「幸せの波紋を創っていきたい」- スウェーデンが私に教えてくれた、あるがままの姿を愛する生き方 - |ALiveRallyインタビュー#10
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今回は、国際教養大学(AIU)の13期生で、現在秋田県でヨガインストラクターとして活躍されている、鍵谷美波さんにお話を伺いました!
小さいころから、「幸せとは何か」に興味をもって育った美波さんが、AIU生活、そして幸せの国・スウェーデンに留学して感じた、「あるがままの自分の姿を愛すること」とはなんなのか?
北欧・スウェーデンの生活に興味がある人
自分の人生を立ち止まって振り返っている人
ウェルビーイングやメンタルヘルスに関心がある人
日々の忙しさにちょっぴり疲れてきた人
に是非読んでいただきたい記事です!ご一読ください😊
ー-今日はよろしくお願いします!美波さんは憧れの先輩なので、今回取材させていただけてとても光栄です。
A. よろしくお願いします!
ー-まず、美波さんが現在されている活動について教えてもらえますか?
A. 2020年の3月に大学を卒業して、今は社会人2年目、もうちょっとで3年目のところです (2021年現在)。就職はせずに、フリーランスという形で秋田でヨガのインストラクターをやっています。
ー-どうして秋田で活動しようと思われたんですか?
A. その質問はよくいただきます!知り合いの女性研究者の方に影響されて、「秋田で女性が起業する」キャリア選択の先駆けになりたいと考えました。秋田にも性別や年齢にとらわれないキャリアを歩む選択はあるということを、若い世代に見せられる存在になることが今の目標です。
地元は北海道の函館なんですけど、秋田にはAIUに入学したことをきっかけに住むようになりました。あまり都会が得意じゃない私にとって、秋田の空気ってすごく居心地がいいんですよ。働くとしても、東京みたいに忙しいところだと、きっと自分も疲れちゃうだろうなあと思っていました。そういう理由で、大学在学中から、秋田に残って、就職ではない違った形でキャリアを進められたらいいなっていうのは漠然と考えていたんです。
ー-美波さんがAIU在学中に、「幸せとは何か?」についてプレゼンをされたことがある、とお聞きしました。どうして「幸せ」に興味を持つようになったんですか?
A. 私自身、小さいころから感受性が豊かな方で、「ご飯がおいしいな」とか「天気が良くて空がきれいだな」というような、日常にあふれる小さな幸せに対しても敏感なんです。でも、どんどん年齢を重ねるごとに、自分の周りにいる友達や大人が、日常に幸せを感じられず、どこか疲弊しているように見えることが多くなっていました。みんな、「幸せだなあ」っていう気持ちだけで生きてるわけじゃない、っていうのを周りの人たちの雰囲気から感じ取るようになったんです。それで「幸せを感じられる人とそうじゃない人のギャップって何だろう」って、自然と考えるようになりました。
日本って経済的に豊かにもかかわらず、精神的に豊かじゃないみたいなことは本で読んだこともあったし、ストレス社会っていう言葉も高校生ぐらいから聞いていました。そんなときに、経済的に豊かな国ではないけど幸せな国としてブータンが取り上げられているのを見て衝撃を受けました。それ以来、「この違いは何だろう」って思ったりとか、「日本人はどうやったら幸せになれるの?」というような疑問は漠然と持ってたかなって思います。
ー-小さいころから「幸せ」について考えていたなんて、とても素敵です。
A. あとはやっぱり、両親の影響はすごく大きかったと思います。すごくハッピーな人たちなんですよね。「私たちは好きな仕事をやっていて、そこに充実感とか幸せを感じているんだよ」と、小さい頃から聞かされていました。
「苦しいことも沢山あるけど、絶対大丈夫だ」って思えるのは、そんな幸せそうに生きる両親の姿勢から得た考え方だと思います。
スウェーデンは幸せの国。留学で見て感じた「幸せ」の根幹とは?
ー-そんな美波さんが、AIUの交換留学でスウェーデンに留学した理由は「国民の幸福度の社会的土台を知りたかったから」とお聞きしたのですが、もう少し詳しく教えていただけますか?
