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猛禽類とお茶したら
鳥好きの私がついに猛禽類を眺めながらお茶する機会を得ました。鳥カフェとか、フクロウカフェとか言われているあのお店。
そんなに猛禽類のこと知らないけど…な人がフクロウのいるカフェに行った場合こうなるを、いつかあなたのその時のために、以下に記しておきます。
デカい
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まず"けっこうでかい"ことに驚くでしょう。
普段鳥類なんて鳩やカラスくらいしか見ない私たちは、彼らを同じような鳥類だと思ってはいけません。もちろん種類にもよるのですが、彼らは大きめの猫、くらいの佇まいでそこに居るということを覚悟しておく必要があります。
ペンギンもそうですが、垂直方向に立ち上がったような格好になっているので身長が高いです。さらに彼らはペンギンとは異なり飛ぶことができますから、羽を広げると更にデカい。
私が知っている鳥はこんなんじゃない、なんかもう違う生き物でしょこれは。トトロか?
「よく来たね、遅かったじゃない。そこへお座んなさい」
お店の扉をそっと開けると、大きなシロフクロウが出迎えてくれた。この店のユニフォームなのだろうか、白い体に白いエプロンが馴染んでいる。店長らしきシロフクロウは入り口に近いテーブルを指差して(羽差して?)私たちを案内した。
しかし遅かったとはどういうことだろう。シロフクロウは私達が来訪することを知っていたのだろうか。確かに道中お気に入りのラーメン店を見つけた私たちは、少し寄り道して予定より遅めにお店に辿り着いたのであったが。
すごく目が合う
まずは案内されたテーブルで飲み物を注文します。そのあとは横の部屋で猛禽類と触れ合うもよし、お茶を飲みながらガラス越しに猛禽類を眺めるもよしです。飲み終えたあとは、カップを片付けてから自テーブルまで出張フクロウをお願いすることもできます。
フクロウを見ながらお茶、と思っていても次第に、見ているのか見られているのかわからない不思議な感覚になるでしょう。
彼らは殆ど動かず、その大きな瞳でじっとこちらを見つめてくるのです。まるで全てを見透かされているかのようで、あっという間に主導権を握られてしまいます。
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彼らよりはるかに大きな私たちは流石に"美味しそう"と思われているわけではないでしょうが、生き物として観察されている感じで、逆動物園気分すら感じられます。
「どうぞ、アイスコーヒーと、紅茶ですよ」
瀟洒なティーセットとコーヒーカップを銀のトレーに載せ、アカアシモリフクロウがやってきた。私たちのテーブルは彼が給仕を担当することになったようだ。
アカアシモリフクロウに礼を言い、まずは飲み物で一息つきながら店内を見回していた私たちは、まだ飲み物を注文していなかったことに気がついた。
私たちはコーヒーと紅茶をそれぞれ頼むことには決めていた。でもまだ注文していなかったはずだ。
「あの、まだ注文…」
「ホーーーゥ、そうでしたかな?」
アカアシモリフクロウは戸惑う私たちを大きな瞳でじっと見つめた。
首の違和感
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彼らは胴体を一ミリも動かさずに真後ろを振り向いて人を混乱させてきます。待てよ、180度超えているなこれは…
更に彼らは、振り向きだけでなく上下や、首をかしげる事でも想定の範囲を超え私たちを圧倒してきます。
このような状態で、どうやって首がつながっていると信じることができるでしょうか。胴の上に球状の頭がポンと載っかって、ぐるぐる回っているようにしかみえないのです。
このカフェはとても人気がある。絶え間なく人がやってきて、猛禽類たちは扉が開くたびにぐるりと頭を回し入り口に向かっていらっしゃいと声をかけた。
「そんなに捻って、首が疲れませんか」
わたしは紅茶のおかわりを頼もうと声をかけたついでに、アカアシモリフクロウに聞いてみた。
「最大でどこまで見回すことができるのですか?まるで胴と頭が別々に分かれているみたいな動きだ」
「ホーーーゥ。面白いことをおっしゃる。あなた方も、もっとぐるぐる回してはいかがですか、その方が首が凝らなくて良いでしょうよ。はい、紅茶のおかわりですよ」
まただ。未だ注文していないのにおかわりがサーブされている。
「人をよくみていれば、色んなことがわかるものですよ」
案外人に慣れる
近くで見ると、ちょっとイグアナっぽさすら感じるゴツゴツした足をもち、そこに鋭い爪が付いています。完全に獲物を捕えるための足です。嘴も湾曲し、咥えた獲物を離さない意気込みを感じさせます。猛禽類という名前も獰猛そうだし、仲良くなれないのではないか…
しかし同じ猛禽類であるワシやタカとは異なる愛らしさがあり、また人に慣れるので頭を撫でたりすることも出来るのです。
このカフェではオプションで、餌をやる体験や、手や肩に乗せたりすることも可能です。
彼らは群れを成さず、森で狩りをして生活しています。ですから、懐くということではなく、ただ環境によりある程度人に慣れるのだそうです。
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眠そう
けっこう眠そうです。ほぼ夜行性でしょうから、当たり前です。
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おわりに
とても凛々しく、かつ可愛らしい彼ら猛禽類と、間近で触れ合う機会は普段はあまりありません。
カフェで一緒にお茶してみるのは猛禽類について知る良い機会となります。また、きっと彼らの不思議な魅力の虜となってしまうことでしょう。
私たちを迎え入れてくれたシロフクロウは、キャッシャーカウンターの奥でウトウトしていた。
なんとなく店内にのんびりとした空気が漂い、それと同時にどこか油断してはならないという緊張感が漂っていた。何故だか『注文の多い料理店』にうっかりと足を踏み入れたお客のような気分だった。
「我々は人に興味があるので、こうやってカフェにお招きして皆さんを観察し、コミュニケーションを取っているのですよ。人間観察が趣味のバーのマスターとかいるでしょう、あんな感じですかね。森にいる仲間達はそうでは無いですが」
「アハハ、なんだか地球侵略のために他の星から派遣されてきた最初の宇宙人みたいだな」
「ホーーーゥ…また面白いことを」
※このお話はファンタジィ日記部分のみフィクションとなっております