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AIで進化する生産計画!最適化手法と成功事例 vol.3

これまでvol.1vol2でお伝えしてきた通り、生産計画は製造業をはじめ、半導体、重工業、製薬業界など、さまざまな業界において重要性を増しています。

その中でも特に、化学業界における生産計画は制約条件が多く、より複雑なものになります。この難しい課題に対し、最適化AI(ヒューリスティックアルゴリズム)によってどのように解決したのか、ご担当者の生声とともに具体的な事例を見ていきましょう。


CASE:日本触媒、効率的な生産計画で高吸水性樹脂の生産を最適化 — 計画工数90%以上削減、属人化を軽減

(左から)生産本部 生産技術部 主席 梅原康平様、吸水性樹脂製造部 藤原悟様、秋津貴宏様、DX推進部 主任部員 中谷香織様

導入の背景

日本触媒の事例をご紹介します。
化学業界の生産計画業務は、一般的に

  • タンク設備の制約

  • 品種の多さ(品目ごとに単位も異なる)

  • 品質管理の複雑さ、厳密さ

  • 薬品ごとの化学反応の時間

  • 薬品によって扱える人材が限られる細かい属人化

などの制約条件が重なり、生産計画の中でも非常に難易度が高く、厳密さも求められます。

日本触媒が生産する高吸水性樹脂(以下、SAP)は、主に紙おむつなどに使われ、乳幼児向けや大人向けなどの用途に応じて吸水性や保水性が異なる多種多様な製品が存在します。それぞれ生産条件が異なるなか、切り替えの回数を抑制しつつ、需要変動に対応するための適正在庫を維持してバランスよく生産することが長年の課題でした。
また、従来これらの生産計画作成には、多大な労力がかかり、豊富な知識と経験が必要なため属人化も大きな課題でした。

梅原様:事業戦略の一つの施策として検討開始
「当時社内では「SAPサバイバルプロジェクト」というSAP事業の競争力強化に向けた取り組みが進められており、その中の一つのテーマとして“生産計画の改善”に関する検討を行っておりました。私自身は普段、機械・設備の選定やプロセス設計業務などを担当しておりますが、今回の導入に当たっては自ら手を挙げて推進担当者になりました。」

導入前の課題

  • 表計算ソフトで多大な時間を費やして計画を作成していた

    • 表計算ソフトでは非常に多くの時間がかかり、急なリクエストにも柔軟に対応できない状況だった。

  • 属人化しており技術・ノウハウ伝承に課題があった

    • 生産計画が特定の担当者に依存しており、技術やノウハウが他のスタッフに伝わりにくい状況。担当者が不在の際には計画の見直しが難しく、対応に時間を要していた。

  • 在庫状況優先で効率化の検討が不十分だった

    • 在庫状況に応じて計画を見直すことが難しく、非効率が発生していた。

秋津様:計画策定の業務負担と属人化
「生産計画は、穴をあけてはいけないプレッシャーのある仕事です。営業から年間の販売計画を受領し、それを月ごと・日ごとの生産計画に落とし込んでいくのですが、製品数に対してプラント数は限られるため、いかに製品切替を行っていくかを考える必要があります。
また、顧客数は非常に多く、急なリクエストを含め対応が必要であるため、残業することも少なくない状況でした。さらに、業務が属人化しており、担当者の休みがあると対応しきれないなど、大きな課題となっていました。こういった業務負担や属人化を緩和することも狙いの一つとして、本件に取り組むことになりました。」

ALGO ARTISのソリューション、導入の決め手

ALGO ARTISは、課題のヒアリングを徹底して行い、熟練者の経験・ノウハウ・実務上の複雑な運用ルールをAI(アルゴリズム)へ移植し、SAPの生産計画を最適化するソリューションを開発しました。

AI(アルゴリズム)にはこれらの運用ルールなどを言語化・定式化して組み込んだため、運用ルールの変更や新製品の追加があった場合も、大きな改修をすることなく本最適化ソリューションを使い続けることができます。 

