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ケーキと駅ビル
昔から母がお菓子作りをしていたからか、お菓子やおやつの部類が好きである。
とくに生クリームとチョコレートには目がないので、私にとって生ケーキは最強のおやつである。ふだんから生ケーキを買って帰るようなたちではないので(そうしたいのは山々だが)、たまに食べるといっとうおいしく感じる。
自分と母の用事を済ますために、近くの駅ビルへ行った日だった。
卒業式のための袴を予約したり靴を買ったりしたあと、せっかくなら何かお土産でも買うかということで、いちごのミルクレープとコーヒーゼリーとシュークリームを買った。
コーヒーゼリーを食べた。家で作るものとは違いホイップクリームやらなんやらがたくさん乗っているので本当においしい。
シュークリームにはこれでもかというほどのホイップクリームとコーヒークリームの二つが詰まっていて、母が半分くらい食べたのが回ってきた。当然のように食べ切ろうと思って手をつけたのだが、半分くらい食べたところで様子が変わった。
胸焼けがした。
高校生の時には絶対に感じ得なかった嫌な感触が、恐れていた事態が、ついに自分の元にやってきた。
「油ものがたくさん食べられるのは若いうちだけ」と言われていた昔のわたしは、そうは言っても好きなものならすぐつらくはならないだろうと過信していた。そう、本当に過信だったのだ。
食べきれなかったそれは弟にパスした。なんでもないように食べきっていて、筋違いとは思いながら悔しがってしまった。
これからはあの大好きなケーキも肉の脂身もスターバックスのフラペチーノもおいしく食べきれなくなる日が増えていくのだろうか。それはどうしようもなくつらい。
駅ビルは改装工事を始めている。何店舗かはそのまま閉店するらしい。
わたしは大人になった。街も姿を変えていく。
人生は待ったも聞かず流れていく。