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鳩時計に鳩をつけたやつ出てこい
おい待て、アンタか!あんただったのか、時計に鳩をつけた奴は。
ついに見つけたぞ、最高だよ、鳩をつけてくれて本当に感謝してる。ちょっとこの鳩にサインしてくれよ!
鳩時計を買いました。時刻を鳩がおしらせしてくれる、あれです。普通のアナログ時計の上部に鳩が控えております。
鳩がいなくても時間が分かる点がポイントです。蛇には足を、時計には鳩を、それが大人の遊びというものです。
我が家にはこれまで時計が設置されておりませんでした。ですから、この鳩時計を迎え入れるまでは、時刻を知りたい場合にスマートフォンを手元に手繰り寄せる必要があったのです。
スマートフォンは、安易に携帯出来るばかりに、しばしば行方が知れなくなることがあります。
持ち運びやすいというのもメリットばかりではありませんね。どんなに急いでいても、時刻を知りたいタイミングで直ぐに手に取る事が出来るとは限らないのです。
またスマートフォンというのは時間浪費魔法がかけられたデバイスですから、手元に手繰り寄せたら最後、時刻を確認するだけでは終わりません。
まずインスタグラムを開き、関係各所からの近況報告を受けることになります。
それから私のスマートフォンにはファイナルファンタジーやアルケランドなどという、とてつもなく魅力的なコンテンツが備わっておりますので、ついうっかりと冒険に出てしまうことは避けられません。
漫画アプリケイションが入っていた場合に至っては、無限に漫画を読み始めてしまうでしょう。(私は一定時間ごとに無料チケットが補充されるこのとりわけ中毒性の高いマンガアプリケイションを、スマートフォンの中からさっさと追い出してしまいました。驚くほど時間を持っていかれてしまいますから!)
なかには、このデバイスを手に取ったとしても、時間浪費魔法を強靭な精神力で退けられる強者も存在することは確かです。
しかし、アルゴリズムにより最適化された数多くの広告が目に入ることで、時間だけではなく金銭まで持っていかれてしまう者もまた後をたたないという事実に目を背け続けることはできません。
時刻を知る必要に迫られるたびにこんなことではいけない、部屋の何処からでもよく見える場所に時計を設置しよう。そう決意した私たちは、買うならば鳩だろうということで、この鳩時計を我が家にお迎えするに至ったわけです。
鳩前夜
まず鳩時計をお迎えするにあたり、私たちは歓迎の意を示すため鳩サブレーを用意することにしました。
新宿に用事のあった私は、すこし早めに出かけて小田急ハルクの地下で鳩サブレー540円を購入し、周到に準備をすすめました。鳩のマークが描かれた黄色のハンドバックのような紙のパッケージに、4枚のサブレーが収まったものです。
蛇足ですが、鳩サブレーは袋入りのものでは一枚あたり122円ですから、この素敵な黄色の鳩ハンドバッグは無料ではないのです。
鳩時計はAmazonが翌日配送してくれることになりました。置き配指定となっているため、私たちはせっかく届いた大事な鳩が盗まれないよう常に気を配っておく必要があるでしょう。
鳩ウェルカム・パーティー
待ちに待ったその時がついにやってきました。玄関に届いた鳩を素早く室内へ迎え入れ、説明書の通りに設定していきます。
それと同時にやかんを火にかけます。家にある中で一番上等で香り高い、とびっきりのアールグレイを淹れることにしました。甘い洋菓子には、紅茶がよく合うのです。さぁ、鳩サブレーを添えてウェルカム・パーティーの始まりです!
設定が完了し、電池を入れると鳩がさっそく出てきて、動作確認のための声をあげました。
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ポッポー ポッポー...
な、鳴いた!ザワザワ、、、私たちと鳩しか居ないはずの部屋ですが、群衆のどよめきが聞こえてきましたね。世界中が固唾を呑んでこの瞬間を見守っていたのでしょう。
この時計は電池で動いてはいますが、鳴き声は電子音ではなく昔ながらのふいごを使った音になっており、何だかとても暖かくほっこりします。
私たちはリセットボタンを何度も押して鳩を鳴かせまくりたい衝動に駆られましたが、鳩の疲労を考慮し紅茶を飲みながら30分待つことにしました。そうです、放っておいたって30分に一度はその可愛らしい鳴き声を必ず聴かせてくれるのです。
ドイツ南部の黒い森(シュヴァルツヴァルト)を彷徨っていた私は、ついにその怪しげな時計を背負った木こり風の男を見つけた。
この男が鳩時計をつくったのならば、こんな素敵なものを我々の生活にもたらしてくれたことへの謝辞を述べなければなるまい。あわよくばうちの時計の鳩にサインをもらおう。
千載一遇のチャンスを逃すまいと、私は慌ててその男に駆け寄り、後ろからそのがっしりとした肩を掴んで声をかけたのであった。
鳩オリジン
こんな素敵な組み合わせを作ったのは一体誰なのでしょう。鳩が時刻をしらせてくれるなんて。
鳩に感激した私たちがそんな疑問を持つのも当然の流れと言えましょう。そこで思い切って、大変物知りで有名な先生方に尋ねてみることにしました。
グーグル大先生、ウィキペディア大先生が仰ることには、発祥には明らかになっていない部分もあるが200年以上前にドイツのシュヴァルツヴァルト地方で発明されたものらしい、という事でした。とても長い歴史があるのですね。しかも驚いたことに、これは鳩ではなくカッコウだと言うのです!
なるほど、この話を聞いた後では、ポッポーという鳴き声もカッコーと鳴いているように聞こえます。先入観というのは恐ろしいものですね、確かにカッコウと言われれば大変しっくりくるのです。
どうやら日本ではカッコウのことを閑古鳥といって不景気の象徴のように扱っていたため、伝来した際に平和の象徴である鳩に据え替えられたのだとか。ヨーロッパでは、カッコウは縁起の良い鳥とされているようです。
もちろん、我が家のこの鳩時計は一家に笑顔と平和をもたらしてくれる存在である事は言うまでもありませんが!
おい、姐ちゃん。これは鳩なんかじゃあないぜ。カッコウって知らねぇか?ああ、そうかお前の村では鳩なんだな。まぁなんでも良いんだ、これは幸せを運んでくれる時計なんだ。可愛がってくれよ。
男は私が差し出した無印良品の鳩時計から小さな鳩を摘み出し、極細の油性マッキーペンでサインを書き入れた。職人らしい荒っぽさと繊細さの混じった字だった。
私はお礼に鳩サブレーを一枚渡した。カッコウだと偽って…
ポッポー!
※このお話はファンタジィ日記部分のみフィクションとなっております