日本点字図書館を見学させていただきました!
こんにちは、あーモンドです。
本日は高田馬場にある日本点字図書館について、ご紹介したいと思います。
基本的に日本点字図書館は、目の見えない・見えにくい人々のために設立された図書館であり、一般利用できる場所ではありません。
しかし、日本人口の約5人に1人が75歳以上の後期高齢者となる「2025年問題」が来年に差し迫る今日、ユニバーサルデザインとは何か、高齢化に伴う視力低下に向けて役に立つ情報や技術とは何かを学ぶのに最適な場であると思い、この度ご訪問させていただきました。
機会がない限りなかなか足を運ぶことのできない場所ですが、有難いことに快く館内の見学の許可をいただき、スタッフの皆さんのご厚意で、たくさんお話を伺わせていただきました。
ぜひ皆さんにも日本点字図書館の活動の全貌を知って頂くことで、今後の社会や生活のあり方を考えるきっかけとして、お役立ていただけると嬉しいです。
日本点字図書館とは
日本点字図書館は、目の見えない・見えにくい人々のために設立された図書館であり、点字に翻訳(点訳)された小説や広報誌、朗読された本の無料貸し出しをはじめ、様々なサービスを提供する施設です。
日本点字図書館の歴史
日本点字図書館は本間一夫さんによって1940年に設立されました。彼は5歳の時に脳膜炎という病気にかかり、後遺症として視力を失いました。その後13歳の時に函館盲啞院にて点字と出会い、ロンドンに世界一の点字図書館があることを知り、日本にも作りたいと決心。25歳の時に日本全国の希望者に無料で点字本を貸し出す「日本盲人図書館」(現日本点字図書館の旧名)を設立。当時は点字の本は種類も数も少なく希少だったこともあり、保有する点字図書数は700冊でしたが、今では年間約17万タイトルを貸し出す日本最大級の点字図書館となっています。
主なサービス
1.貸し出し・配信サービス
点字図書・録音図書、録音雑誌などを無料で全国の利用希望者へ貸し出しています。また、展示と録音図書データを配信するサービスを行なっており、パソコンやスマートフォンを使って図書を利用することができます。
点字図書と録音図書は指定の郵送箱・郵送ケースで郵送されるため、返却の際もその箱やケースにいれて返却したり、厚みの薄い録音図書の場合は赤ポストで返却をすることも可能です。
録音図書はものによって、一冊あたり16時間に及ぶこともあるようです。利用する際には専用の再生機が必要なため、一般的なCDプレイヤーなどでは使用できない特別な作りなのだそうです。
2.点訳・朗読および本の調査
点字図書や録音図書の製作、ならびに専門対面リーディングサービスや希望点訳・個人朗読、レファレンスサービスなど、個々のニーズに合わせたサービスを提供しています。
日本点字図書館ではボランティアの方々によって一冊ずつ点訳作業や朗読の録音が行われています。近年はコンピューターでの読み上げ機能を活用したデジタル図書の製作や提供にも取り組み始めているそうです。
専門対面リーディングサービスは、手持ちの専門図書や資料を対面で読み上げるサービスです。日本点字図書館に来館可能な視覚障害者であればどなたでも利用できます。
希望の本の点訳・朗読(希望点訳・個人朗読)に関しては、東京都に在勤・在住・在学の方のみ利用可能なサービスとのことで、日本点字図書館や他の図書館にない教養図書を要望に応じて点訳・朗読するサービスです。図書や資料の検索と紹介を行うレファレンスサービスもあります。
3.ふれる博物館
日本点字図書館が2018年に設立した、 視覚障害者 を中心に、誰もが無料で利用できる博物館です。3D模型などを用いた触察鑑賞に特化した展示を行い、企画展などを予約制で実施しています。
webサイト:https://www.nittento.or.jp/about/fureru/index.html
4.相談・訓練事業
見えない、見えにくいことで生じる困りごとや福祉サービス、訓練等の情報提供と、保有感覚を活用して生活の質の向上を目指す自立訓練を提供しています。
人生の途中で目が見えにくくなった方々に向けた、点字やパソコンの講習会なども開催しています。
5.各種広報誌や商品カタログの点字化・音声化
国や地方自治体、企業などから注文を受け、各種広報誌や商品カタログなどを点字化、音声化しています。
6. 用具/点字図書の販売:
わくわく用具ショップ:https://yougu.nittento.or.jp