A. 大学1年生のときに「スウェーデンの国民の幸福度、QOL(クオリティ・オブ・ライフ / 生活の質) が世界で一番高い」と書かれた記事を見て、「スウェーデンってなぜ、幸せな国と言われているんだろう」っていうのを知りたくなって、留学はスウェーデンに行こうって思うようになりました。調べてみたら、北欧の教育って日本と全然違っていたんです。すごく社会福祉に力を入れている国で、教育が非常に充実しているんだっていうことが分かりました。
やっぱり1年という長期間外国に住むっていう機会は中々ないし、実際に幸福度が高いって言われている社会に入ってみて、「なにが国民の幸福の基盤になっていて、どんなことが日本社会と違うのか」っていうのを見ていきたいなと思ったのが一番の理由です。
ー-確かにスウェーデンって結構、教育系の勉強をしたい人たちが訪れるイメージだったんですけど、留学中は教育に関する授業を取られたんですか?
A. もう取りたい授業がありすぎて、特別支援教育、スウェーデンの教育の歴史とか、それに関連してスウェーデンの社会制度についても勉強しました。
奨学金を使って留学したんですが、自分で留学計画を立てて、現地で実践するみたいな課題があったので、色々調べてみたんですね。それを通じて感じたのは、「日本では自分自身の自尊心を育てたり、幸せだなって言う価値観を育てるような教育が足りていないんじゃないかなあ」ってことでした。
「心の教育」って自分なりに言ってたりもしたんですけど、実際に現地では子どもたちのウェルビーイングを育てる教育活動がたくさんありましたね。特に、※アウトドア教育っていう教育アプローチが盛んらしくて、それについての勉強もしましたね。卒論のテーマにつながるトピックにもなりました。
授業や体験を通して、人が感じる幸福の土台には、教育の中身がすごく影響していると感じたんですよね。「どうやったら幸せになれるのか」っていうテーマを小さいころから考えていた自分にとっては、すごく大きな経験であり、発見でした。
ー-日本の教育に「幸せ」になるための教育が足りないなんて考えたこともなかったです。確かに、日本の学校のスケジュールってすごく忙しいし、放課後には塾や部活があるから、生徒が「幸せだ」と思う瞬間よりも「大変だ」と思う時間の方が多そうですね。
A. そうですね。それに加えて、子どもたちの雰囲気も、日本と全く違う。特に、小学校6年生ぐらいの授業を見学したとき、とても印象に残ることがありました。どの学年の教室にも、身体や知的に障がいのある子どもたちが一定数クラスの中に必ずいるんですよね。日本の普通級と特別支援学級のように、分けられていなくて、同じ教室にいるんです。何かの授業を見学していたときに、急にある障がいを持つ生徒が奇声をあげたことがあって、私は驚いたと同時に、怖かったんです。だけど、ほかの子どもたちは、ただただ普通に授業を受けていました。小さいころから、自分とはちょっと違う個性的な子たちと一緒に生活をしてきているから、ちゃんとお互いを理解しているんだなって、その時思ったんですよね。
それって障がいがある・ないっていう話だけじゃなくって、宗教、文化、国籍、言語などのバックグラウンドがそれぞれ違う子どもたちが、ひとつの教室に集まっていることが影響してるんだって思いました。「自分は自分らしくあっていいし、自分と他の人たちが違って当然」っていうのを、子どもたちが学校での学びや生活の中で、なんとなく学んでいくんだろうなっていうのを強く感じたんですよね。
ー-確かに、それは大きな違いですね。日本だと、まだまだ画一的な雰囲気が学校現場にもありますよね。
A. 日本では、自分が人と違っちゃいけないとか、人と違うことに対してコメントしたりだとか、そういう価値観がまだ根強いように感じます。それに対して、スウェーデンでは個人の好きなことややりたいことがとても大切にされており、すごく居心地がいいなって感じました。ほかの人が何をしようと、それに対して誰が何を言うわけでもないっていうのが、何かすごい自由だなと。
ー-以前お話した際に、「みんなありたいように生きていてそれを尊重する風潮が根付いていたことっていうこと」が留学中で大きな学びだったと教えてくださったのも、今おっしゃったことに関連していますか?
