【連作創作群】澄川市物語 命の交錯 第四節 若緑
「緑が綺麗ねぇ。花霞ちゃん」
「はっぱ」
「そうね。はっぱの絵本の本当のはっぱよ」
花霞の相手をしながらも花は同じ乳幼児の母子が集まっている一角が気になっていた。いわゆるママ友だ。だが、だれも、大学病院でみたことのない親子だった。一組、この間、ギャン泣きしていた子の母親がいた。その人をきっかけに入れそうだが、花は自分の年齢を気にしていた。やがては保育園などで会うのだろうが。なんとなく二の足を踏んでいた。
*
咲は公園の片隅で一歳ぐらいの女の子と母親が和やかに過ごしているのを目にした。春に見た親子だ。だが、産科では見ていない。大方の澄川市の住人は澄川総合病院の産婦人科に行く。そこで乳幼児の検査もする。この市の大方の母と子はそこで知り合うのだが、あの親子は見たことがない。そのままにしておくのがかわいそうな気がして周りのママ友に聞く。
「あの、女の子ととお母さん、知ってる?」
ううん、と一斉に首が振られる。
「澄川には居なかったわよ。引っ越ししてきたとも聞いてないし」
親子の間で「澄川」というと「澄川総合病院」を指す。それぐらい長い間、母子の間では伝統となっていた。咲はその病院の看護師だ。確かに、見たことがない親子だった。ただ、母親がさみしげだった。かといって引っ張ってくるわけにはいかない。何か事情があるかもしれないし、一人が好きな母親もいる。いずれ、学校に通うようになれば一緒になる。今日はそっとしておこう、咲はそう思っていつもの井戸端会議に入った。
*
「まーま?」
気がつけば花霞が心配そうな顔をして花の顔をのぞき込んでいた。
「なぁに。花霞ちゃん」
「まーま。いないいないの?」
「え?」
ドキッとした。あの賑やかな輪の中に入れないことで弱気になっていることを花霞はわかっていた。
「ママは大丈夫よ。さぁ。パパがなにか拾ってこないか確かめに帰りましょう」
「やー。はっぱ。もっとはっぱ」
イヤイヤ期なのか、異様に自然とふれあおうとする花霞の肩に小さな何かが居るのが見えた気がした。マーガレットの花?
「花さん!」
信じがたい目をして花霞の肩を見ていると突然、向日葵の声がかかった。
「店でお茶でもしませんか? 花霞ちゃんもそっちの方が楽しいですよ」
「おはないっぱーい!」
「そうねー。花霞ちゃんが好きなお花がいっぱいあるの。とーっても楽しいわよ」
向日葵が花霞の頭を撫でながら言う。
「ここでは話せないこともありますし」
「それって……」
今目撃したこと……?
「さ、河川敷を歩いてお店に行きましょ。りりーにまかせているからさっさと帰らないと。行きましょ。花さん」
「ええ」
花はまたほっとした微笑みを浮かべて向日葵と一緒に公園を出て行った。
なんか、最近恋愛から脱しようとしてます。もう人生を考える年でもあるので、恋に恋する時期が終わったと言うことでしょう。なので、こんな真面目なものを出すようになってきました。昔のもので途中のものは完成させたいんですが、今も、どっからだっけ? と思って、もう簡単に見分けられるこれにしよ、と出しました。とか、いいつつ、またお茶が飲みたくなってきました。高血糖???
お水飲みます。飲み過ぎ。恐ろしい。それではここまで読んでくださってありがとうございました。