【連載小説】ファンタジー恋愛小説:風響の守護者と見習い賢者の妹 第二十九話 不思議な三世代ののデジャヴ
前話
「フロリアン! 装備はできたのかー?!」
勝手知ったる我が家とでも言わんばかりにレオポルトはずかずかと入り込む。フロリアンが工房から相好をやや崩してやってくる。半分は嬉しいといういった風の自分が恥ずかしいと言った感じだ。男の中の男と言われ、国随一の武器屋の親父が息子にメロメロではイメージダウンもいいところだ。
「フロリアン? どうしたの?」
セイレンは父親というものを知らないため、そういう心の機微が理解できない。
「みんなに会えてうれしいんだ。そんなもんだんだ」
レオポルトがセイレンの頭をぐりぐり撫でる。
「坊主じゃないです」
「ほぉ。坊主という言葉は知っているのか」
いい子いい子とさらに撫でる。もう、我が子と一緒だ。
「レオ。その年でその年の子がいればお化けだぞ」
ニコが突っ込む。
「そうかー」
レオポルトは意に介さない。ほう、とニコが珍しげに言う。
「なんだか最近、フロリアンの気持ちがよく解るようになってな」
「子を持つ前にそんな気持ち知らなくても」
「おにいちゃんー、だもーん」
ニコを見てきゃぴっとレオポルトが言う。
「お前、そう言う男だったか?」
「さぁ?」
セイレンはこの二人の大人の会話がよくわからない。どうも、自分をネタに話されているようだが。
「まぁ。セイレンは知らなくてもいい。レオはそろそろそういう年頃だからなぁ」
フロリアンもセイレンの頭を撫でる。
「さぁ。お待ちかねの装備だ」
工房の中にまで入ったところで、フロリアンが武具と防具を持ってくる。
「このローブが『エアリアルウィンドローブ』だ。風の力を宿して通気はよく、風の力の借りて素早く動ける、いろいろな場面で活躍する防具だ。そして、これが、お前さんの弓、『ゼボウ』だ。風と水の力を併せ持つセイレンしか扱えないものだ。大事にしてくれよ」
「これが……、僕の武具と防具……」
そっと手を伸ばす。『ゼボウ』は水の力が風に揺らされてゆらゆらとまるで形がないように見える。だが、しっかりとセイレンの手になじんだ。不思議だ、とセイレンは思う。どうしてそんなに本人になじむものができるだろう、と。
「そこだ国随一の武器屋ってことだ」
「そこが俺の武器だって事だ」
異口同音に同じ事を言うレオポルトとフロリアンが言う。そのそっくりなところにも驚く。自分に父がいればこんな風なのだろうか、と。
「お前にとってもフロリアンは俺と同じで父親だ。いや、孫にあたるのか?」
「だから、その年で子を持つと不良王だぞ。不純異性交遊禁止」
「なんだそれ」
「どこかの誰かが言っていた言葉さ。気にするな」
レオポルトが言うとニコがすぐに返す。その息の合ったところにもセイレンは憧れる。
「いつか出会うさ。同じように話せる友が」
「ニコ……。出会うでしょうか。僕にも」
「ああ」
三人の男が一斉に肯く。そのシンクロ具合にまた首をかしげるセイレンだ。
「お前はそのまま育ってくれたら良い」
レオポルトの言葉にまるで本当に親子のようなデジャヴに陥るセイレンだ。何か、心に抱えたものが見え隠れする。レオポルトにもなに人に言えない悩みがあるのかもしれない。
セイレンはローブと弓に目線をやりながらふっと思っていた。
あとがき
お待たせしましたー。次話です。とにかく書けるものから書こうと書き慣れているメンバーの方から手をつけました。まだ漢検しないといけないけれど、この殺人的な暑さと仕事の疲れで半日寝てました。起こされる前には不思議な国にいました。薬がどうのこうのと。風邪薬がなにかあったかも。爆睡中に起こされ記憶が曖昧です。お風呂に入って覚醒。そして阪神戦をつけていますが横浜軍の実況なので面白くない。けなされてるので。かと言って横浜軍四番のあのホームランはすごい。見惚れた。と。段々染まっていく自分が怖い。
で。やっとまた第2の出立に近づきました。あー長い。もう明日書けば30話です。まだ魔法の修行があって前段階。殺人的長さに困ってます。まぁ、「訳あり」よりはマシだけど。
ということでさっさと投下します。
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