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星湯(ほしゆ)短編小説
昨夜は仕事帰りに家族で大きな温泉施設によりました。
夫と息子は男風呂、私は女風呂でそれぞれの時間をのんびりと過ごしました。
帰り道、運転をしながら夫がつぶやきます。
「露天風呂で仰向けに浮きながら星を眺めたんだよ〜。そしたらいいストーリが降ってきてさ〜」と。
助手席にいる私にメモを取る様にうながします。ツラツラと話し始める夫。。。
途中まで進んだ時、私が手をとめました。
続きは録音にしましょうと、、。
そしてメモした内容を彼のLINEノートへ送ったのでした。
そして今日。
ふとそのストーリーを思い出しました。
そして
続きを私の方でも作ってみようと思いました。
星湯(ほしゆ) GTO夫婦合作
ふとした瞬間、人は自分をどこかへ解き放ちたくなることがある。
その夜、仕事帰りの僕もそうだった。自宅に向かう電車の中、ふと窓に映る自分の疲れた顔を見て、ふらりと予定を変えた。
目的地は温泉。街から少し離れたところにある、小高い丘の上に位置する「星湯温泉」だ。
土曜の夜、案の定温泉は賑わっていた。
家族連れや友人同士のグループ、恋人同士らしきカップルが楽しげに笑いながらチケットを買っていく。
そんな人波を抜け、僕も自動販売機でチケットを購入した。
ロビーには休憩中の人々が思い思いの時間を過ごしていた。ソファでくつろぐ老人、スマホをいじる若者、子どもをあやす親…。
喧騒に少し圧倒されながらも、僕は脱衣所に向かった。すぐに服を脱ぎ、タオルを片手に浴場へ入る。
湯気がもやのように漂い、空気が急にしっとりと体を包んだ。
「岩風呂にしよう。」
奥まった岩風呂は比較的静かだった。
腰まで浸かり、次第に全身を湯に沈めていくと、じんわりと疲れが溶けていくようだった。
仰向けになり、顔だけを湯の上に出して静かに深呼吸をした。
息を吸うたびに、温泉の独特の硫黄の香りが鼻に広がり、吐くたびに肺の隅々まで緩んでいく。
湯気の向こうに星が見える。
屋根のない露天風呂から、澄んだ夜空が顔をのぞかせていた。
冷たい空気が頬をなでる感触が心地いい。何も考えず、ただその光景を眺めていると、ふと子どものころの記憶が蘇った。
「星、綺麗だねぇ。」
小学生のころ、祖父と一緒に訪れた温泉で見た星空。
古い記憶の中、祖父の大きな手が僕の肩をそっと叩いたことを思い出す。
「星を見ると、遠い遠いところに行きたくなるだろう? でもな、人間ってやつは、どんなに遠くに行っても結局、自分に帰ってくるんだ。」
あのころはその意味が分からなかった。でも今なら少しわかる気がする。
どんなに仕事で走り続けても、疲れ切った体と心が求める場所は、静かで、温かくて、どこか懐かしい場所なのだろう。
仰向けのまま目を閉じた。遠くのほうで誰かの笑い声がかすかに聞こえる。
その音さえも、まるで水面に揺れる月の光のように柔らかく感じる。
温泉の湯気に溶けた星空と自分が一つになる感覚。そんなひとときを胸に、僕はまた明日からの世界へ戻る準備をしていた。
いかがでしたでしょうか?
帰る場所があるってしあわせですね💓
ではまた、次の投稿でお会いしましょう
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