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創作童話 ドクター・マキルの診療室 5/5

 ドクター・マキルはラファルの不思議な力をもっと試してみようと思いました。
「ラファル、よくやった!これから木の妖精のところに行ってみよう」
 ふたりは森の奥へ入って行きました。
木の妖精はすっかりよくなった体で、木と木の間を飛び回っていました。
 そしてドクター・マキルとラファルを見つけると、まるでレースのスカーフが落ちてくるように舞い降りて来ました。
「この間はありがとうございました。おかげでこんなにうまく飛べるようになりました」
 木の妖精はにっこりほほえみました。
それを見て、ラファルの白いモクモクの顔がうっすらピンクになりました。
 ドクター・マキルは聞きました。
「この間、森を荒らしに来たやつがいたと聞いたが本当かい?」
 すると木の妖精の顔が、急に悲しそうになりました。
「はい。実は今度またいつやって来るのかとびくびくしているのです」
「そうか」
 ドクター・マキルは、まきひげをつまんでピピーンと伸ばしました。そしてその手をはなすとひげはたちまち丸まって、パチンともとに戻りました。
「そうだ!ラファル、おいで!」
ドクター・マキルは木の近くに立ちました。
「いいかい、こうして両手を木にあてるんだ」
 ラファルが言われた通りに木に両手をあてると、木たちは枝をゆらしザワワワーッと音を立てました。
 枝と枝の間からはキララキララとたくさんの木もれ陽が落ちてきました。
「そうそう、森中の木たちとふれあって、ビリビリをあたえておくれ!
ラファルの力が通じたら、きっと木たちもパワーを授けてくれるだろう」
 ラファルは一本ずつ、木に両手をあて始めました。
  ビリリリリリリリー
  ビリリリリリリリー
 ドクター・マキルとラファルは、日が暮れるまで森の木を回り続けました。
 ドクター・マキルは言いました。
「どうだい? こうしているとラファルも元気になっただろう。木たちはもともとそういう力を持っているんだよ。それを切ってしまうとは許せんぞ!」

 次の日、ドクター・マキルは何やらさわがしい音で目を覚ましました。
 外を見ると、大きな車が何台も通り過ぎて行きました。
「いよいよ来たな」
 ドクター・マキルは急いで支度をすると、森へ出かけて行きました。
 そして大きな木のかげにかくれて、様子をうかがいました。
 すると、たくさんの人たちが木に集まって来て相談をしているように見えました。
 その中のひとりが、電気のこぎりを持って木のそばに立ちました。そして今にも切ろうとした時でした。
  ビリリリリリリリー
  バチッバチッバチッ
 すごい音がして火花が散りました。
回りにいたみんながいっせいに尻もちをつきました。
「わあっ!なんだこの木は!」
 何度やってもすごい火花が散るので、しまいにはみんなあきらめて帰って行きました。
「やったぞ!」
 ドクター・マキルは飛びはねるように診療室に帰ってきました。


 いつの間にか、汗ばむほどのあたたかな陽射しがさしていました。
「ラファル!ラファル!やったぞ!
おかげで森の木たちが助かった!」
 けれども飛び出して来たのはロールさんだけでした。
「大変です!ラファルがどこにもいません」
 その時、空がうずまき型の雲でおおわれると、ヒュワワワワーンと強い風が過ぎ去って行きました。
 そのとたん、ドクター・マキルのまきひげがピピーンと伸びて、すぐにパチンともとに戻りました。

             おわり

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