【記念掲載:連載小説】ファンタジー恋愛小説:絆の騎士知恵の姫 第二話 ちょっとそこまではそこまでではなかった、件
前話
「で、どこに行くのか解っているのか?」
「ここよ。エレシアの聖堂。古代王国の元首都にあるって。この国の中心にあるって聞いているけれど……」
地図を見てはぁー、とため息をつくヴァルターである。そこへカタリーナとライアン従姉妹夫婦が通りかかった。
「どうしたの? あら、エレシアの聖堂?」
「カタリーナ。知ってるの?」
「ええ。昔、歴史の勉強で出てきたわよ。フィーネは覚えていないの?」
「ええ」
がく、と周りは首を落とす。特にヴォルターは。
「カタリーナ様、ライアンも知ってるならちょうど良い。全員でエレシアの聖堂へ行くぞ。そのためには旅の準備だな」
「旅?」
フィーネペルルはきょとんとしている。
「フィーネ。このエレシアの聖堂は現在の首都にはない。古代王国の首都だ。山越えや獣道を歩くこととなる。姉上、地図を確かめたのですか?」
「見たわ。この地図よ」
ゾフィーが古びた地図を渡す。
「これは、古王国の地図です。どこから見つけたんですか。現在の地図はこれ、です。いつも最新の物を持ち歩く癖を持って下さい。世間の情勢もまだ揺れていますからね。はい。全員参加ですね。カタリーナ様にも知られたからには放っていくのは無礼ですから。むろん、そのおつもりでしょう?」
「ええ」
澄ました顔でカタリーナは言う。となりいる夫のライアンも肯いている。
「はい。それじゃ、陛下に許可を得てきますから、しばしお待ちください。フィーネも一緒に行くよ」
「え。ちょっと。引っ張らないで」
ヴァルターがずんずんあるいてフィーネペルルを連れていく。
「あれは嫉妬ね。この美形揃いの中にフィーネを置いておきたくないのよ。でも、事情上は連れて行かないと行けない。ヴァルトも損な性分ね」
カタリーナがいつものようにい言う。
「カタリーナ様。私が地図を見間違えなければこのような事には。弟をお許しください」
「大丈夫よ。女二人で行って迷うよりは随分マシよ。ヴァルトに見つかって幸いと思えばいいわ。それから、ゾフィーも身分は王族よ。私に様はいらないわ」
「ですが、働いていた性分で」
「大変な職業病ね。追々変えていけば良いのよ。フィーネは大冒険する王女だから本人がいくら大人しくしていたっていつの間にか大冒険になるのよ。王位継承すれば、多少は大人しくなると思うけれど。執務も増えるから」
「だといいのですが。たきつけてしまったかと心配で……」
おろおろし出すゾフィーにエドリックが優しい言葉をかける。
「ありがとうございます。でもやっぱり私が少しそそっかしいからこんなことに」
「大丈夫。フィーネも相当な朴念仁だったから。そそっかしいと言うよりは大天然ボケしている王女様だから」
慰められたのかどうかわからない言葉にゾフィーは肯くしかない。そんなゾフィーをずっと見つめているエドリックである。
その視線にカタリーナの頭には悪い予感がもたげていた。ゾフィーはローランドという騎士に恋しているのを知っている。だが、そのローランドは自分、カタリーナ自身に密かな恋をしている。そこへもしかするとゾフィーにエドリックが一目惚れしたかもしれない。
片恋が三人。しかも相手が全部違う。これはまた頭の痛いことになりそうだ、カタリーナは戻ってこない従姉妹姫と騎士をじりじり待っていた。
あとがき
Wordpressより先に出してしまった第二話。今後はWordpressの方が先ですし、ストック作ってからの掲載です。一万PV達成でフライングスタートですので。あとでWordpressも行かねば。知恵の姫とはゾフィーさんの事ですが、最初はフィーネが主軸です。その後、大わらわの話になるはずが簡単に終わるかも。恋のから騒ぎ編と銘打ってる物のプロットはない。今の話しかイメージがない。フィーネさんがどうなっていくかも問題で。この姉妹が周りを振り回す、はずなんですが。振り回しているのはフィーネさんだけ。さぁ。どうなる。フィーネ。それでは今日の更新作業は一旦休止。ここまで読んで下さってありがとうございました。