【アトピー性皮膚炎】プロトピック軟膏とステロイド比較試験から使い分け
いつき博士です。
アレルギー患者教育向けサイトを運営しております。
今回はアトピー性皮膚炎の
治療薬として使用されてきた
プロトピック軟膏について勉強しました。
長いこと使用されている治療薬で
もうご存知の方も多いかもしれませんが
どのくらい良い薬か改めて
学んでいきましょう。
1.プロトピックとは
プロトピック(タクロリムス)軟膏は
1999年6月に世界に先駆けて日本で承認され、
同年11月にアステラス製薬から発売されました。
2017年10月以降はマルホが販売を受託し
製造販売元となっております。
プロトピックはT細胞のカルシニューリンと
競合的に結合して活性化を阻害し
T細胞活性化やIL2などのサイトカイン産生を
抑制する効果を持ちます。
これにより過剰な免疫を抑えることで
アトピー性皮膚炎の炎症や痒みを
おさえています。
ステロイドとは作用点が異なるんですね。
成人には0.1%、2~15歳には0.03%を
1日2回、12時間間隔で使用します。
プロトピックの特徴としては
湿疹部位のみから吸収されます。
これに関して他の記事で詳しく紹介しています。
2.どんな試験を経て承認されたか?
プロトピック軟膏では
大まかに下記の試験が
公表されています。
今回は上記の
ステロイド外用剤と
比較した2試験について
ピックアップしていきます。
3.ステロイドとの比較試験
試験デザイン
今回の試験では
プロトピックとアルメタ軟膏(①試験)
プロトピックとリンデロン軟膏(②試験)を
それぞれ比較して
有効性と安全性を評価しています。
以下①②試験と記載します。
※アルメタ軟膏:mediumクラス
※リンデロン軟膏:strongクラス
<試験デザイン>
無作為化群間比較試験
①試験の対象は
顔面・頸部に中等度以上の
病変を有する16歳以上の
アトピー性皮膚炎の患者
有効性の評価対象症例数が143例
安全性の評価対象症例数が151例
②試験の対象は
体幹(頭部除く)・四肢に中等度以上の
病変を有する16歳以上の
アトピー性皮膚炎の患者
有効性の評価対象症例数が162例
安全性の評価対象症例数が178例
有効性と安全性は別々で評価するんですね。
試験結果-1(有効性)
アトピー性皮膚炎の
各皮膚所見の推移を総合的に考慮し
全般改善度を6段階で判定しています。
アルメタ軟膏よりも
50%程度改善に差が出ている
結果となっています。
リンデロン軟膏とは
ほぼ同程度の改善の
値を示していますね。
試験結果-2(副作用)
刺激感に関しては
一過性のものが多く
全例が外用期間中、外用終了とともに
発現しなくなったという結果となっています。
1週間程度でほとんどは消えるんですね。
刺激感がどうして起こるのか
作用メカニズムも含めて他の記事でまとめます。
<プロトピック軟膏による刺激について>
4.いつき博士の考察
今回はプロトピック軟膏が
どのくらい良い治療薬なのか
評価した試験でした。
2つの試験結果からは
storongクラスのステロイド外用剤と
同等程度の改善値を示していましたね。
顔にも使用ができるため
ステロイドに抵抗感のある方など
臨床の現場で使いやすいんですよ。
プロトピックは小児への適応もあり
20年以上も臨床で使用されている
実績も含めて、今後も治療薬として
期待できそうですね。
心配されている刺激感に関しては
ほてりのない時に塗る
使い始めは狭い範囲から使用する
といったような工夫をするのもいいでしょう。