マレーシアで出会う3つのカレー文化 ―― インド系、マレー系、中華系、それぞれの個性 Three Curry Cultures in Malaysia - The Unique Characteristics of Indian, Malay, and Chinese Curries
(English version is below.)
日本で「インドのカレー」と聞いて、頭に浮かぶ代表格であろうバターチキン。辛くなく、クリーミーで甘味があってお子さんにも食べやすいカレーだと思います。しかし、マレーシアで出会ったバターチキンは、想像をはるかに超える甘さ……!ソースに、とあるものが使われており、驚きの味。マレーシアのカレーはそれぞれのルーツごとに異なる個性を放っているように感じます。バナナリーフの上にひろがるインド系カレー、ココナツミルク香るマレー系、そして中華系の出汁が効いた一皿。クアラルンプールとコタキナバルの街で出会った三様のカレーから、多民族国家ならではの食文化の豊かさが垣間見えました。
バナナリーフを彩る南インドのカレーたち
クアラルンプールで連れて行っていただいたインド系のカレー屋さん、Sri Nirwana Maju。
マレーシアにいるインド系の人たちは主に南インドの方なので、カレーも南インドの影響を感じます。
(余談ですが、南インド系の人々なので、言語もタミル語が主。「ヒンディー語が話せる人はいるの?」とGrab(配車サービス)のドライバーさんに聞くと、パンジャーブの人は分かるよ、とのこと。パンジャーブルーツの方もいるのですねぇ)
目に飛び込んでくるのは、鮮やかな緑のバナナリーフ!もうそれだけでテンションがあがります。お店の人がやってきて、どんどん盛り付けてくれます。ごはん、サンバル、ゴーヤの真っ赤なフライ、ダール、チキンカレー、とろとろ&ホロホロなかぼちゃの甘みがたまらないカレー、さっぱりしたキュウリのライタ、パリパリの香ばしいパパド!
キッチンを覗いてみると、ゴーヤは日本のものより長く、35cmくらいはあるように見えました。ごつごつが少なくて、色も黄緑色のような淡い色。業務用の大型スライサーに突っ込まれて、スイスイとスライスされて出てきたら、衣をつけて油の中でじゅわー!っと踊っていました。
そして、カレーもごはんもおかわり自由!個人的には、だんだん油っこいものがたくさんは食べられなくなっているのですが、10年前だったらおかわりしただろうな……
ホテルの朝ごはんのビュッフェでも、インド系カレーがありました。マレーシアらしいなと思うのはローティチャナイ。インドのパラタに似ていて、小麦粉でできた平べったいパンのようなもの。「もちっ、さくっ」の独特の食感がたまらないのです。私にとってはインドのローティ(あっさりした薄焼きのパン)とクロワッサンのいいとこどり、のようなイメージのパンです。「ローティ」はマレー語でもヒンディ語でも「パン」のこと。言語も共通点がありますね。
ローティチャナイのほかには、冬瓜のサンバルやダール、パイナップルライス、マサラチャイもありました。私はサンバルが大好きなので味見!冬瓜がとろりとやわらかで、今度日本でも入れてみようかなと思いました。マレー系や中華系、中東、洋風の食事も用意されていました。日本食や韓国料理は見当たりませんでした。
(おまけ情報!Grabのドライバーさんによると、Betel Leafというお店のバナナリーフ乗せカレーもおすすめとのこと)
驚きの甘さ!インドとは一味違うマレーシアのバターチキン
マレー系のカレーといえば、まず思い浮かぶのがカレーラクサ。クアラルンプール空港のフードコートで食べた、ペナンカレーラクサがなかなかに美味しくて。ココナツミルクのまろやかさに、飲み過ぎてはいけない……と思いつつ、スープをもりもり飲んでしまうのでした。ラクサはたくさんの種類があるようなので、探究してみたいです。
そして、もう一つ印象的だったのが、バターチキン。これが、トマトベースのマイルドな味わいで知られるインドのバターチキンとは似て非なる存在でした。練乳を使った甘いソースがとても濃厚で、見た目も味もカレーではない様子。私にとっては甘味とオイリーさでまったり感が強すぎて、ひと口でお腹いっぱい、という印象でした。食べ慣れたら、意外とハマるのかもしれません(インドのグラブジャムンも、最初は甘すぎ!と思ったけれど、デリーに住んでいる間に、お弁当についているグラブジャムンをペロッと食べるようになっていました( ̄▽ ̄))
出汁を味わうチキンカレー(咖喱鸡)をTenom(丹南)料理の食堂で
中華系のチキンカレー(咖喱鸡)は、インド系、マレー系と比較するとあっさりとした味わい。こちらは東側の島、コタキナバルの食堂でいただきました。連れて行ってもらったのは、Tenom(丹南)という地域の料理を出すお店。Tenomはコタキナバルからおよそ180kmの、農業やコーヒーの栽培が盛んな地域。
咖喱鸡は、出汁のうまみが効いて、さらりとしていて、むしろスープカレーに近い印象。具材はシンプルに、鶏肉とゴロゴロ大きなじゃがいも。同じお店のほかのメニューはほとんどスープベースの麺や炒めもので、豚肉と卵のあんかけ麺も絶品。咖喱鸡もその中になじむシンプルな一皿でした。
カレーに映る、マレーシアの多民族性
バナナリーフの上でにぎやかなインド系カレーの数々、練乳の甘さで驚かされたマレーのバターチキンや、ココナツミルクに魅了されるカレーラクサ。そして中華系の出汁がほっこりなカレー。
同じ「カレー」という料理でも、ルーツとなる文化によってさまざま個性をもっていることが、とても豊かだなぁと感じました。インドも多様な宗教、言語の人たちがいることに尊敬の気持ちなのですが、マレーシアの多民族性にも近しい敬意をおぼえます。もちろん、いろいろと課題を抱えながらだとは思うのですが、カレーひとつをとっても色んなバックグラウンドの人がいる、ということが感じられるのは魅力的だなと思います。まだ見ぬカレーを求め、ペナンやイポーなど、ほかの街へも足を運んでみたいと思います^^ (カレー以外にも注目ポイントはたくさんありますが、やっぱりカレーを食べに行ってしまうのだろうな(;^ω^)
◆インドネシアの旅グルメも書いています^^
◆初めてヒンディ語を学ぶ方のための講座を開いています。
ヒンディ語が少しでも分かると、インドにつながりのある料理の理解が深まったり、インド・ネパール料理屋さんとお話ができて楽しいですよ♪
◆料理は五感を使った瞑想。同じく瞑想がやってくることを感じられる、ヨガのレッスンを行っています。初心者さん、肩の硬い方にもおすすめな、質問タイム多めのレッスンです^^
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English ver
Malaysia's diverse ethnic makeup is beautifully reflected in its curry culture, with each community contributing its own distinct flavors and cooking styles.