A. そうですね。面白いエピソードがあって、大学のキャンパスの中にいるとき、知らない現地学生が、みんな私にスウェーデン語で話しかけてくるんです。明らかにアジア人の見た目をしているのに、なんでみんなそうやってスウェーデン語で話しかけてくるんだろう?って最初は疑問に思いました。でもそれって「相手を見た目で判断しない」っていう精神につながっているんだってあとからわかって。
日本だったら、外国人っぽい見た目の人には英語で話してあげるのが親切だって思う人が多くて、「見た目が日本人っぽくなくても、日本に長年住んでて日本語もちゃんと喋れる人かもしれない」って考えられることは少ないですよね。「外国人っぽい人は日本語が話せないだろう」「女性は男性が好きだろう」とか、そういう固定観念で他者を判断する傾向がある気がする。
でもスウェーデンではそれがなかったんです。周りの人たちに固定概念を押し付けられることのない居心地の良さが社会全体にあります。「あるがままの私を尊重される」を感じた、素敵な経験だったなって思います。
留学に行くまでは、そういう社会に生きているっていうのも分かっていなかったんです。だから帰ってきてやっぱり、日本で「●●であるべき」を押し付けられる居心地の悪さを感じたりしました。でも海外に行ったことで、日本の良さが分かるっていうことももちろんあったし、難しいですね。
なんでもない時間は、私を大切にするための時間。
ー-ここまで幸せについてのお話を主に聞いてきましたが、ほかにスウェーデンで感じた気づきはあったりしますか?
A. 私が行ったリンショーピン大学は、1セメスターが4ヶ月あって、比較的自分の自由な時間を確保しやすい環境にありました。部活もやっていなかったから、論文をすごく長い時間読んだりできるし、課題にもすごい時間をかけられる。物理的にたくさん時間ができた中で、コーヒーを片手に一息つくような時間ができました。
スウェーデンには、「フィーカ (Fika) 」っていう、コーヒーやお茶を飲みながら友達と喋る時間を一日のうちに持つ、という文化があります。多分留学前の私なら、色々なことに追われていてそんな時間を楽しめなかったと思うんですけど、現地でフィーカに出会って、ほんとに自分自身が変わったなと思います。フィーカって、言ってしまうと本当に何も生み出してない時間、一緒に座ってコーヒー飲んでお菓子食べて、いい時間になったら帰るっていうだけの時間なんです。日本社会には生産性とか効率とか、常に何かを生み出さなきゃいけないっていう雰囲気があるし、私もその中で育ってきたから、最初は「こんな時間過ごして大丈夫かな」ってちょっと心配になるぐらいだったんですけどね。今までそういう時間の過ごし方をしたことがなかったから、色々な感情が渦巻いてました。
でも、ただダラダラするためだけじゃなくて、自分たちがより心地よく生きていくためにとか、明日の仕事頑張るために、このフィーカの時間が必要なんだよっていうことを現地の人たちから感じました。本当にただぼーっとする時間なんですけど、その時間で自分のエネルギーを回復させている、っていうのが素敵だなあと。「自分を大切にするための時間をとる」って本当にウェルビーイングのために大事なんですね。だから、フィーカは絶対日本に持って帰って広めたいって思いましたね。
ー-何もしていないっていう時間をとることって中々ないし、罪悪感を覚えそうですが、「明日の自分のために充電する」ための時間を持つって素敵ですね。
A. 本当にそうですね。だから留学から帰ってきて、大学生最後だし部活もやりたいし、もっと勉強したいことも留学先でできたから、就活はしないっていう決断をしました。やっぱり帰ってくるとしないといけないことが多くて忙しかったんですけど、合間の時間に忙しそうな友達を部屋に呼んでフィーカの時間をとって、それで友達がちょっと一息つけたって喜んでくれたりすると、それもまたよかったなって思ったり… 今までなかった「時間」の感覚を留学先で学ぶことができました。
フィーカ以外にも、本当に何でもない時間っていうのを、すごい楽しんでたなって思います。自然の中で、森の中をただ歩いたりして過ごす時間とか、そういう時間は本当にスウェーデンの日常の中にいっぱいあって、何をやっても日常の中にきらめきとか幸せな時間とか宝物みたいなのを見つけていくカルチャーなんだなって感じました。
