見出し画像

【書評No.1】十代に共感するやつはみんな嘘つき/最果タヒ

なんて攻撃的で素敵なタイトルなんだとAmazonの購入ボタンを押してしまった。

『最果タヒ』という詩人が書いた小説【十代に共感する奴はみんな嘘つき】

この小説は17歳の少女が屁理屈を盾にしながら人々と関わっていく2日間をえがいている。その2日間に友人とのケンカ、恋愛、兄妹関係でいろんな事件が起こっていく。
この物語の一番の魅力は17歳の少女の心理描写がすごくリアルにえがかれている事である。
私はその主人公の心理にどうしようもなく共感してしまった。

主人公は屁理屈だらけの女子高生。
自分の価値観を曲げられず理解されない、でも「君たちには理解できないし、してほしいとも思わない」と達観して人と接する。何も分かっていないのに分かった気になり同い年よりも自分は物事の本質を理解していると思っている。
友人関係や恋愛、家庭の事も全て自分の納得したいように理屈をつける。

こう書いてしまうと主人公にあまりいい印象を受けないかもしれない。
しかし、私はこの本を読んだ時に「コレは自分だ」と思ってしまった。

昔の自分にそっくり!といってしまうと語弊があるが、屁理屈で自分を守ってしまう弱いところに身悶えするほど共感した。

昔の私はというと

小学生の頃は教室の隅で西尾維新の物語シリーズを読み「自分はこんなに面白いものを知っている。あなたたちには分からないでしょう。」と真っ赤な本を広げ続けた。
中学生になるとスマホが流通しだす。周りがスマホで音楽を聴く中、平成初期のCDプレイヤーにクリップヘッドフォンを繋げて小沢健二のアルバムLIFEに収録されている
「今夜はブーギー・バック」を聴いていた。
当時の私は一昔前の物を使うことが時代に逆行していてカッコいいと本気で思っていた。
高校生になってパンクロックに目覚めた。
レスリングの試合前には必ずブルーハーツを聴くのがルーティーンだった。
もちろん一昔前のUSB型音楽プレイヤーでだ。

当時を振り返ってみて、自分に呆れてしまうことやちょっと可愛く思えるところは多々あって、少し恥ずかしくなる時もあるけれどあの頃は何かに必死だったのだと思う。
それと同時にいつか今を振り返って「あの頃は必死だった」と思える日が来るのではないかと考えると「頑張ろう」と思える。
こんなタイトルなのに十代の頃を懐かしく思ってしまう。
昔の自分に思いを馳せてクスッと笑ってしまう。
そんな小説。

しかし、最果タヒさんはあとがきで
「懐かしさという言葉ですべてをあいまいにして、そしてわかったつもりになるなら、それは自分への冒涜だって、気付かなければならない。」
「私は、今の私以外何一つ自由にできない、過去の私は、正しくは私ではない。もう、とっくに他人になった。」
と書いている。

私の考えが著者に見透かされていたようで恥ずかしい…

ただ、今は他人になってしまった私に
少し遠回りはしたけれど、たくさんの人達のおかげで最高の場所で貴方の憧れたプロレスラーになれている。
と伝えたい。

【著者プロフィール】
名前 最果タヒ
主題 詩、エッセイ、小説
代表作 『死んでしまう系のぼくらに』『グッドモーニング』『夜空はいつでも最高密度の青色だ』
受賞歴 第44回現代詩手帖賞
    第13回中原中也賞
    第33回現代詩花椿賞
    第32回萩原朔太郎賞


いいなと思ったら応援しよう!