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【連載小説】ファンタジー恋愛小説:氷晶の森の舞姫と灼熱の大地の王子 第一部 最終話 再び舞い降りた平和

前話

「死ね! アドルフ!」
 レオポルトは胸元に入って頭上に両手剣を振り下ろした。鈍い音がしてアドルフが倒れる。
「やったか」
 倒れたアドルフを見てレオポルトは後ろを振り返った。そのレオポルトをアドルフがはがいじめにした。
「なに?!」
 だが、同時にアドルフはぎゃぁ! と断末魔の声を絞り出して倒れた。片目に何かが投げつけていた。それが致命傷だった。後ろを見るとユレーネが緊張した顔で見ていた。
「ユレーネ?」
「フロストトパーズの指輪を投げたの。リリアーナにいざとなればフロストトパーズを投げなさい、って言われていたの。まさか、こんな事になるなんて」
 いくら敵でも人を殺せばその恐ろしさにさいなまれる。レオポルトはとんで行ってユレーネを抱きしめる。
「大丈夫だ。とどめはあれだけど、俺が山程痛めつけた結果だ。自分を責めることはない」
 ええ、と声を震わせながらユレーネは言う。
「そうね。私も女王様なんですものね」
「で。俺の奥さん。はやく花嫁の条件クリアしてくれ。成婚の式が待ち遠しい」
「ちょ……。こんな所で何言ってるのよ!」
 ごん、とレオポルトの頭に鈍い音がなる。
「乙女には男の事情は早すぎるのですよ。ねぇ。姫」
「カール!」
「とどめにこれをしにきたんですよ」
 カールは何か書いた紙をルドルフの体に置く。じゅっと音がして紙は燃えた。
「地獄行きの切符です。もう、これで死者の国から蘇ることもないでしょう」
 にっこり言うカールにレオポルトが呆然として言う。
「お前だけは敵にしたくない」
「レナさえ下されば一生臣下でおりますよ」
「レナの返事待ちね」
「姫!」
 カールの情けない声が上がる。そこにニコも三公爵家の跡取りやらわらわらやって来た。
「レオ。みんなお前の事を待っている。バルコニーから姿を見せてやれ。女王も」
「へ?」
 ユレーネは何故、という具合だったがレオポルトはユレーネを抱き上げるとバルコニーに飛んでいく。入り口で降ろすとレオポルトはユレーネとバルコニーに立つ。大勢の兵士や炎の国の民があつまっていた。フローズン・ブレイドを片手に挙げると声があがる。隣に来たカールがレオポルトが即位したと宣言する。わっと声があがる。
「って。おい。即位式してねーぞ」
「予告ってやつです」
「ほんと食えないヤツだな」
 やりとりにユレーネがクスクス笑う。
「よかった。レオは一つも変わってないわ」
「それはそれで寂しいんだが」
「いいの」
 ユレーネがレオポルトの頬にキスすると、また声が上がる。
 
 長い、戦いが終わったのだった。
 
 国王は一度、牢から出されたが、レオポルトが会いに行く前に舌を噛んで自死した。マルタは娘に会わせろと言うので会わせたが、リリアーナは「アデーレは辞めたの。お母様はいらない。バイバイ」と言ったきり泣きながら呼ぶ名前にも反応せず、マルタは幽閉の身となった。
 
 レオポルトの即位式は周辺諸国を招かねばいけないため、ユレーネとの婚礼時に同時に行い、仮の即位式を早々にしてしまった。したはいいが、相変わらずイーカムに乗って妹と恋人のいる氷の国に入り浸って帰ってこない。仕事だけは持ち込んでしてるのだが。そんなに好きなら結婚すれば良いのに、と周りは見るがこれまたユレーネの条件がととなわないから、と伸ばし伸ばしにしていた。
 
 今日も湖のの上で舞っている恋人を見ているレオポルトである。
「仕事たまってるんじゃないの?」
「いいのいいの。ここでしてるから」
「体冷えるわよ」
「母さんのココアがあるからいい」
「もう~」
 ユレーネが仕事しながら座っているレオポルトを押し倒す。そこへまた妹が乗り込む。
「ぐえ」

 今日もにわか親子の語らいは平和である。レオポルトはようやく来た春に心躍らせていた。
 
 氷晶の森の舞姫と灼熱の大地の王子第一部 完


あとがき

やっと終わりましたが、明日からは第二部「風響の守護者と見習い賢者の妹」の掲載となります。マガジンは別となりますので、マガジンからご覧の方はお気をつけ下さい。

第二部の冒頭の長いこと。書いて書いてやっと目的地にたどり着いて、そこで止まってます。今日からまたしこしここちらを書かないと。次の目的地にたどり着いてないので。

今まで「氷晶の森の舞姫と灼熱の大地の王子」をお読みくださってありがとうございました。スキを多く頂いたこと、感謝します。

これからもいろいろな話を掲載しますので、またよろしくお願いします。
ここまで読んで下さってありがとうございました。

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