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お薦めはスコットランドの島めぐり~中村 隆文×鹿島 茂、中村 隆文 『物語 スコットランドの歴史』(中央公論新社)を読む~

第45回の月刊ALLREVIEWSノンフィクション部門はスコットランド史が専門の中村隆文先生を迎えて、2022年5月に刊行されたばかりの先生の著書、『物語 スコットランドの歴史』(中公新書)を取り上げます。
エリザベス女王が亡くなられたのもスコットランド。英国からの独立が始終取りざたされるなど関心は高まっています。
スコットランドにはまだ行ったことがない鹿島先生、一度は行きたいスコットランドについて、お話を聞いていきます。
※対談は2022年10月8日に行われました。アーカイブ視聴可能です。

ハイランドにうっそうとした森はない?

スコットランドといえば、ブリテン島の最北端に位置していることは皆さんご承知おきのとおり。そしてスコットランドは大きく分けて、北のハイランドと南のローランドにわかれます。エジンバラやグラスゴーはローランドに属します。一方、ハイランドは、日本ではネッシーのいるネス湖で有名。講演では、大画面モニターに映し出された地図が大活躍します。


WIKIPEDIAより


課題本『物語 スコットランドの歴史』はスコットランドの歴史をほぼ年代順にまとめています。冒頭、紹介されたのはピクト人と統一アルバ王国の話に続き、シェイクスピアで有名なマクベス(在位1040年~1057年)の話。この時代、スコットランドでは、王位継承は「タニストリー(Tanistry)」という「さかのぼって曽祖父までに王を親族としてもつ者」から王を選ぶというシステム。一見、優れた者が王になるようなシステムですが、現実には、王位継承は血で血を洗うものでした。
自身も夫人も王の親族だったマクベスは正当な王位継承権保持者。シェイクスピアが描くような王位略奪者ではありません。その治世は17年にもおよび、おおむね平和だったそうです。
そして、ハイランドは、岩が多く、深い森はないそう。『動く森』はシェイクスピアの創作のようです。リチャード3世は善良だったというジョセフィン・テイ『時の娘』を思い起こさせる話ですね。
(2022年10月10日補足:中村先生より以下のご指摘がありました。「ハイランドは基本的に荒涼としていて、うっそうと深い森はそこまでありません。もちろん、舞台となったコーダ付近には少し森があり、そこの城は木々に囲まれていますが、そもそもそこはマクベスと無関係の場所で、舞台設定そのものはシェイクスピアの創作なんです」中村先生、正確なご指摘ありがとうございます!)

スコットランドとフランスの縁

仏文学者の鹿島さんは当然スコットランドとフランスの縁について言及します。
まず、有名なのが、メアリ・スチュアート。最初の夫はカトリーヌ・ド・メディシスの息子、フランソワ2世。フランス王だった夫が夭折するとメアリはスコットランドに戻り、波乱の生涯を送ります。エリザベス1世が子どもを遺さなかったため、処刑されたメアリの子どもが王位を継ぐということになるのも、歴史のめぐりあわせ。
19世紀に入ると、スコットランドの詩人にして文学者のウォルター・スコットがバルザックらフランスの文学者に多大な影響を与えます。

村上春樹のエッセイもお薦めです

お二人の話はジャコバイトの乱や、イングランドより優れていたスコットランドの教育制度など多岐に上ります。アメリカが開けるに従って栄えていったグラスゴーの話も。大西洋に近いことが決め手となりました。
最後に中村先生から、スコットランドお薦めの場所が紹介されました。エジンバラもグラスゴーも大都会になってしまい、パブに行っても地元の人と交流は難しい現在、スコットランドの島めぐりは地元の人とも語れるしお薦めだそうです。村上春樹がエッセイに書いたアイラ島も良いところです。ウイスキーの醸造工場もあります。

スコットランドの魅力がたっぷりの1時間半。詳細は対談をお聞きください。中村先生のほかの著作も読んでみたくなります。


【記事を書いた人:くるくる】

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