日々是雑感2017/12/14
最近の美術の潮流、落ち着けば4つに大別できると思う。
写実を追求する潮流、徹底的に形を壊す潮流、写実と抽象の狭間で何かを求める潮流、それ以外の4点である。主に絵画ではそう感じる。
一つ目の潮流は言わずもがな、古き古典、新しき古典と言うべきか、王道で失敗のない保守傾向にして職人的である。日本においては日展をはじめとして多くの組織で写実画が定番となっていて、まず目で見て安心を求める。自身においてもあるとないとでは落ち着き方が違う。
二つ目の潮流は早い話抽象画のことである。欧州における印象派誕生の経緯や日本における明治大正期の美術潮流、昭和平成へと続く美術潮流、一般的な歴史観から見ると非常に面白い。日本の激動期に当たる明治大正期はこの二つ目の抽象画に影響またはその画面に何かを求めているのではないかと思う。
三つ目の写実と抽象の狭間で何かを求める潮流は特に今の時代に多い潮流だと自分は考える。美術の正規の教育(ここでは主流の芸術大学、美術大学、造形大学に絞る)を受けて過去、現在の作品に触れる事で新たなインスピレーションを掴もうとする。しかし、それは欧州や日本で今まで培って来た、アカデミックな教育を否定する事である。本来なら保守傾向で「それはダメだ」と言うべきところであるが、自分自身は「壊して歓迎」する立場だ。日本の大衆芸能の一つである落語も、「つくって、守って、壊す」が一つの定番となっているのだ。
写実と抽象の融合や兼帯(日本美術史の単語を借りている)といった表現が適当なのかもしれない。今までにない見方ができるとして最近の美術界では席巻しているようだが、この表現に関しては自身は作品の画面考察が足りない傾向を感じている。それについてはいつか批評の機会を取りたいが、何某か流行としてのこの潮流は物足りなさが先行しがちである。
4つ目については、意外だが、上記三つの潮流とは全く異なる。タイプとしては抽象画に近いが、アカデミックな教育はもとよりそういった機会がなく独学で追求した人である。直近で言うところ、ビートたけし氏(北野武氏)がぴったり合うだろう。彼の場合は交通事故という機会によって得られたインスピレーションと言える。今の彼はそのきっかけで得た独自の表現で日本の展覧会はもとより世界を席巻している数少ない成功者といえよう。
美術の世界に入るきっかけはいろいろあるが、主体性はもとより環境によることもあり、最終的にまとめれば確かにこの4パターンに当てはまるケースが多い。ざっくりではあるが、違いないと信じたい。