成年年齢の18歳引下げについて考えよう①
民法改正による成年年齢の18歳引下げが、まもなく2022年4月1日に施行となります。
その日、まさに成年となる18、19歳の方たちご自身や、その少し下の世代の子供たちの保護者の方々は多少関心があるかもしれませんが、世間的にはそれほど盛り上がっている気がしません。みなさま、いかがですか?
「18歳引下げって言ったって、酒もタバコも20歳までダメなままでしょう?あんまり変わらないんじゃないの?」と思っている方も多いのかもしれません。
いやいやいや。結構重要なことが変わります。
というよりも、18歳、19歳の方にとっては、エアコン完備で快適な室内から、酷寒酷暑の屋外に放り出されるような劇的な変化が4月1日に起こるんです。
それは、「未成年者取消権」が使えなくなることです。
この未成年者取消権というのが、若者を様々なトラブルから保護する面で、実はとても強い権利なんです。
未成年者取消権って、どういうこと?
ざっくりの説明ですが、未成年者が親権者などの同意なく結んだ契約については、親権者などもしくは未成年者本人が「法定代理人の同意がなかったから」という理由だけで契約を取り消せるという権利。
成年だと「相手が嘘の説明をしたから」とかいろいろな理由があって初めて契約を取り消せるところを、「同意なく結んだ契約なので」というだけで一気に取消ができるようになるわけです。
(それでも取消できない特殊な場合もありますが、その説明はまた次回以降で。)
ここで思い出すのは、私自身が18歳、大学進学で上京間もないころ。
アルバイトを探して人材募集の折込チラシを見ていたら「和服展示会での受付」という求人が掲載されていました。「和服でお仕事しませんか」という言葉にひかれたので、やる気満々で母に電話で話したところ、「アンタ、アホだね!そんなもの、高い着物売りつけられるだけだよ!!」と一喝されました。
もしあの時、たまたま母に電話を架けなかったら、母の言うように、「お仕事に必要だから」だの、「今だけ特別」だの、言葉巧みに高額な商品を購入させられていた可能性は大いにあります。
私が「すわ、契約」というスレスレのところに至ったのは、世の中にそういう強引な商法があることをまったく知らなかったから。18歳のあの頃、なーんにも知りませんでした。
母がすぐに止めたのは、すでにそうした商法の存在を知っていたから。
この差は、年齢というより「人生経験」の差。
そうした経験差から生じる未熟な判断力について、一律の年齢で保護しましょう、というのが未成年者取消権の目的と言えます。
この、ある意味強力なカードを切ることができなくなる重大さについて、2018年に改正民法が成立した頃から、消費者庁、国民生活センター、そして日本弁護士会などが積極的に情報発信しています。
(参考)
「18歳から“大人” 18歳・19歳に気を付けてほしい消費者トラブル 最新10選」(独立行政法人国民生活センター、2022年2月28日公表)
10分でおさらい!成年年齢引下げの問題点を知る|日弁連|(NICHIBENREN TV-日弁連公式動画チャンネル、2021年8月30日)
ただ、その後の新型コロナ禍のニュースの陰に隠れ、そして引き下げの影響を受ける当事者である高校、大学生の授業そのものが思うように進められなくなったことも要因なのか、今一つ話題に上らないまま改正の日が間近に迫ってしまった印象があります。
そんな危機感があるため、私のnoteでの情報発信第1回のテーマに「民法改正における成年年齢引下げ」と「未成年者取消権」のお話をしてみました。
次回は、そもそもの「契約」と「取消」のことを、もうちょっと掘り下げたいと思います。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
(参考文献)
・「狙われる18歳!? 消費者被害から身を守る18のQ&A」日本弁護士連合会 消費者問題対策委員会、岩波書店(2021)
・「民法改正Part3 18歳で成人になるってどんなこと?」(公社)全国消費生活相談員協会(2021)
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