「小確幸」をこの胸の真ん中に。| #生きるということ 009
「キミが撮りたいもの、この言葉だと思う」
そう言いながら、付箋のついた一冊の本を私にくれた。
付箋のついた頁を見ると、こんな風に書いてあった。
生活の中に個人的な「小確幸」(小さいけれども、確かな幸福)を見出すためには、多かれ少なかれ自己規制みたいなものが必要とされる。たとえば我慢して激しく運動した後に飲むきりきり冷えたビールみたいなもので、「うーん、そうだ、これだ」と一人で目を閉じて思わずつぶやいてしまうような感興、それがなんといっても「小確幸」の醍醐味である。そしてそういった「小確幸」のない人生なんて、かすかすの砂漠のようなものにすぎないと僕は思うのだけれど。
村上春樹「うずまき猫のみつけかた」
その頃の私は、初ボーナスで手に入れたPOLAROID SLR690でひたすら自分の身の回りを撮り集めていた。通りすがりの植木だったり、一人暮らしの窓から射す光だったり、テーブルに置いた柚子だったり、公園にポツンと置いてあるボールだったり。うまく言葉にはできていなかったけれど、とにかく感動していた。大きいことが起こるわけではない毎日にも、こんなに残しておきたいと思う光景がある、ということに。
小確幸。
小さくて、ささやかだけれど、自分だけの幸せ。
それから、随分と時間がたって、今日は2021年2月1日。
2020年から急に変わらなければならないことが多くなったけれど、私が撮る理由・根っこの部分は、あの頃から全然変わっていない。
ささやかで小さくて、この大きな世界で見たら、取るに足らないことかもしれないけれど、でも、自分にとっての確かな幸せ。
それが一体何なのか、写真を撮りながら、考えている。
そして、いつだってこの世界に感動できる自分でいたいと願っている。
「小確幸」をこの胸の真ん中に。
ロバート・キャパのように1枚で世界を変えることはできないかもしれないけれど、優しい風のように誰かの胸に小さな幸せを運べるといいなと思っています。
後まで読んでくれてありがとう。
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FUJIFILM X-T4 XF35mmF1.4 R