どんなに素敵なお家でも〜空想癖が邪魔をする
「住人十色」や「となりのスゴイ家」のような住宅探訪的な番組を観るのが好きだ。
それなりにリフォームをしてあるとはいえ、原型が築何十年かもわからないような古い木造住宅に住んでいる身の上なので。最新式の新しい家というのは、私にとって永遠の憧れなのです。
番組で紹介される家は、それぞれがこだわりと工夫に溢れていて「なるほど!」「すごいなあ」と感心したり、時には「それはない」「斬新すぎる!」とつっこんでみたり。
そして、最後に思うこと。一番気になることが、だいたい毎回これ。
「掃除、というかメンテナンス。めちゃくちゃたいへんだよね」
他にも、天井が高くて広々とした空間が多い家が多いから、空調は効くんだろうかとか。それにしても、きっと電気代がたいへんだよねとか。急な階段の上り下り、年取ったらキツいよね、などなど。様々な心配が頭をよぎる。
このような素敵なお家を建てた方々は、きっと余裕のある暮らしをされているはずなので。例えば掃除にしても、最新式のロボット掃除機を使ったり、業者の方に来てもらったり。あるいは、とても几帳面で掃除やお手入れそのものが苦にならなかったりで、きっと大きな問題はないのだとは思う。
その他の面でも、私が余計な心配をしなくても、それぞれにきちんと対策を施していて、快適に暮らしているに違いない。そもそもあの素敵な住空間を維持するためには、少しくらいの労力は何ともないのかもしれない。
それでも、毎日、たいして広くもない自宅の掃除を嫌嫌ながら仕方なくやっている身としては。どうやって、あのキレイな空間を維持しているのか、気になって仕方がない。自分だったら絶対にムリだし。
こんな風に、ただ番組を観ているだけで、私が決して住むことのない他人の家で、自分が生活する姿を想定しては、勝手に悩んだり心配したりしている。
どんなに素敵なお家でも、結局最後は「お掃除大変だろうな」になってしまう。
困った空想癖だが、洗練されたお宅の様子や斬新な間取りを拝見するのは、基本とても楽しいから。この手の番組、できればもう少し増えてほしい。
昔からそうなのだが。すぐに本や映像の世界に入り込み、現実的な想像をしてしまうという悪しき習慣。この邪魔な空想癖(というより異常な心配症?)は、ドラマを観ている時にもしばしば発動される。
例えば、最近で言えば、小林聡美さんと小泉今日子さんがW主演の話題のドラマ「団地のふたり」。
二人を中心とした団地の皆さんのほのぼのとした雰囲気が大好きで、毎回楽しみに観ていた。藤野千夜さんの原作も読んだけれど。ドラマの世界の方がより好きかもしれない、と思うくらいよくできたドラマだったと思う。それなのに…。
ノエチとなっちゃんが、ベランダのテーブルでお茶を飲みながらくつろぐほっこりシーン。
夏だし。窓も開けっ放しだし。「虫、飛んでくるよね。大丈夫?」
まったりと会話を続ける画面の中の二人に癒されるべき瞬間に、虫たちの襲来を恐れ、ハラハラしている自分が本当に嫌になる。
例えば、これも人気のドラマ「モンスター」。お話も面白いけれど、弁護士役の趣里ちゃんのファッションがカジュアルでとても可愛い。
できれば、私もあんな格好がしたい(年齢は無視!)と。どこのブランドのパーカーなのかググったりもしてみるほどに気に入っている……にも、関わらず。気になってしまうのだ。
「お仕事忙しそうなのに。お洗濯どうしているのかな」
あのカジュアルなのにおしゃれな、布面積が大きなシャツは、毎回クリーニングに出すのかな?家で洗濯したらアイロン必須だよね?アイロンかけるのも大変そうだし。高級そうなビッグパーカーも含め、乾燥機にはかけられないだろうし。部屋干しなら数日かけないとしっかりは乾かないよね。あ、浴室乾燥機か。などなど。
あのシャツやパーカーはドラマの衣装なわけだから、現実的には、プロの方が管理するものだし。そもそもドラマの中の登場人物というのは、トレンディドラマの昔から(登場人物に生活感がゼロ)そういうものなのだ。
わかっているのに。なぜ、こうも余計なことばかり考えてしまうのか。
たぶん、私が家事や虫が嫌いすぎるのが問題なのだとは思うのだが。素敵なお家や素敵な作品は、フィクションの世界として素敵なままで完結してほしい。
いやいや、完結させればいいものを、自分で勝手な想像をして困っているだけなんですけどね。とにかく、すぐに自分に置き換えて、現実的な心配をしてしまう、この止まらない(しかもショボすぎる)空想癖が憎い!!!
本当は私だって、ノエチやなっちゃんのように、たまにはベランダにテーブルを出してお茶をしてみたい。「となりのスゴイ家」に出てくるような最新式の機能的な家に住んで、毎日を趣里ちゃん演じる弁護士さんのようなファッションで過ごしてみたい。
私にできないことを私の代わりに彼らがしてくれている、そんな風に考えたら。私の困った空想癖による心配事もなくなってくれるのだろうか。
どうせ空想するなら、掃除も洗濯も必要ない、大嫌いな虫も存在しない、そんなファンタジーな世界を思い描けばいいのに。そんな世界を想像するには、今の私は、残念ながら、年をとりすぎてしまっているし。日々、大嫌いな家事や虫たちと闘い続けているから。
せめて、素敵なライフスタイルの真似事を、と。今日は趣里ちゃん風の大きめパーカー(←しわにならない速乾性)にふんわりロングスカート(←洗濯機で洗濯可)というお手入れ楽々な組み合わせで外出してみた私だった。