From the vibrant array of South Indian curries served on banana leaves to the surprisingly sweet Malay butter chicken and the light, broth-like Chinese curry chicken, Malaysian curries offer a fascinating glimpse into the country's multicultural heritage.
South Indian Curries on Banana Leaves
At Sri Nirwana Maju, a popular Indian restaurant in Kuala Lumpur, the dining experience begins with a vivid green banana leaf as your plate. The server then proceeds to pile on an assortment of curries and side dishes like:
Rice
Sambar (lentil-based vegetable stew)
Red bitter gourd fry
Dal (lentil curry)
Chicken curry
A creamy pumpkin curry with a delightful sweet flavor
Refreshing cucumber raita
Crispy papadum
The bitter gourd used in Malaysian Indian cuisine is longer (about 35 cm) and lighter in color compared to its Japanese counterpart.
In the kitchen, these gourds are efficiently sliced using a large commercial slicer before being battered and fried.
Even hotel breakfast buffets in Malaysia feature Indian-inspired dishes. Roti canai, a flaky flatbread similar to Indian paratha, is a Malaysian staple.
Other common breakfast items include:
Winter melon sambar
Dal
Pineapple rice
Masala chai
While Indian butter chicken is known for its mild, creamy tomato-based sauce, the Malaysian version takes an unexpected turn. The sauce is incredibly sweet, likely due to the addition of condensed milk. This rich and oily dish can be quite overwhelming for those unaccustomed to its intense flavors.
Curry laksa, particularly the Penang variety, is a beloved Malay curry dish. The coconut milk-based soup is irresistibly creamy, making it difficult to resist drinking it all!
Chinese Curry Chicken (咖喱鸡) from Tenom
In Kota Kinabalu, a Chinese-style curry chicken (咖喱鸡) from the Tenom region offers a lighter alternative to its Indian and Malay counterparts. This dish is more akin to a soup curry, with a clear broth enhanced by the umami of stock. The simple ingredients include chicken and large chunks of potato.
Reflecting Malaysia's Multicultural Identity
The diversity of Malaysian curries - from the colorful array of Indian curries on banana leaves to the unexpectedly sweet Malay butter chicken and the light, brothy Chinese curry chicken - beautifully mirrors the country's multicultural society. Each curry style brings its own unique characteristics:
Indian curries: Vibrant and varied, served on banana leaves
Malay curries: Often featuring coconut milk, with some surprising sweet variations
Chinese curries: Lighter, broth-based dishes that complement other Chinese dishes
This culinary diversity not only showcases the rich cultural tapestry of Malaysia but also invites further exploration of regional variations in cities like Penang and Ipoh. The multitude of curry styles in Malaysia is a delicious reminder of the country's diverse ethnic makeup and the harmonious coexistence of its various communities.