星月夜の下で

星月夜に　あのひとと
ボートを漕いでいる
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昏い　みなもに　静かに　漣が遊んで
遠く　水平線を　星と月のひかりが
黄金色に　染めている
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小さな　煌めきの　粒子たちが　
魚の群れのように　蠢いて　
無限に　新しい漣を　連れてくる
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ああ　彼処へ
あの　ひかる　場所へ
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梶をとる　けれど
ボートは　動かず
ただ　そこに　浮かぶだけ
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あのひとは　微笑んで
わたしは　おもう
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彼方から見れば　ここも　
無数の　ひかりに　埋もれている　　　
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虹の麓を追って　走るものが　
その足元から　掛かる虹に
気付かぬまま　走り続けるように
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彼方から見れば　誰もが
ひかり　追うもの
ひかり　そのもの
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彼方の　眼差しの中で　生きる　
わたしたちの　眼差しも　また
何処かの　“此処”に　
ひかりを　注いでいる　
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星月夜の　下で
ボートの　上で
わたしたちは

何処に　行かずとも
何処にでも　行ける
​
宙から堕ちた　ひかりを
漣に　変えながら
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