点字器や白い杖だけでなく、音声で使える調理器具や触覚でわかるゲームなど、生活を助けてくれる便利グッズを約900点販売しています。便利な支援機器の体験会を開催したり、オンラインショップも運営しています。
日本点字図書館の一階に販売ショップがあり、様々な商品が陳列されていました。日常生活に役立つ用具をはじめ、視覚障害や聴覚障害の子どもと一緒に楽しく遊べる、ユニバーサルデザインのおもちゃ「共遊玩具(きょうゆうがんぐ)」や、触れることで時刻を知る触読式時計など、デザイン性も機能性も抜群のプロダクトがたくさん並んでいました。
また、中でも「触図(しょくず)」と呼ばれる点字のように指先で凹凸に触れて鑑賞する本はどれも面白く、触れて学ぶ教材としてもとても興味深いものでした。日本点字図書館が主体となり、各書店と共同制作している本もあるそうです。
7.その他サービス
企業の商品や映画作品などに用いられる点字サインや触知案内図の製作・監修や、アジアの視覚障害青年支援など、幅広い分野で活躍しています。
近年話題になった視覚障害をテーマにしたドラマ・映画作品でも、日本点字図書館が販売する用具を使用していたり、監修に携わっていらっしゃいます。
わくわく用具ショップの注目プロダクト
見学の際にお見せいただいたプロダクトの中で、エシカル消費やアップサイクルに直結したプロダクトを発見しました!これらの販売によって発生した収益は、新しい点字図書の製作費用に役立てられるそうです。
一つ目は、廃棄予定だった蔵書をリサイクルした素材「テンジペーパー」でできたブックカバー&トートバッグです。ブックカバーの裏表紙は昔のおしゃれ封筒でおなじみの、”紐綴じ”(2組の丸い円盤状の留め具に細い紐を渡して綴じるもの)がついており、中には小説大のフリーノートが入っており、そのままメモ帳としても使用できます。
二つ目は、廃棄予定だった点字印刷原板(亜鉛板)をアップサイクルしたマグネットです。元々板状のものということもあり本体は薄めですが、形や種類も豊富で、見ているだけで癒されること間違いなしの商品です。
いかがでしたでしょうか。
単に”日本点字図書館”という名前からだけでは想像できないほど、多岐にわたる事業展開を繰り広げていることに驚いたことかと思います。
私も最後には、図書館に行ったというよりも、一企業の事業説明会をオフィスで受けたような気持ちになりました。
それだけ、本間一夫さんをはじめ、視覚に障害のある人々の文化向上を願い、書物を通して心を繋いだ、多くの方々の想いが詰まった場所なのだと思います。
人の心に寄り添う気持ちが豊かな社会を創り出す。そんなシンプルな答えの先に、これからの社会が、もっと優しさに満ちた世界になれるヒントがあるのだと思いました。
改めて、お世話になりましたスタッフの皆様に心からお礼を申し上げます。
ここまでお読みいただいた皆様、どうもありがとうございます。
日本点字図書館についてもっと知りたい!と思っていただけた方は、ぜひ公式webサイトや、下記に参照する関連サイトをチェックしてみてください。
またBonojectやnoteにて、日本点字図書館の事業概要や関連著書をまとめた記事を公開しますので、ぜひそちらもチェックしてみてください。
関連サイト一覧
ーーー
公式サイト:https://www.nittento.or.jp/
わくわく用具ショップ:https://yougu.nittento.or.jp
ーーー
見えない人たちにも利用しやすい全国ミュージアムリスト:http://www5c.biglobe.ne.jp/~obara/museum/museum05.htm
花王の視覚障害者向け情報
https://www.kao.com/jp/sustainability/society/community/barrier-free/visually-challenged/
ふれる博物館:https://www.nittento.or.jp/about/fureru/index.html
3D4SDGs:https://3d4sdgs.net
ーーー
Bonoject公式サイト:https://www.bonoject.com/
Instagram(活動紹介):https://www.instagram.com/bonoject_projects
Instagram(イベント紹介):https://www.instagram.com/bonoject_event/
Instagram(本・映画紹介):https://www.instagram.com/bonoject_book/
ーーー