ー-何もないように見える時間が、日常を豊かに、幸せにしていたんですね。
A. そうですね。私は元々、やりたいことをとにかく全部やりたい人で、大学に入って、部活動や授業がとても忙しくなった時期に、涙が止まらなかったり苦しくなったりっていう症状が出るようになったこともありました。ちゃんと自分のやりたいことをセーブしなきゃ駄目だなと痛感した半面、何か自分の中で納得いってなかったっていうか、ちょっと悲しかった。やりたいことを全部やってる子もいるのに、真面目で完璧主義っていう性格もあって、私には全部できない。不器用な自分が嫌だったり、なかなか「幸せ」を感じられない時期もあったり。
留学したことで、生活の時間の中に余裕を持つライフスタイルに変わって、自分の心にもすごく余裕を持つことができるようになったんです。ああ、このぐらいのペースでいいなって思うようになりました。留学を経た後、卒業して自分の仕事もやってみて、「頑張る」と「休む」のバランス感覚っていうのが、今ようやく取れてきてる感じがしますね。
幸せを波紋のように広げていきたい~みんな幸せになっていい~
ー-ここまでスウェーデンでの「幸せ」についての学びをたくさん伺ってきたのですが、今後の美波さんはどのようにありたいと考えていますか?
A. 普段あんまり「どのようにありたい」と考えることはないのですが... ヨガの仕事も、2年後とか3年後もやってるかどうかわからないし、本当にそのとき自分に必要なこととか自分のやりたいものが出てくるだろうなって思っているから。でも、やっぱりまず自分が幸せでいたいっていうのは常に思っています。
私の名前には「波」っていう字が入ってるんですが、水面に一滴雫が落ちて波紋が広がっていくように、私の幸せがたくさんの幸せになったらいいなっていう意味なんだ、と捉えています。波紋ってやっぱり最初の一滴がないと広がっていかないものだし、やっぱり自分の心と体を崩しちゃったら、幸せなんて無理矢理にしか作れないなって思ってて。それを実現するツールとしてヨガがあり、性教育があったりするんです。自分なりの信念を持ちながら、その時々で自分がやれることをやっていきたいなって。自分のあり方は、留学先で心のスペースにゆとりをもつことや、ゆったりとした時間の流れを学び、感じたからできあがったと思います。
あとは、幸せであるっていうために、自分自身が自由であるっていうことも大事かなって感じていることで。もしかしたらね、何年後かに会社に就職するみたいなこともあるかもしれないんだけど、今は何かやっぱり自分のやりたいことをがむしゃらにやれて、その中で誠実にお仕事していきたいなって思っています。
ー-最後に、読んでくださった方に何かメッセージがありますか。
A. 偉そうなことは言えないですが、「みんな幸せになってほしい」って心から思います。AIUにいたときの私みたいに、色々なことが怖くなることとか、もしかしたら色々なことをやりすぎて崩れちゃうこととかもたくさんあると思うんだけど、本当に振り返ると一つ一つ、自分が幸せになるために必要なことが起こっているなって思うんですよね。
みんなそれぞれ自分が目指しているものとかなりたい自分像とか、実現したいビジョンとかを持っていると思うし、その中で大変なことや苦しいこと、悩むことがあって...「絶対大丈夫だよ」って言うのは難しいけど、「やっぱりみんな幸せになるために生まれてきたんだと私は思う。だから大丈夫だよ」って思います。苦しくなったら全然休んで大丈夫だし、そのままのあなたでいい。大変なこととかがあったらちょっと思い出してもらえたらいいなって思いますね。
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Interviewer: Kyoko Fukuyama
Writer: Kyoko Fukuyama
Editior: Kyoko Fukuyama, Moe Honda
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