染色家・柚木沙弥郎の企画展レポ[パターンの面白さ]
祖父卒寿の集いということで、1か月ぶりに帰省した。
気になっていた巡回展が開かれていたので、妹と見てきた。
はじめに、染色の製作技法を紹介する映像を見た。
糊や型紙を使いこなす技法の面白さが伝わってきた。bgmや構成なども素敵で良かった。
ただそれ以上に技法の理解によって作品の見方が変わった体験が面白かった。
これまでも染色作品を見てきたが、型紙=パターンが構成単位であることを踏まえると作品の工夫点や面白さが分かり、視野が広がった。
今回の企画展でよく考えたのもパターンだった。
音楽でパターンは「主題の繰り返し」で表現される。あるフレーズを少しずつ変えながら繰り返すことで、変化や強調が企まれる。良いフレーズを畳みかけて圧倒する使い方もあるが、正直飽きっぽい私に刺さらないことも多い。
空間芸術でパターンは同時に目に飛び込んでくる。だから飽きることがなく、とても強い主題として受け取れる。それが面白かった。
もちろん型紙の良し悪し次第ではあるが、丹念な繰り返しが「確かさ」や「展がり」を感じさせた。そのようなパターンの捉え方を時間芸術にも取り入れてみようと思った。
前半はパターンの繰り返しを主とした作品も、中盤後半では型を感じさせない作品や型を崩した作品が増えていき、その混ざっていく様が刺激的だった。「思っていたところに型がある」あるいは「実は型ではなかった」という驚きにあふれた作品たちだった。
染物だけでなく絵画、立体など多方面で制作を行われた柚木さん。
後半の2011年以降の作品は型を完全に外れ、一点ものの図象にメッセージを込める作品ばかりとなっていた。
なかでも実物の展示も行われていた絵本「雨ニモマケズ」は、メッセージ性の点で抜群に刺さった。一枚絵と一節が並ぶ見開きが繰り返されるだけの構成で、両者が持つ力強さをひしひしと感じた。
染色に始まる柚木さんの変化と、それぞれの作品の魅力を味わうための配慮が感じられる良い展覧会で満足できた。
その余韻に浸りながら迎えの車に向かった所、間違えて全く知らない人の車の後部座席を開けてしまい悲鳴をあげられた。本当にごめんなさい。
「この車だよ」と言った妹は絶対に許さない。
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