【連載小説】ファンタジー恋愛小説:影の騎士真珠の姫 第八話 淡く花開く恋
前話
「エルフィはヴァルトが好きなのね。エルマも」
そう言ってフィーネペルルは二匹の頭を撫でる。ヴァルターはにこやかに見ている。その視線にフィーネペルルはやや恥ずかしそうにする。
「どうしてそんなにニコニコしてるの?」
「姫、いえ、フィーネが優しい顔をして心を解放しているからです。閉じこもって鏡を見ていては何も変わりません。一歩踏み出す勇気を出せば、あとはなんとかなるものです」
「そう言うものなの?」
今まで、そんな事を考えたこともないフィーネペルルは驚く。
「まだまだ、いろいろな影の御し方はありますよ。それは小出しにしていきます。一気に言って手がなくなればこうしてお会いできることもなくなりますし」
「あら。私に会いたいと思って頂けるの?」
「もちろん。私の心は姫に盗まれてしまいました」
おどけて言うヴァルトにフィーネペルルは不思議そうに見る。
「姫?」
「私も、だわ。ヴァルトに会えないのはいや。いつの間にそう思うようになったのかしら」
フィーネペルルが思考の泉に沈もうとするとすると愛犬エルフィが袖をくわえて引っ張る。
「エルフィ?」
「そうやって、心の中にすぐに入っていくのがいけない、とエルフィが言ってるんですよ」
「それも影の御し方?」
はい、とヴァルターが肯く。
「私、学ばないといけない事がたくさんあるのね」
「それもそうですが、まずは森の泉に座って落ち着きましょう。泉の水面すらフィーネには鏡になるのでしょう?」
フィーネペルルは驚いて目を丸くする。
「どうしてわかったの?! まるで千里眼だわ!」
「経験、ですよ。私も洗面器の水面すら鏡でした。父の死後、そこでずっと自分の姿を見つめていました。朝一、見る顔が嫌な自分の顔だと、気も滅入るものです……」
今度はヴァルターが記憶の彼方へ飛んで行きかけた。フィーネペルルが袖をひっぱる。
「姫」
「あなたも影に引っ張られそうだったわ。師匠がそれじゃ、頼りないわね」
明るい声のフィーネペルルにヴァルターはほっとする。つられるのではないか、と危惧したが、今は深く考えることもないようだった。
フィーネペルルに何が起こったのか。ヴァルターにはまだわからなかった。
ただ、お互いがお互いを支えていた。ちょうど、歯車がうまくかみ合っている。それをまだ二人は気づいていなかった。なくてはならない相手であること、も。周りのものが見れば一目で解るものの。
走り出している恋はまだ自覚できる所に来ていなかった。淡い恋が花開いていた。
あとがき
今日はどうしましょうか。あと一作は更新できるんですが。「星彩の運命と情熱」の最新話があるです。大分前に書いた物ですが。恋愛のれもでないですが。ただ、グレートマザーの要素が出てたと記憶します。
それにしても野球、あと十五分で中継時間が終わるんですが、サブチャンネルでやってくれるんでしょうか。開始時はそれでしてもらってたんですが。
さて、さて。あと1話更新して受験勉強に戻りますね。なんとか受かりますように。
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