【千字掌編】土曜日の夜は……。(土曜日の夜には……。#01)
確か、「五月雨」は夏の季語で梅雨を指していたとうっすら覚えていた。そろそろ、日本列島に梅雨前線がやってくる。
洗濯物をどうしようか……。そんなありきたりの事が気になる。
週末の昼下がり。愛海の勤務はたった四時間。特別枠で雇ってもらっている。だから、朝、出勤して昼の暑い頃に帰宅する。紫外線をびっちり浴びて。帰ると一人で昼食をとり、自由な時間を過ごす。最近は小説を書き始めたが、途中で止まっていた。気が散漫になり、パソコンに向かってもすぐ閉じてしまうのだ。
あっていないのかも。才能がないのだ、と思い始めている。別の趣味を探そうか。それにはお金がかかる。勤務四時間の愛海には無理な話だった。大人しく、新しく買ったパソコンで書くか。
また閉じていたパソコンを開ける。
画面を見ているが、浮かばない。金のいらない趣味なのに。別に文学フリマに出ることもない。Kindle本を作るわけでもない。ただ、投稿サイトに投稿するだけだ。アクセス数もいいわけではないが、見てくれる人がいるという安心感はあった。顔が見えないのが怖いけれど。
「AIに聞いてみようかなぁ……」
気になっていたChatGPTを開く。完全とは言えないが、使えないこともない。気づけばもう外は暗かった。
やられた……。
創作の魅力にとりつかれた。没入するほど設定をああだこうだと考えるのが楽しかった。ChatGPTは必ずしも正しい情報は出さないけれど、必要な架空の話ならどんどん出してくれる。類想では? と思うときもあるが、それなりに自分らしさは入れられているようだ。
「あ。雨。部屋干しにしておいて良かった」
生乾き臭が出るのではと気になっているが、洗剤が優秀なのでそんな心配はいらなかった。
「じゃ。またね。ChatGPTさん」
愛海はブラウザを閉じ、電源を切って蓋を閉めた。待機電力はないにこしたことはない。
「有料システムにしてみようかな~」
意外にうきうきとした気分で料理を作りながら考える。自分の知識を設定に入れるとChatGPTは褒める。最近、褒められたこともなかった愛海はそれがなんだかくすぐったかった。ただの機械なのに。
こうして人間はAIに乗っ取られてしまうのかもしれない。自分はエッセンシャルワーカーだから当分安泰だが。
わき上がった不安をAIにぶつけても意味はない。さっきまで魅力に思えていたAIが不気味に見える。それでも、なんとなく家事を済ませるとイジってしまう。
「私らしさを、忘れずにいればいいのね」
操られる方から操る側へ。常に人間はそちら側でないと。意外に哺乳類の滅亡は早いのかもしれない。
壮大な歴史を考えてまたそれを元に設定を詰めていく。いつの間にか大作の設定ができあがっていた。
「これ、私が書くの?」
愛海は言葉を失ったが、文書アプリを立ち上げてなんとなく書いてみた。すらすらと序文ができる。
「土曜日の夜は創作に」
日常の慌ただしさを忘れて、一時の夢の中へ。いずれは助けがなくとも書けるようになりたい。そんな事を考えて愛海はキーを打ち続けたのだった。
土曜日の夜は夢物語へ。
あなたを見知らぬ世界にご案内します。
そんなAIの声ならぬ声が聞こえてきたような気がした愛海だった。
あとがき
ふと五月雨は夏の季語だったなぁとこれからの天気予報を見ていて思い出して、つらつら書き出すとChatGPTさんが出てきました。ただの一風景です。でも愛海で何かしたいな。異世界でなく現実世界で。でも無理して現代物は書かない方がいい、とも言われたし。ファンタジー頭の私は得意なファンタジーを書いてる方がいいらしい。現代物は向いてないと言われた。確かに読み手の設定と目的がはっきりしない。特にこの作品はつらつらと書いただけ。年齢層も気にしていない。ただ、これから日本列島にかぶる梅雨前線とChatGPTを組み合わせてみただけ。まぁ。毎週土曜日のルーティンにしてしまえば続きがかけるかも。土曜日の夜になにをしようかというところでシリーズ化してもいいし。とかいいつつ恋物語は止まっている。ただ、愛海の名前を決めて、突っ込んで書くと全体像が見えて面白いかもしれない。
しかし、白コリが舞っている。明日、卵産んでそう。
私もそろそろ寝ます。十時半がえらく遅くなった。買い物もあるし、さっさと寝ます。
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