会社員をしながら演奏活動もするという新しい選択肢~"複"業の時代の新しい音楽家のキャリア
起業家でビオラ弾きのあると🎻(Twitter: @alto_va)です。学生時代は音大生のキャリアについての卒業論文を書きました。
先日、このツイートが想像以上に伸びました。
もしかして需要があるのでは?と思い、音大生やフリーランス奏者の方々は、「会社員をしながら演奏活動もする」という生き方も、人生やキャリアの選択肢の一つとして考えてみてもいいのではないかというお話をします。
背景~社会の変化と、ロールモデルの登場
政府の副業・兼業奨励による社会の変化
2017年に閣議決定された「働き方改革実行計画」では、副業や兼業などの柔軟な働き方が目標とされ、2018年には厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を策定し、政府が副業・兼業を奨励するようになりました。
その結果、日本は大副業時代に突入しました。
会社員として働きながら、他の会社で働いたり、Uber eatsの配達員、ブログやSNSでアフィリエイト、YouTuber、動画編集、タイミーなど、様々な副業をしている人が現れるようになりました。
会社員と演奏活動の両立、そのロールモデルの出現
その大きな社会の変化の中で、音大生やフリーランス奏者の方と話していると、音大生やフリーランス奏者は「会社員をしながら演奏活動もする」という生き方も人生やキャリアの選択肢の一つとして考えてみてもいいのではないかと感じるようになりました。
そのわかりやすい具体例としては、古くは歯科医師をしながらバンド活動をするGReeeeN。
最近ではチケットぴあで会社員をしながらプロオケを指揮していた坂入健司郎氏(現在は会社員を辞め、専業の指揮者になったそうです)や、会社員をしながらバンド活動をするPenthouse。
このように、会社員をしながら演奏家としても活動する人たちが目に見えて現れるようになりました。
もちろん、どんなに辛いことがあっても絶対に音楽で食べていくと心に決めている人は、1分1秒も無駄にすることなく、その覚悟で努力を続けるのがよいのだと思います。
しかしながら、そこまでの覚悟は無いけれど演奏活動をしたい人や、経済的に不安がある人、就職するかフリーランスになるか悩んでいる人は、0か100かという二者択一ではなく、会社員をしながら演奏活動もするという選択肢を考えてもいいのではないかと考えます。
それは決して演奏活動の"諦め"ではありません。
会社員と演奏活動の両立のリアル
会社員と演奏活動の両立で起こることと良さ
会社員をしながら演奏活動を行うということは、次のような生活を送るようになります。そしてそれには良いところが数多くあります。
会社員として働き、給料を得ることで、お金の心配はなくなり、規則正しい生活で生活を安定させることができるようになります
会社員は社会保障や雇用が充実・安定していて、不安定な収入に心をすり減らす必要がありません。家賃補助などの福利厚生がある場合もあります
会社員は産休や育休などの制度・手当があります。体調を崩して長期で休んでも傷病手当金がもらえます。安定的な収入が保障されます
多くの企業の正社員は、週5日、9時~17時(18時)で働きます。土日祝は休みで、有給休暇が年間10日~20日間付与されます
17時(18時)まで働いたのち、平日は1日2~3時間、練習や演奏活動を行うことができます。土日祝は完全にお休みなので好きなだけ練習や演奏活動に充てることができます
有給休暇やフレックス制度を活用すれば、平日もリハーサルや本番、打ち合わせなどに参加することができます
フルフレックスの職場であれば、1か月で所定労働時間を働けばよいので、有給休暇を消費することなく、朝仕事、昼本番、夜仕事などの働き方ができます
シフト制の仕事(接客など)であれば、リハーサルや本番がある日はシフトを外してもらうことで、有給休暇を消費する必要がありません
何らかの事情で演奏活動をやめても、会社員としてのキャリアが残ります
両立スケジュールの大変さと可能性
もちろんスケジュール的に大変なのは事実です。
平日に関しては、1日8時間の仕事と2~3時間の練習・演奏活動をするとなると、1日12時間ぐらい何かしらの活動をしていることになるので、体力があまりない方はしんどいかもしれません。
1日2~3時間の練習では実力を維持するのがやっとで、上達は少ししか見込めないかもしれません。
