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お面をかぶったサンタクロース 【#才の祭】

あれは幼稚園のクリスマス会のことだった。
モカはドキドキしながら白い髭をつけたサンタクロースからお菓子のプレゼントをもらった。
担任のれいこ先生が廊下に出て
「ほらサンタさんが帰って行きますよ〜」
と空を指差して言った。

モカが廊下に走り出て空を見上げると、そりに乗って空を飛んでいくサンタクロースが確かに見えた。
「サンタさんありがとう」
夢中で手を振った。
シャンシャンシャンと遠ざかっていくそりの音も聞こえた。

モカが家に帰ってその話をするとパパが言った。
「家にもサンタクロースは来るよ」
夜になって隣の部屋からサンタクロースが現れた。
頭にはモカの赤いマフラーを巻き付けて手作り感満載のサンタクロースのお面をつけたパパだった。
手には2つの大きな手提げ紙袋を持っていた。
デパートの手提げ袋にパパが絵の具とクレヨンで描いたサンタクロースの絵が貼ってあり、回りには雪景色も描かれていた。

パパは調子外れな歌を歌いながらモカと妹にその紙袋を渡してくれた。
パパの歌と変な踊りはとてもサンタクロースとは似ても似つかなかった。
袋の中を見てみると、中には絵本やお絵描き帳、クレヨン、色エンピツが入っていた。
パパは昔、絵描きになりたかったのでお面も袋の絵も今思えば相当上手なものだった。

モカはその手作りの袋に入ったプレゼントにワクワクしたことを思い出した。
クリスマスツリーも高価なオモチャもない時代だったけれど、心に残っているステキなプレゼントとお面をかぶったサンタクロース。

              おわり


PJさんお誘いいただきありがとうございました。長い小説は書けませんでしたのでショートショートでよろしくお願いします。

奇しくも今日は父の13回忌…命日に思い出させてくれたのかなぁと思います。



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