にかけて行動する。
このことが視認での被害確認を難しくしているようだが、夜行性の昆虫というのはたいてい光に集まる。
また、イネカメムシはイネからイネに渡り歩く性質を持つことを考えると飛行することはよくあると考えられる。
つまり、イネカメムシが光に集まるということを利用すれば効率よく駆除が可能になると言える。わかりやすく言えば集虫灯で集めてしまえばいいのではないか
5.採集
方法・レア度
おすすめの採集方法はライトトラップ。実りかけのイネに網を入れるなど言語道断であり、イネカメムシはイネを強く好むことを考えると、生息環境で採集するのは困難だろう。よってライトトラップで集めるのが丸いと思われる。ただし、最近はイネからあぶれた個体群が周りの雑草につくこともあるらしくそれを見つけるのもありかも
レア度としては、☆5ぐらい。
現在、増加中の昆虫であり現状の個体数を見るとたいして珍しいようには見えない。しかし、松枯れ虫のように一過性の増殖になる可能性も低くなく(というかそうしないと農家が不味い)、北国では発生していない点、かつては絶滅危惧種にまで激減したことを考慮してこのレア度とした。
現状一部の個体群は好みを変えて他のイネ科植物も利用し始めていることから、この個体群がきちんと定着すれば、害虫防除により壊滅的被害、絶滅危惧という事態は免れるだろう。