創作童話 七いろのプリン 2/4
「あの、ぼくはビリルといいます。この服変ですか?」
男の子はすきとおった細い声でいいました。
「いえいえ。とんでもない。あんまりきれいだったのでびっくりしていたのですよ。どうやったらこんな服が作れるのかしらね」
「これは北風さんが作ってくれました。初めてバニラさんのところへお願いに行くのに、服も着ないで行ったら失礼かなと思って」
「お願いって私に?」
「はい。実は北風さんのお使いで来ました。友だちのプリズムさんの具合が悪いので、ぜひプリンを作ってもらいたいのです」
「そうですか。それではどんなプリンがよいでしょう」
ビリルは少し困った顔をして言いました。
「北風さんは、七いろのプリンを作ってほしいと言っているのです」
「七いろのプリン?」
バニラさんは虹いろにかがやくプリンを思いうかべて
「何てステキなのかしら…」
と思いました。
けれどもすぐにそんなプリンを作ったことがないことに気がつきました。
「プリンを七いろにするのは、とてもむずかしそうで作れるかどうかわからないわ」
するとビリルは首をふって言いました。
「いえいえ、プリンを七いろにするのではなくて、七つのいろのプリンをそれぞれひとつずつほしいのです」
バニラさんは、今度は赤や黄や紫のプリンを思いうかべて、どうしたものだろうと考えました。
「いろはこれを見てください。
味はバニラさんにおまかせします」
ビリルはそう言うと、タラノキの葉っぱに書かれたリストを見せました。それには〈赤 橙 黄 緑 青 藍 紫 〉
と一文字ずつ書いてありました。
字は針のように細い小枝で作られていて、七まいの葉っぱがつるでたばねてありました。
つるにはタラノキの黒い実がくくりつけてありました。
バニラさんが、まるでメニューのような木の葉のリストに見とれていると、ビリルは言いました。
「それでは三日後の夜、またうかがいます」
「え?三日後?」
バニラさんがびっくりしてビリルを見ると、もうそこにはビリルの姿はありませんでした。
ヒュワーンと冷たい風がバニラさんのほおをかすめると、パタンとドアのしまる音がしました。
つづく