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心に刺さる歌詞「Progress」〜蹴りたくなるくらい嫌な私

スガシカオさんの「Progress」
言わずとしれた名曲である。

はっきり言って最初から最後まで、一字一句全ての歌詞が心に刺さりまくっているのだが。中でもハンマーで頭を殴られたように衝撃を受けたのは冒頭のこの部分。

つまずいている あいつのことを見て 本当はシメシメと思っていた

スガシカオ「Progress」
 

この「シメシメ」という表現が絶妙なんだよね。「いい気味」とか「ザマーミロ」ではない。「ラッキー」ともちょっと違う。

物語の中の悪者キャラたちは、自分に都合のいいことが起こった場面で、よく「シメシメ」とほくそ笑んでいる。ところが、ヒーロー側のキャラたちは、決して「シメシメ」などとは言わないし、思わない。

「シメシメ」などと思うのは、ヒール側の専売特許の卑しい感情であり、正義の味方には似あわないから。

けれども、私はこの「シメシメ」という感情が痛いくらいにわかってしまう。「そうだよね。ついついそう思ってしまうよね」と100%共感できる。
 
いつだって私より少しだけ運の悪い誰かを探して、それよりマシだと自分を慰めている。私の前を走る誰かが失敗して、私の後ろに行ってくれればいいのにと思っている。

かと言って、自分の手を汚す気にはならないし、大怪我なんかされては困る。そこまでの悪人にはなりきれない。

だから、ちょっとだけ躓いて出遅れてくれたらいい。ほんの少し私の方が有利になればそれでいい。

自分がトップを走るだなんて、最初から夢にも思っていないけれど。最下位になるのは困る。そのポジションには、私ではない誰かにいてほしい。

そんなことを無意識のまま、日常的に考えている気がする。心密かに願っている気がする。そして、そんなことなんか全く考えていないような顔をして、キレイゴトを言いながら生きている。

「我ながら『ケリたくなるくらい嫌い』になりそうな奴だな」と思いつつも。心のどこかで「仕方がないよね。人間だもの」と開き直っている自分もいる。

誰だって自分のことが一番かわいいし。私が躓かせたわけでもなく、勝手に躓いてくれただけだし……みたいな。とことん自己チューだな。困ったもんだ。

「夜空ノムコウ」を初めて聴いた時もそうだったけれど。スガシカオさんは本当にすごいな。

こんな「できれば向き合いたくない、目を背けていたい自分の中の負の感情」を、ほんの一文で、こうも鮮やかにあぶり出してしまうなんて。とてつもない稀有な才能だと思う。

しかも、曲を最後まで聴くと前に進む勇気がわいてくる。「あと一歩だけ」と言うのが、たまらなくいいんだよね。そうだね。がんばるよ。あと一歩だけなら。あと一歩「だけ」でいいのなら。

何度も繰り返しこの曲を聴きながら。その歌詞を今日もまた深く心に刻みながら。その1つの1つの言葉に、メロディに。スタンディングオベーションでは足りないくらいの精いっぱいの拍手をおくりたい。

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