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盆踊り原風景
地域のお祭りに参加した。ここに越してきてから数年経つが、一度も参加したことがなかった。それも当然で、ウイルスの影響で4年ぶりの開催とのことだった。
空き地の中央にはやぐらが組まれ、そこから赤い提灯の列が四方へ伸びている。やぐらの周囲を種々の屋台が取り囲む。
和太鼓が鳴って、よくある盆踊りを中心としたお祭りだ。サマーフェスティバルと銘打っているが、夕涼み会と名付けたい雰囲気。
盆踊りは私に、赤っぽいオレンジ色に染まった人混みの中、祖母に手を引かれていた小さな頃を思い出させる。
白い生地にカラフルで小さな海の生き物たちが散りばめられた柄の浴衣。兵児帯を巻いて、鼻緒のきつい小さな下駄を履いていた。遠くまで聴こえてくる太鼓の音と炭坑節。人が列になって少しずつ進んでゆく。
サマーフェスティバルと言われると何だかあの頃の盆踊りとは別のもののようだ。大きくなった私は祖母の手ではなく焼き鳥と缶ビールを握りしめていた。でも相変わらず炭坑節は流れていて、一瞬にしてあの原風景が蘇る。
浴衣を着た小さな子供は私のよう。人が多くて、騒がしくて、涙目だ。
履き慣れない下駄で足を痛め、しかしどこも混雑して立ち止まる隙もない。あの頃の私だって泣きたい気分だったはずだ。それでも嫌なところはあまり覚えていなくて、不思議な色の夜に、そわそわして楽しかった気持ちばかり印象に残っている。
盆踊りは江戸時代に絶頂を極め、当時は数ヶ月にわたって連日踊り明かしていたという。バーニングマンさながらだ。明治には風紀を乱すとして禁止令が出たりもしたらしい。
私はミニマルテクノが流れるクラブで踊り明かすのも好きだけど、クラブ営業はずっと風営法のグレーゾーンにあるものとはよく聞く。
どこか宗教めいていたり、普段タブーとされていることを解放してしまう力があったりして、今も昔も人はその中で何かに取り憑かれたように踊り続けているだけだ。