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第3話 マリアちゃんのお家はボクのお家 ~su casa mi casa~
語り手:ネコのきなこ 挿し絵:猫野 サラ
ボクの引越しが決まった頃から、お別れを言いにたくさんの人間がディーマイケルへやってきた。夜の街の情報誌にボクが人間と暮らすことになったよって載ったんだ。まあ、人気ネコだったからね。ボクに会いに来る人の方がお客さんより多いってミエちゃんは笑ってた。だから人間が好きなんだ、みんなボクに本当に優しいかったよ。特にお店の向かいのおばさん、事故のときもずっと心配してボクを探してくれたんだ。それに、いつも酔っ払ってるアンおばさん。彼女はマリアちゃんに話してくれたんだ。キナちゃんがお家の中でのんびりと暮らせるのは嬉しいけど、キナちゃんみたいな特別な猫が側にいてくれる貴女は本当に幸せよ、あの子は不思議な猫ちゃんだからね、大切にしてあげてね、って。さすがアンちゃん。
そして、1月の寒い夜、マリアちゃんが頭のツルツルおじさんとやってきた。ボクを彼女のお家へつれていってくれたんだ。お店にあったボクのお家をみんなでバラバラにして、車に乗せ出発。ミエちゃん、向かいのおばさん、そして、アンちゃん、、ガヤガヤ言いながら、みんなで手伝ってくれて、キナちゃん、バイバイって見送ってくれた。でもね、途中も家に着いてからも恐くてボクは叫び続けたよ。もう喉が痛くなるくらいね。
マリアちゃんのお家、ボクの声がずっと響いてた。
ボク達ネコは新しい環境が怖いんだ。繊細な動物だから匂いも何もかもが変わってしまうとびっくりしてしまう。それでもボクは勇気を出してゆっくり探検したよ。マリアちゃんのお家はあまり大きくないから、直ぐに終了。彼女が引き出しやクローゼットの中も見せてくれたんだ。ボクがクンクンすると、全部開けてね。
そして、ツルツルおじさんはボクのお家を丁寧に組み立ててくれたんだよ、何時間もかけてね。毛は全然ないけど、とっても面白いおじさんで、ネコの鳴き声ができるんだ。猫語にはぜんぜんなってなかったけどね、ふふふっ。ボクが側でじっと見ていると、おじさんは喜んで、そっか、そっか、って頭を撫でてくれたよ。
夜中、シーンとしたお家の中、ボクはまだ歩いたり、ときどき鳴いたり、じっとしていられなかったんだ。でも、やっぱりひとりぼっちはイヤで、マリアちゃんの部屋へ。
そっとベッドに上がってみた。
マリアちゃんは大喜びで、直ぐに布団の中にボクを入れてくれたんだ。ゆっくり撫でながら、キナちゃん、キナちゃんって言ってた。
ボクのこと大好きなんだね。毛布がフワフワで気持ちよかったなあ。本当にあの夜は特別だよ、忘れられないね。
ボクとマリアちゃんの記念すべき夜。
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