【連載小説】ファンタジー恋愛小説:緑の魔法と恋の奇跡 第五話 小さな森の妖精ティアと銀色の涙の秘宝
前話
「さて、出かける前にこの子に名前をつけないとね」
ライヴァンの肩をうろちょろしているリスの姿を取った森の守護者を見てエレナ・シルヴィアは言う。
「あら。この子、『銀色の涙』をつけてるわ」
「銀色の涙?」
「このヴェルディリスに伝わってきている秘宝の一つよ。この子が持っていたのね。『銀色の涙』を持っているからティアという名前が良いかしら」
「なかなか言い名前だ。俺もその名前はピッタリだと思うよ。ティアは銀色の涙を表しているからね」
言いながら、ライヴァンは自分に子供が生まれればその名前がピッタリだと思う。その相手に何故か目の前の相手のエレナ・シルヴィアがぽん、と出てきた。思わず、動揺する。ティアはそんな主人を面白そうに見ている。
「こら。ティア。主人をからかうんじゃない」
「あら。ライ。この子の言葉がわかるの?」
「いや、感覚と表情で。言葉はわからないが、なぜか魔法がかかったように流れてくるんだ。どういうわけなんだろうか……」
考え込むライヴァンをティアは尻尾で鼻をくすぐる。
「こら。くすぐったらくしゃみが……。……!」
大きなライヴァンのくしゃみがこだまする。
「こんな聖域で盛大にくしゃみをする人初めて見たわ」
エレナ・シルヴィアがクスクス笑う。そのエレナ・シルヴィアをティアと飼い主がぼーっと見る。
「何見てるの? 何も持ってないわよ。ああ。これね。ティアは」
エレナ・シルヴィアが掌を開くとそこには一個のクルミがあった。ティアはそれをつかむとぼりぼりかじる。頬袋がぱんぱんに膨らむほどため込む。
「ティア。そんなにため込んでももう埋め込む土地はないわよ。私達は旅をするんだから同じ所に帰ってこないわ」
と言われてもこの頬袋のクルミは渡さないとばかりにライヴァンの首の後ろに逃げる。
「ためるだけためて埋めて帰ってこれないのは悲惨だな。ティア。頬袋に入れすぎないようにこの袋にいれなさい。これはティア専用にするから。ただ。シルヴィからもらうクルミは一回に一つだからね。わかったかい」
ティアは返事の代わりにため込んだクルミの中身をライヴァンの用意した革袋に入れる。
「いい子だ。ティアはいい子だ。我々の旅を助けてくれる優しいティアだからね。さぁ。ティア、次に向かう所はどこだい?」
ライヴァンが地面に地図を広げる。ティアはとことことライヴァンの肩から降りると険しい峰が書いてある所を尻尾で指し示す。
「クリスタリウム・ペイク? こんな山奥に生命の泉が?」
ライヴァンが呟く。
「いいえ、ここには人の望みを叶える水晶があると言われているの。ここで生命の泉の手がかりが残っているのかもしれないわ。クリスタリウム・ペイクは大昔にできあがった氷河が残っていると聞いているわ。そういえば、すっかり忘れていたわね。このヴェルディリスには大賢者メリウスがいるの。この人の話を聞かないで旅立つ馬鹿はいないわ。早速行きましょう」
そう言って歩き出そうとしたエレナ・シルヴィアにティアが飛び乗って頬を尻尾でなでる。
「ティア? ああ。そうね。この秘宝を守れるのはメリウスだけね。持っていきましょう。試練が解かれれば誰にでも入れるもの」
エレナ・シルヴィアはどこからか鞄を出すと「森の心臓」と聖典をいれてまたどこかへ消した。ティアは普通だが、ライヴァンは口をぽかんとあけて見ている。
「なんていう顔をしてるの。ただの魔法の鞄よ。あなたが剣を振るうのが得意な代わりに私は魔法が得意なの。これもメリウスからもらった鞄ね。もう随分と会ってないわ。元気かどうか見に行きましょうよ」
エレナ・シルヴィアはライヴァンの手を取って引っ張る。ティアは再びライヴァンの肩に戻るとそのまま二人の歩くままにした。
森の賢者メリウス。どんな爺さんか、とライヴァンは勝手に思いつつエレナ・シルヴィアに引っ張られるのを楽しんでいた。
あとがき
これも自己探求の問題が入るんでしょうか。種族間の恋愛として。自分がどこから来てどこへ行くかとラヴァンは考えそうです。しかも王位継承者なのでうかつに姫君と恋愛なんて御法度。あー。またハードルを上げてしまった。さくさくと書いている話ではありますが、ストックが少ない方なので飛び飛びに更新しますね。
私は夏の土用に入る前にとマリーゴールドとロベリアを買ってきました。お昼食べれば空いた植木鉢に。その後、執筆か漢検か。疲れてはいるものの、かなりの時間店にいたので買い物してた感があってなんとか精神はましです。その間にフォロワーさんの更新がきていて、こういう最後かーと思わずうなってしまいました。そして次の部に移ってるのがすごいなーと。同時に出せるんですから。一旦終わらないと困る私はマルチタスクしつつも実はそれぞれ一個ずつ話をつめているだけなので、頭の中は一個しか考えてません。前はマルチタスクが多かったのですがね。ただ、忘れ去られた設定も在り、あ、この話ここまでだったんだーとかざらです。二十話越えているのもあるのですが。星彩と風響は共に二十話越えてもまだ序盤です。これはもうちょっと展開が早い気がします。ライヴァン君がお利口さんで。一人悩んでます。これはユングの何を規範にしてるんだろ、と書きながら思ってます。恋愛だからアニマアニムスの問題は否応なしに着いてくるけれど、他の面はあるのかしら? やっぱり自己探求かしら? と思う私。
と。今、水槽を見たらパンダコリが一匹しきりに腹こすってる! 水替えしなきゃ! とパニックです。病気じゃないらしいんですが、水を三日に一度替えても変わらないので一週間に一度してますが、どの曜日かわからなくなってしまって。きっとお水が汚いんだわ。でも今、みんなご飯食べてるし。お昼に強行突破。
花より先だわ。
眠いんだけど、やらねば。
と、一旦休憩挟むので、これにて。
ここまで読んで下さってありがとうございました。