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SATOYAMA CONCEPT MAPsという森づくりのコンセプト

僕たちに森が見えなくなって、どれくらい経ったのだろう

僕たちは、普段から森を眺めている。長野に暮らしていれば、森を見ない日はないし、森を見ないで過ごすことの方がよほど難しい。顔を上げれば、だいたいそこには森が目に入る。
森は、見えている。だけど、森のことは見てはいなくて。

その森がどんな樹種で成り立っているんだろう、と、興味を持ちながら森を見ている人はほとんどいないし、針葉樹や広葉樹という話がすっと入ってくる人はごく一部で、スギとヒノキを見分けられる人はさらにごく一部。

僕らは、森が見えているのに、森が見えていない(認識できない)。そんなことを考えていると、ドラえもん4巻に登場する、みなさんご存知「石ころぼうし」を思い出す。
このひみつ道具は、透明人間になるわけではなくて「路傍の石ころ」のようにそこにあるけれど認識できなくなるという、哲学的な道具。石ころぼうしをかぶったのび太くんが、ドラえもんをゆすってもドラえもんはそれを認識できなくなる。

石ころぼうしの話は完全に余談なので、そこらへんに捨て置いてください。

SATOYAMA CONCEPT MAPsの意味

僕らは、森のことをみなさんにも共有したり、見えるようなカタチにしたいとずっと考えてきました。そこで、まず自分たちが森を見つめることが大切だ、と自分たちが管理する森の調査を実施してきた。
森の樹種や地形、土質、水の流れ、生物多様性など専門家とも協力しながら2年半ほどかけて調査してきた。少しずつ、この森がどういう森かがわかってきた。

調査内容をもとに「この森がどんな森だったら、持続可能で自然の流れ(合理)に沿っているだろう?」と考えを巡らす。
「ここは水が出ているから手を入れるなら気をつけた方がいいね(崩れる可能性が高まるから)」、「このエリアはすでにある60年生のカラマツを生かす木材エリアにしたいよね」、「斜度がゆるいから研修や遊びに使えそう」なんて話をしながら時間をかけてみんなで森と共に生きていくための納得を積み上げていく。

やまとわが管理する55haの森林のSATOYAMA CONCEPT MAP

そうした「調査」と「知恵」と「想い」を重ねて、デザインでつないでいく。
そうやってつくり上げたのが、「SATOYAMA CONCEPT MAPs(里山コンセプトマップ)」。この地図は、今の森の姿を描いたマップではなく10年後、15年後こんな森になってたら持続可能で自然と共存する形を見出せるんじゃいか、という未来のマップ。

「SATOYAMA CONCEPT MAPs(商標登録申請中)」は、僕らがつくったマップ名だ。森と人の暮らしをつなげることを目指す僕らだから、「里山(人と森の関わりの森)」という言葉は大事にしたかった。そこにくっつけたのが、CONCEPT MAPs。
この場所の未来はどんな場所になのか、その願いをみたいなものを込めるためには、「目的と方法」を提案する必要がある。「CONCEPT」は、「目的と方法を合わせてもの」だと考えているのでそれを合わせてSATOYAMA CONCEPT MAPsに。
ここに複数形のsを入れたのは、ただのアナグラム。
SATOYAMA CONCEPT MAPを眺めてたら、羅針盤の「COMPASS」になんとなく文字列が似ている、と思って言葉を並べ替えたら、COMAPSSのSが一個余った。グーグルマップもgoogle mapsだしこのconcept mapを総称するときはSATOYAMA CONCEPT MAPsにするのがいいかな、と思った次第です。

森と暮らしの知恵

森と人の暮らしの共存を考える時に、いつも思い出す話がある。
それは、母から聞いた祖父の話。祖父は2018 年 10 月に 101 歳で亡くなりました。大往生だった。
熊本の森のそばで農業と養鶏を営んで、自然と共に生きた人でした。
これは、母が子供の頃の思い出話し。「父さんは大雨が降るとクワを一本持って裏山へと出かけて行き、水の流れる道をクワで土を調整して、道や山が崩れないようにしていてね。それは自然のことをよく知っていたし、裏山の水の流れを把握していたからだろうね」、と教えてくれた。

この話が妙に記憶に残っていて、人の小さな手と小さな道具が、森の道が崩れるのをふせぐという話にはすごく感動した。森と生きるというのはそういうことなのかもしれない、と思わされる。 

「自然は自然のままがいいんじゃない」。
そんなふうに言われることはたくさんあるし、そう思われる方もとても多い。それは僕らが知らないどこかの国や地域の自然を切り崩し、その環境負荷やコストを外部化しているから思える話なのだと思います。

本来、自然からの資源を加工して生きている僕らの暮らしを自然と切り離すことはできない。だからこそ、自然の循環に自分たち人間を切り離すのではなく、自然の循環と人間の営みを合わせて持続可能性を考える必要がある。
森の未来にビジョンを持ち、森から資源をいただき、森の保水力が高まり、生物多様性が高い状態。そういう状態をどのようにしてつくっていくのか。それを考える必要がある。
だから、地域資源循環に目を向けて、取り組んでいくことが重要で、地域の木から家具をつくり、ものづくりをする。顔の見える範囲、認識できる範囲を大事にする。

僕らは10年後が楽しみになるような森づくりを伊那をはじめいろんな場所でつくりたい。そうやって「森を見る人」、「森が見える人」が増えていけばきっと森と暮らしは今より近づいていく。

そういう未来をつくるための、提案がSATOYAMA CONCEPT MAPs。
今、いくつかの地域でこの地図づくりを進めています。ご興味ある方おりましたら、ぜひ一緒に森を見つめませんか。

そういえば、石ころぼうしの話は、石ころぼうしをかぶったのび太くんが最初は、「何をやっても怒られない、自由だ〜」、と喜ぶけれど、次第に誰にも気づかれないということが怖くなり、帽子をぬごうしたけどサイズが小さくてなかなか脱げなくなってしまう。「誰もかまってくれない」と大泣きしていると、汗や水でふやけた帽子が脱げて、お母さんに「そんな格好して!勉強もしないで!」と怒られる。そして、「気にかけられるってうれしいね」とのび太くんが言って終わるというオチだ。

気にかけられるって嬉しいですよねぇ。

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