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ナショナルリーグ・クラブヒストリー —ドーキング・ワンダラーズ編—

イングランド5部ナショナルリーグ第2節、一つの試合に注目が集まりました。
オールダム・アスレティックとドーキング・ワンダラーズのマッチアップ。
かたやプレミアリーグ創設メンバーの古豪、かたやわずか20数年でピラミッドの最下層からEFLの一歩手前まで駆け上がってきた若きチーム。
この試合を前に監督兼オーナーのマーク・ホワイトは語りました。

「我々は今後数多くのトップクラブと戦うことになるが、彼らにただ鞭打たれる存在にはなることはない」

彼らの活躍は、かつてノンリーグからイングランド1部にまで登り詰めたウィンブルドン(現在のMKドンズ)を人々に連想させました。
しかし彼らの旅路はより印象的なものです。

歴史

ドーキング・ワンダラーズ結成

ドーキング・ワンダラーズはサリー州ドーキングを本拠地とするチームで、1999年に創設されました。
当初は地元の若者の社交場のようなもので、サッカーと試合後のビールを楽しむことだけを目的としていました。

ドーキングは地元のCrawley & District リーグからスタートし、その後ウェスト・サセックスリーグに移りました。
当時は試合の度に地元のピッチを50ポンドで借りていたため、馬が乱入して試合が中止になるというようなアクシデントが起きることもあったようです。

2017年から使用しているロゴ


クラブの快進撃~ナショナルリーグ昇格

ウェスト・サセックスリーグに移った後は5年間で4度の昇格を成し遂げ、ウェストサセックスリーグ・プレミアディビジョンに到達。
その後もチームは成長を続け、23年の間に計12度の昇格を成し遂げました。

その間には様々なトラブルも起きました。
2011ー12シーズンにサセックスリーグ・ディビジョン1への昇格を果たした際、ホームグラウンドがリーグの要件を満たしていないとして参入を拒否されました。それを受け、クラブはFAに上訴。FAはリーグの基準を満たしているとみなし、結果的にリーグの決定は覆されました。

2018年には6部ナショナルリーグ・サウスに昇格。
昨季はサリーシニアカップ(5部以下のチームが参加する地元サッカー協会主催のカップ戦)で優勝し、ナショナルリーグ・サウスでは2位でリーグ戦を終えました。
そして昇格プレーオフでエブスフリート・ユナイテッドを下し、ついにクラブ史上初のナショナルリーグ昇格を勝ち取ったのです。
ドーキング・ワンダラーズの歴史はゲームの世界であっても、容易には成し遂げられることではないでしょう。

ホームスタジアムの移転

2018年には、改装の後、ホームスタジアムをMeadowbankスタジアムに変更しました。
ここはかつて地元のライバルであるドーキングFCが2017年まで使用していたスタジアムです。(ドーキングFCは財政難により、2017年に解散)
ドーキングFCの解散により、チームはいくらかの恩恵を受けたとマーク・ホワイトは語っています。
(ドーキングFCで働いていたスタッフは、現在ドーキング・ワンダラーズに加わっている。)

Meadowbankスタジアム
スタジアム周辺(Googleマップより)


チーム運営

ドーキング・ワンダラーズの監督は、創設時から一貫してマーク・ホワイトが務めています。(コーチングライセンスは持っていない)
マーケティング会社の経営者でありチーム創設者の一人である彼は、監督業と同時にチームのオーナーとしても業務をこなしています。
チーム経営はマーク・ホワイトをはじめとした複数の役員が関わっています。

監督兼オーナーのマーク・ホワイト

現在チームはトップチームの活動に加え、アカデミーの運営や青少年支援、また現在6部に所属する女子チームの運営も行っています。

選手雇用

ドーキングには巨額の資金を注入してくれるような強力な後ろ盾はいません。
選手獲得については慎重を期して、チームをアップグレードさせることができる選手を見極め、限られた資金の中でスカッドをつくりあげています。
23年の歴史の中で移籍金を支払って獲得したのは、2018年に£15Kで獲得したジェイソン・プリオアのみです。
この夏、チームに新たに加わった選手はわずか3人ですが(いずれも契約満了に伴うフリー移籍)、そのスカッドには自信を持っているようです。
(ナショナルリーグはほぼ一年中移籍市場がオープンしているため、焦る必要がないということも影響していると思われる)
チームに7年在籍しているMFのジェームズ・マクシェーンは「ここに5~6年在籍している選手たちがチームの核になっている。毎年夏に数人の新たな選手を連れてくることは、僕たちの成長を促している」と語っています。

現在、選手の雇用形態はパートタイム。
それぞれが別の仕事を同時にこなしています。
たとえばジェームズ・マクシェーンはイギリスの郵便会社ロイヤル・メールの事務所で働いているそうです。

ちなみに現在チームに所属するGKのダン・リンカーンはサッカー選手であると同時に第一線で活躍するクリケット選手でもあります。
(Wikipediaなどのデータベースではサッカーチーム在籍期間とクリケットチーム在籍期間が重なっているが、実際はどのような形で契約していたかということは不明)

最後に

若者たちの社交場として誕生したドーキング・ワンダラーズはわずかな年月で急成長を遂げ、ついにEFLまであと一歩のところまで到達しました。
しかしこのドラマは豊富な資金力などといった現代サッカー界を支配するものがつくりあげたわけではありません。
チームの不屈の精神と信念、そしてクラブ愛がつくりあげたと言えるでしょう。
監督兼オーナーのマーク・ホワイトは語りました。
「もしチームが上手くいかなくなったら、まず私(マーク・ホワイト)を監督から解任します。何故なら私がドーキング・ワンダラーズの一番のファンですから」
彼らが今後どのような道を進むのか、目が離せません。

チーム実績

優勝
・イスミアンリーグ・プレミアディビジョン(7部) 2018-19
・サザンコンビネーション・ディビジョン3(11部) 2010-11
・ウェストサセックスリーグ・プレミアディビジョン(12部) 2006-07
・ウェストサセックスリーグ・ディビジョン2・ノース(13部) 2003-04
・ウェストサセックスリーグ・ディビジョン4・ノース(15部) 2000-01
・サリー・シニアカップ 2021-22
カップ戦最高成績
・FAカップ 予選ラウンド4回戦  2021-22
・FAトロフィー 3回戦  2019-20
・FAベース 予選ラウンド2回戦  2012-13, 2013-14, 2014-15

スタジアム
Meadowbankスタジアム 3000人収容(内、座席は522席)
最高観客動員数 3000人 vs エブスフリート・ユナイテッド:ナショナルリーグ・サウス昇格プレーオフ決勝戦 2022.5.21

参考記事

今後もナショナルリーグのチームを中心に紹介していきたいと思うので、ぜひフォローをお願いします。

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