創作童話 ドクター・マキルの診療室 4/5
次の日、ドクター・マキルは顔を洗おうと蛇口をひねると、水のかわりに風船のような泡が出てきました。
泡はプーッとふくらんで、パチッとわれました。そして中から白いドレスの女の子が現れました。
「ドクター・マキル、こんなところからごめんなさい」
「きみは?」
「私は森の湖や小川を守っている水の妖精です。今、水がとても汚れていて私の手に負えないのです」
「そんなに汚れているのかい?」
「はい。私がもぐることもできません。それでドクター・マキルの水道を通って来ました」
ドクター・マキルは腕を組んで考えこみました。すると、ラファルがドクター・マキルのひげをつまんでピピーンとのばしました。そしてその手をはなすと、ひげはたちまち丸まってパチンともとにもどりました。
「そうだ!」
ドクター・マキルは手をたたきました。
「やったあ!何か思いついたんだね!」
ラファルが飛び上がりました。
「まず森へ行って調べることが先だ。ラファルも一緒においで」
ドクター・マキルはそう言って古びたカバンに道具をつめこんで森に出かけました。
森の小川はにごっていて魚の姿も見えませんでした。
水の妖精は悲しそうに言いました。
「何日か前からこのありさまです」
ドクター・マキルは小川の水をくんで、検査する薬を入れてみました。
「うーむ。これはひどい。誰かが悪いものでも流したかな」
水の妖精は、はっとして言いました。
「そう言えば少し前に森の木をたくさん切りに来たものがいたようです」
「森の木を?」
「その時、木たちがみんなで抵抗して枝をゆすって風をおこして追い払ったようです」
「そうか、それで木の妖精もけがをしたのだな」
「きっとまた、近いうちにやってくるでしょう。このままだと動物も魚も住めない森になってしまいます。どうしたらよいのでしょう」
ドクター・マキルは、まきひげをつまんでピピーンと伸ばしました。そしてその手をはなすと、ひげはたちまち丸まってパチンともとにもどりました。
「そうだ!ラファル、こっちへ来て水の中に手をつけておくれ」
ラファルは両手を伸ばして水の中に入れてみました。
ビリリリリリリリー
小川の水がプルプルとゆれました。そして何回も波が立ちました。
ラファルは手をバシャバシャさせてみずをかき回しました。
「冷たくて気持ちいいなあ」
しばらくすると、あんなににごっていた水が透きとおってきました。
ドクター・マキルは両手をあげて言いました。
「いいぞ!ラファル!湖や池にも行ってみよう」
ラファルが水の中に手をつけると、森中の水が透きとおっていきました。
ラファルは水遊びに夢中で、しばらく水をかき回していました。
水の妖精はにっこりほほ笑むと、白いチュールレースをひるがえして水の中にもぐって行きました。
つづく
aimaruさんのイラスト画像使わせていただきました。ありがとうございました✨
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