フリーランスになるっていうこと
昔、ナウマン象の化石の復元のバイトをしていた時に、職人のおじさんから毎日のように聞かされていた話がある。
「どう生きるのか決めなければならない」
当時、20歳そこそこの世の中のことも何も分かっていなかった私。芸術系の短大に通っていた時に、「就職」ということを一度も考えなかった。そして教授たちも「お前はやりたいことを何でもやれ!仕事ならなんぼでもあるから、就職したくなったらいつでも紹介してやるから心配すんな」と、何の根拠もなくドーンと背中を押された。今から思うと、相当無責任だけど、あの時代は仕事が有り余っていた時代だったんだと思う。
というわけで、私は就職しないでバイトをしてはお金を貯めて、アメリカに放浪の旅に行き、ジャマイカに行って、そのままNYに住んでしまったり、沖縄の離島にフラ〜っと行って2ヶ月くらいキャンプ生活をしたりそんな超自由気ままな人生を謳歌していた。
その時期にしたアルバイトで、超シゴかれたのがナウマン象の化石の復元。今思うと、この時に職人のおっちゃんが色々なことを嫌味に織り交ぜながら私に大切なことを教えてくれていた。私がバイトで入った時にはすごく沢山人が居たはずなのに、過酷で汚れ仕事で、何よりもおっちゃんの猛烈な嫌味に耐えられず、み〜んな辞めてしまい気づいたら私一人になってしまった。私も相当イビられていたのに、何だか嫌味しか言えないおっちゃんが可哀想になり同情しているうちに、私は完全に辞めそびれてしまった。
そのおっちゃん、化石の復元と言えば日本でも指折りの人だった。発掘されたナウマン象の骨のかけらを元に、ナウマン象の全体像(シャレじゃないよ・笑)をどこそこの教授と一緒にを作ったそう。説明されて写真も見たのに忘れてしまった... おっちゃんは、それを元にして、復元できる型を作り、依頼が来ると、樹脂でナウマン象の骨のレプリカを作って納品するという仕事をつくった。当時、日本でナウマン象のレプリカを作っているのは、そのおっちゃん一人だと言っていた。
日本では、思いの外色々な場所でナウマン象の化石が発掘されるようで、私は5体ほど、どこかの地方の博物館に納品されるナウマン象のレプリカを作って見送った。さすがに、数ヶ月かかって作ったナウマンちゃんがトラックの荷台に積まれて出て行くのを見送る時には、「花子や〜い」みたいな気分になる。
話が随分とそれました....
話は戻り、そのおっちゃんが言っていた「どう生きるのかを決めなければならない」この言葉は、私の中でずっと残っていた。
「会社員になるというのは、守られているし安定もしている。でも自由がない。いわば動物園の中で生きていくようなものや。それに対して、自分で仕事をしていくってことは、サバンナで生きるってことや。自由やけどいつ食われるかわからん。危険だらけや。だから、そのために自分の身をどうやって守るのか、色々な技術やオリジナリティを身につけて自分にしかできへんことをやらなあかんのや。あんたはんは、どっちで生きるんや?」
と、私によく問うていた。今思うと、もしかしたら、おっちゃん、私にナウマン象の仕事を引き継いでもらいたかったのかもしれない。後継者がいなかったから。
私は、このおっちゃんの話を聞きながら、私はどう考えてもサバンナタイプやなあ...とず〜っと思ってきた。ナウマン象の仕事を辞めてから、今日までそのことは私の中でいつもテーマになっている。そう言いながらも、企業で仕事もしたし、色々な仕事をしたけど、とにかく型にどうやってもうまくハマれない。
3年前、フリーランスで仕事をしてみよう!となぜか急に決意をした。きっと同じ仕事を10年以上していたから、もしかしたらやってみたらできるのかも。ってフト思えたからかもしれない。
確かにおっちゃんの言う通りサバンナだった。
でも、サバンナの方がやっぱり燃える。俄然やる気も出る。会社で仕事をしたら、そこまでやらんでもいい。って言われることも、心置きなくできる。自分の裁量で、お金にならないけどやりたいと思うことはとことんやれる。そうしたら、それが他のことに役立ったり、何よりも楽しい。とは言っても、ギャラを踏み倒されることもあったり、何の連絡もなく続けてきた仕事がなくなったりもする。なかなかのサバンナだ。
しかし、ふと思った...フリーランスって結局は人に使われることだな...
フリーランスをやってみて、また次のステップがあることに気づいた。
自分発信。自分で仕事を作って行く。きっとこの方が楽しいんだと思う。
ということで、今、モンモン、モヤモヤと色々と考え中。なんか、面白くて、楽しくて、やっててドキドキ、ハラハラするようなこと。(この辺りの表現力がめっちゃ関西人やなあ...言葉でもう表現できへんもんね。感情は全て擬音で...)
と言うことで、すっかりナウマン象の話がメインになってしまったけど、フリーランスになることが、まずは第一歩を踏み出したことになったのかもしれない。まだまだここからどうするのか。っていうところに来てるのだと思っているのでした。