世界の名作100
英国の新聞「ガーディアン」が2003年10月12日に掲載したリストから、最初の10作品を順に紹介する。
The 100 greatest novels of all time: The list | Books | The Guardian
セルバンテス著「ドン・キホーテ」
ジョン・バニヤン著「天路歴程」
デフォー著「ロビンソン・クルーソー」
スウィフト著「ガリバー旅行記」
フィールディング著「トム・ジョーンズ」
サミュエル・リチャードソン著「クラリサ」
スターン著「トリストラム・シャンディ」
ラクロ著「危険な関係」
オースティン著「エマ」
メアリー・シェリー著「フランケンシュタイン」
全部、日本語で読めるものばかり。「クラリサ」は、以前、渡辺洋訳でネット上に公開されていたが。これは、ペンギン・クラシックスのペイパーバック版で1536頁もあるので、出版社も邦訳に二の足を踏んだのであろう。
リスト全体では、はじめて目にする作品もある。トーマス・ラブ・ピーコック著「悪夢の僧院」。これは、坊さんや尼さんが出てくる話ではなくて、タイトルは、主人公の住む、さびれた大邸宅を指している。
19世紀前半のロマン主義を風刺した短篇小説らしい。地球の裏側に住む我々が、これを読んで捧腹絶倒するのは無理だと思われる。
ジョージェット・ヘイヤー著「黒羊」。英国のアマゾンに寄せられた感想によると、ヘイヤーの最高傑作、ウィットとユーモア、機知に溢れた会話がいっぱい。はたして、英国のユーモアが日本人にも通じるのだろうか。
「黒羊」の日本語訳は、まだ出ていない。どうも創元推理文庫とMIRA文庫から出版されているところを見ると、推理小説とロマンス小説をたくさん執筆しているようだ。
ベンジャミン・ディズレーリ著「シビル」。チャーチルと同じように、文学者としても第一級の政治家。それにしても、英国には筆の立つ政治家がやたら多いような気がする。
これは、19世紀中頃のイングランドの苦悩、特に労働者階級の貧困を扱った小説である。同じ主題を論じたエンゲルスの論文も、同じ1845年に出ている。
アンソニー・トロロープ著「当世風の暮らし方」。この作家の作品は、邦訳があまりない。2010年以降「慈善院長」など6冊が、すべて開文社出版から出ている。
ジョージ・エリオット著「ダニエル・デロンダ」。この作には竹之内明子訳と淀川郁子訳の2種があることを知った。ドイツのある街のカジノを舞台に、ダニエルとグエンドレンとの出会いから、物語は始まる。
ジョージ・グロスミス著「無名氏の日記」。英国ではユーモア文学の傑作として知られ、現在まで版を切らしたことがないという。主人公の名にちなんで、やたら威張り腐って、ふんぞりかえっている人をプータリッシュと形容する。
アースキン・チルダーズ著「砂の謎」。第1次世界大戦前に出版されて、ドイツの軍事的脅威をイギリス人に煽り立てたスパイ小説。
コンラッド著「ノストローモ」。これこそ、私がかねがね書きたいと思っていた小説と、スコット・フィッツジェラルドに言わしめた、南米の革命動乱を背景とする長篇。
フォード・マドックス・フォード著「良き兵士」。頼りない語り手の紡ぎ出す姦通小説。語り手がいい加減だから、話のつじつまが合わないこともあるという。
恥しいことに、100冊のうち、筆者の読んだのは、「ライ麦畑でつかまえて」と「ガリバー旅行記」の2冊だけである。前者は、もうずっと昔、高校生の頃、後者は、数ヶ月前に読んだ。しかし、2冊とも、もうほとんど内容を忘れしまった。若年性認知症にかかっているのかもしれない。