また、フリーランスで活動している人と比べると、時間の調整は容易ではなく、自由な時間は少なくなってしまいます。
したがって、全ての人に「両立できるよ」と手放しに勧めることは到底できません。
その一方で、生活費を稼ぐためにバイトを掛け持ちしてたくさんシフトに入ったり音楽教室でたくさん教えているフリーランス奏者よりも、演奏活動に時間を充てられる可能性があるのもまた事実です。
週5日、9時~17時で働けば、あとの時間や土日祝は自由、有給も10日~20日あります。
お金の心配で頭を悩ます必要もありません。
新卒カードを就職に使うことのメリットとデメリット
(音楽)大学から新卒・ストレートで会社員になることは、日本では優遇される"新卒カード"を使うことができ、様々な業界・職種の会社員として就職ができます。
これは非常に大きなメリットです。
一度就職して会社員になったけど、後からやっぱりフリーランスになるという選択も可能です。
逆に、大学卒業後そのままフリーランスになって、後からやっぱり会社員として就職するのは容易ではありません。
新卒カードが使えず、未経験での就職という形になり、就職先の選択肢は狭まってしまいます。
一方で、新卒で会社員になると、会社員という安定性に安住したり、なかなか練習の時間が取れなくなったりして、演奏活動への気持ちが薄れていく可能性も否定できません。
ですが、それも人生における一つの選択です。
高校球児やサッカー少年も、大学を出るとその多くは会社で会社員として働いています。
そのときに置かれている状況をふまえたうえで、一番幸せになれる選択をすればよく、就職した結果、音楽以外の人生を歩んでいくことになるというのも素晴らしい選択だと思います。
私が知っている身近な両立の例
指揮者の坂入健司郎氏やバンドのPenthouseのようなトップアーティストまでいかなくとも、身近なところで会社員と演奏活動を両立している人の例としては次のような人たちがいます。
ビオラ弾きで元激務系会社員(あると🎻):平日は余裕があるときに練習、土日はアマオケで活動。ときどき他のアマオケにエキストラで参加したり、結婚式などのイベントに呼ばれたりして、基本は趣味として活動しながらも、お小遣い程度の収入も得ています
ホルン吹きの会社員:音大卒業後、会社員をしながら土日はアマオケに参加し、趣味として音楽を楽しんでいます
トランペット吹きのエンジニア:平日は夜にジャズバーなどでしばしば演奏、土日もアマオケやプロアマ混合のオケなどにエキストラで参加。正社員としての収入に加え、演奏活動でも一定生活できる収入を得ています
(演奏活動ではないですが)エンジニアの俳優の卵:フルフレックス制度を活用して、朝仕事、昼稽古、夜仕事で、俳優業と会社員を両立。本番直前で稽古が多く入るときは勤務を調整してもらっています
やっぱり演奏活動に力を入れたいと気が変わったら
会社員として就職したものの、音楽の仕事が増えたり、やっぱり本格的に演奏活動に力が入れたいとなったりしたときは、仕事を辞めればいいのです。
フリーランスから会社員への転向は容易ではありませんが、会社員からフリーランスへの転向は簡単です。
そのときはすぐに辞めちゃいましょう。
ちなみに、ベンチャー企業などの柔軟な会社であれば、会社を辞めずとも、週5日勤務から週3日勤務や午前のみ勤務への切り替えなどができる可能性もあります。
終わりに
音楽で食べていくと考え夢を追いかけるのは素晴らしいことです。
その一方で、会社員をしながら演奏活動もするのも素晴らしいことだと思います。
そして何より、世の中にはこのような選択肢も存在することを知り、そのうえで自分がどのように生きるかを考え、選択することはとても大切なことだと思います。
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私や弊社としては、演奏家として活動する人を応援していきます。
その一方で、会社員をしながら演奏活動もしている人も応援します。
このような方々の活躍の場を広げていく活動をします。
キャリアの相談をしたい方、会社員と演奏活動の両立の相談をしたい方、具体的にホワイトで柔軟な企業を教えてほしい方、この考えに賛同あるいは反対する方は、ぜひお気軽にX (Twitter: @alto_va)からDMをいただければと思います。
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