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【連載小説】ファンタジー恋愛小説:風響の守護者と見習い賢者の妹 第三十八話 放り出されたのは庵の裏庭

前話

ついてきたはいいが、何をするのかまだ聞いていない。セイレンは不安げだ。リリアーナはルネスクリームに夢中で、なんだかわからない言葉を発している。
「あの子は鳥の言葉を話してるのさ。アイシャードの元で覚えたのだろうね。なかなか見所のある子だ。さぁ。お前さんはこの服に着替えておいで」
 ばさっと布で巻かれたものを渡される。ちらり、とリリアーナを見る。
「大丈夫。覗かせないからね」
 セイレンは思わずあの時のショックを思い出して悲鳴を上げそうになったが、飲み込む。
「違う異性に見られただけさ。いずれお前さんも同じ事をするのだから、おあいこさ」
 その言葉にぼん、と少年の煩悩が脳裏に浮かぶ。慌てて頭を振ると庵の奥に消えていった。
「おや。からかいすぎたかね。リリアーナ。えらく繊細な男を選んだね」
 アルシャンドールが言うとひょっこっとリリアーナが顔を出す。
「そこがいいのよ。お婆ちゃん。線が細くて守って上げたいと思うのだもの。ゼフィリスの姿よりもセイレン普段の姿が好きなの。ゼフィリスはカラフルで私向きじゃ無いわ」
 最後の一言はぽっ、とでた本音だった。アルシャンドールは顔を曇らせる。
「修行の他に考える事があるね。リリアーナには」
「え?」
「いいや。ルネスクリームとしばらく遊んでおいで」
「はぁい」
 再び、リリアーナは明るい声で言うと飛び出して行く。
「あ。そっちは……」
 言わずもがなセイレンの悲鳴が上がったのだった。
 
 賢者の弟子の姿に着替えたセイレンはぷちぷちと怒っていた。
「いつまでも怒らないでよ。たまたま向かった先にセイレンがいたのよ。それに今更、裸見られても減るものじゃないでしょ?」
「じゃ、リリアーナのは見て良いの?」
 むっ、としてセイレンは言い返す。
「女性は例外よ。女の子の裸は運命の相手しか見ちゃダメなの!」
「運命って僕じゃないか!」
「これこれ。ケンカしてる暇があれば修行だよ。ほら。そこの扉を開けて行っておいで」
「扉の向こうに何があるの?」
 まるでアイシャードといつも行っている妖精の世界のように感じるリリアーナだ。もう、気は変わってわくわくしている。楽しいことばかりだったようだ。アイシャードの所での勉強は。
「ただの庭だよ。ほれ!」
 大きな風が吹き荒れたかと思うと、二人は庵の裏庭に放り出されたのだった。
「へ? ここ。裏庭?」
 そこには古木が立ちそびえ、雨上がりの様にキラキラ滴を輝かせている草花があった。
「ここ?」
 セイレンも不思議そうだ。
 あ、とリリアーナが声を出す。セイレンがつられて見るとさっきまであったアルシャンドールの庵の扉は消えていこうとしていた。
「ちょっと! お婆ちゃん!!」
「夕方までそこでおしゃべりしておいで。それが修行だよ」
「おしゃべりって、セイレンと?」
「それも自分で考える事。考える事を忘れては賢者にはなれぬ。常に考えるのだ。そして感じなされ。全ての生きとし生けるものの事を」
 アルシャンドールの言葉にリリアーナは思い当たる事があるようだった。アルシャンドールはその事ではないと言いたいが、余計な事は口は出さない。
 リリアーナは生きている、幽閉された母親を思い出した。あの人にも命がある。そのことが頭から離れない。
「ねぇ。リリアーナ」
「話かけないでっ!!」
 リリアーナは激しい口調で言うと森の中に入っていく。
「リリアーナ!」
『追いかけてはいけないよ。これはあの子が乗り越えることだからね。お前さんはその古木でも見ていれば良い』
「はぁ」
 要領を得ないセイレンはそびえ立つ古木を見上げたのだった。


あとがき
ここからとでもなく横道にそれてしまいます。書き手すら裏切った内容が……。たまにあるんですよね、キャラ先行って。リリアーナはお年頃ですから。セイレンもお年頃なんですが、のぼ~としていて。(笑)。言いコンビなんですよね。この二人。しかし。婆ちゃんのあの話はしてほしくなかった。伏線貼りみたいになってしまった。それはまた後日の話にでてきます。
それこそ、リナ=インバースの出番です。うちの子は異界の魔王と契約してません。なのに、あのばあちゃんはそのレベルのヤツの話を持ってくる。頭抱えてます。今日は「風響の守護者と見習い賢者の妹」の続きを書いて「星彩の運命と情熱」にうつろかと。しかし、市内にいく用事もある。時間あるのだろうか。今のうちに更新して時間稼ぎしております。五時半に起きても六時からしか動けない。やっぱり六時起きがいいのかしらねぇ……。

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