第百五十四回 Gt 虎|MOVIE TORAVIA「スプリガン」を考察

今回は予告通り「スプリガン」の話から始めようと思います。
6月からNetflixシリーズとして独占で「スプリガン」の配信が始まったんですよ。

「スプリガン」(2020)

ちょっと古い感じもしたんですけど、昭和のマンガですからね。
昭和だからこそ話がシリアス過ぎないところがいいですよね。
コンセプト的に似たものを上げると、最近だと「GANTZ」とか「いぬやしき」とかありますね。

「GANTZ」(2004)
「いぬやしき」(2017)
「いぬやしき」(2018)

ここまでいくとちょっとシリアスな感じがしちゃうんですよね。
でも「スプリガン」はそこまでシリアスではないからこそ爽快感があって、少年マンガっぽさを捨ててない。
そのギリギリのラインの時代にある作品なんですよね。
最近のアニメ作品は善悪の境目がハッキリしてない感じのものが主流なんですよ。
だから「敵も死ねば味方も死ぬ」というのが現代マンガのスタイルなんです。
「スプリガン」が出てきた時代ってそういうスタイルはまだ無かったんですよ。
だから昔のマンガのスタイルで「善と悪、どちらが正義なのか」というのをハッキリ決めて、「正義は勝つ」を貫いてる感がすごくあるなぁと思いましたね。
「スプリガン」の主人公(御神苗優)は高校生で学校に通いながら戦うから、今となってはそこが一番共感できない部分だったんですよ。
さすがにそこは「攻殻機動隊」ぐらい大人っぽい方が共感しやすいんです。

「GOAST IN THE SHELL 攻殻機動隊」(1995)

「スプリガン」は主人公が学生の設定で、子供達の共感を得ようとしているのが見えちゃいますよね。
同じように学生、あるいは社会人が主人公でも、現代のマンガやアニメは心が病んでることが多いじゃないですか。
ほとんどの主人公が心に何かを抱えてるんですよ。
でも「スプリガン」の主人公は病んでませんから。
当時は主人公をそんな設定にしようという発想自体が無かったと思うし。
実際、心を病んでる主人公とか、僕が知ってる限りではいなかったと思いますよ。
「AKIRA」だって病んでないですからね。


「AKIRA」(1988)

「スプリガン」を観てると、最近主流となっているマンガやアニメのスタイルと、当時のスタイルのギャップを色濃く感じることができるんですよ。
「スプリガン」みたいなスタイルのものって、現代にはほとんど無くて。
挙げるとしたら、唯一「呪術廻戦」は近いところにあるんじゃないかなと思いますね。
主人公は病んでいないし、爽快感もありますしね。
少年マンガっぽさを残してる気がします。
「呪術廻戦」は「週刊少年ジャンプ」作品なので、ジャンプ系王道の主人公の設定を貫いてる感じがします。

「劇場版 呪術廻戦0」(2021)

「スプリガン」は当時「週刊少年サンデー」で連載されてたんですけど、今からもう20年ぐらい前ですよ?
そんな時代のマンガを何故今の時代に引っ張り出してNetflixがアニメ化したのか、みなさんは分かりますか?
ここからは僕の想像でしかないんですけど、今のこういうエンタテインメントはおじさん向けに作られてるなと感じるんですよ。
今の子供って、正直スマホしか見てないから、「家でテレビを観る」という行為自体がおじさん向けなんですよね、きっと。
こういうところはすごく「パチンコ化」してるなと思うんです。
「パチンコ化」ってどういうことかというと、パチンコって、どんなに人気でも最新のマンガやアニメを台にしたりはしないんですよ。
それよりも昔流行ったもの、突然「おぼっちゃまくん」とかが台になって現れたりするんです。
それは、来ている人がおじさんだからなんですよ。
ターゲットは当時マンガを読んでた30〜40代の世代。
僕らよりちょっと上の世代ですよね。
だから「聖闘士星矢」がパチンコ台になったり。ちょっと今の流行ってるものとは時代がズレたものが、台として起用されていくんですね。
「北斗の拳」とかの台が現れたのもそれと同じ理由ですね。
そこからちょっと経ってから「新世紀エヴァンゲリオン」がパチンコの台になった時は、この台が大流行したんです。
だからターゲットを狙って敢えて時代をズラしたマンガやアニメの台を出す感じなんですよね、パチンコやスロットは。
なので今回の「スプリガン」もきっとそれなんですよ。
これからNetflixに加入して欲しい層はどこだろうと会社として考えた時、「今後は30〜40代の男性を増やしたいね」という企画会議みたいなものが行われて、そこでその層が昔読んでたかもしれない「スプリガン」をリメイクしてみるのはどうだろうかというアイデアが出た。
そういう流れだと思うんですよ。
Netflixは韓国に強いから韓国ドラマを好きな層以外をどうやって増やしていけばいいのか。
そういう会議をNetflixはめちゃくちゃやってると思うんですよ。
その中で今回「スプリガン」とか出されると、俺なんかリアルに読んでた世代だからまんまとその戦略にハマっちゃう訳ですよ(笑)
「え?マジか、これは観なきゃ」って。
「ジョジョの奇妙な冒険」も、今は最新作(第6部「ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン」の2クール目)が9月1日からNetflixで全世界独占先行配信になってますから。

「ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン」(2022) 

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