梅原様:全員一致でALGO ARTIS
「導入検討に当たっては、ALGO ARTISを含めて3社で比較を行いました。3社と協議を進める中で、様々なリクエストを伝えて“何ができて、何ができないのか”を見定めていきました。その結果、メンバー全員がALGO ARTISが良いと一致しました。ALGO ARTISが一番「できる」という回答が多かったからです。計算時間の速さもポイントの一つでした。」

中谷様:チームへの信頼
DX推進部の当時のリーダーが化学工学の専門家で、数学的な内容や技術にも明るい人材だったのですが、そのリーダーも”ALGO ARTISのメンバーは神々の領域で遊んでいる方々だ。この方々と付き合っていれば当社にも良い影響が出るはずだ”と、強く推していました。」

秋津様:過去のスケジューラ導入の失敗経験
「実は、過去にスケジューラの導入に取り組んだ経験があったのですが、その時は業務が多忙だったこともあり、なかなか対応しきれずうまくいきませんでした。こういった苦い経験もあったことから、正直最初は身構えていました。ただ今回は、梅原さんやDX推進部が入っており、ALGO ARTISも一緒に並走して考えていくスタイルで毎週ミーティングを行ってくれたため、導入に至ることができたと考えています。」

梅原様:メンバーと開発手法
「ALGO ARTISのアルゴリズムエンジニアは、対外的にも評価の高い人材ですが、こちらに歩み寄って話をしてくれます。開発手法も、最初に決めたものを作っていくというより、その都度出てきた問題を解決していく形でまさにアジャイル型の開発であり、非常に進めやすかったと感じています。また、ベンダー選定においては、秋津さんが細かな確認ポイントを事前に整理してくれたため助かりました。一度失敗した経験がなかったらALGO ARTISを選べなかったかもしれません。」

導入後の成果

  • 切り替え回数の削減、在庫不足の抑制

    • 在庫不足を回避しつつ生産ラインの切り替え回数の削減が可能に。現場作業の負担軽減や生産ラインの停止時間の短縮に成功。

  • 計画作成時間が9割以上削減、アルゴリズムによる自動提案で非熟練者をサポートし属人化を抑制

    • 豊富な知識や経験がなくても、従来の1/10の時間で生産計画を作成できるようになり、生産計画の作成担当者は関係部署との調整業務や設備保全といった生産性を維持・向上させる業務に時間を費やせるようになった。

    • さらに、より長期間の生産計画を作成できるようになり、詳細な年間計画のもとで、将来を見通したより安定した運用が可能となった。

梅原様:切り替え回数の削減、在庫リスクの抑制
「導入後の効果としては、まず切り替え回数が削減できたという点があります。もちろん他の要素もあるため一概にこのシステムの効果とは言えませんが、既に3/4か2/3程度にはなってきています。
また、以前は局所的に在庫が不足しかけることがあったのですが、このシステムを活用すると3か月先が見通せるため、月次計画では見えなかったものが見えるようになりました。作ろうと思えば半年先・1年先も作れるため、より先を見通すことで在庫リスクの抑制に繋がっていると感じています。」

秋津様:日々の計画だけでなく年度予算策定にも活用
「以前は日割の販売量などを見ながら、試行錯誤しながら膨大な時間をかけて生産計画を策定していましたが、今はこのシステムが計画を策定している時間に、他の業務ができるようになりました。
今回、年度予算策定においてもこのシステムを活用しましたが、バランスの良い計画が作れたのでほぼそのまま採用しています。通常と異なり計算時間は長くなりますが、計算している間にそれ以外の業務ができますし、年度予算はこれまで丸二日くらいかけていたので非常に助かりました。」

藤原様:さらなる改善余地
「基本の生産計画としては月初と月中の月二回程度策定を行っていますが、追加のオーダーが頻繁に来るため、都度計画修正しています。今はまだ織り込めていない要素もあると感じており、システムの出力結果の確認作業にも時間がかかっています。今後、システムの改良を行うと同時に、システムを使いこなしていき、より良い計画策定をできるようにしていく必要があると考えています。」

今後の展望、より良い「計画」へ

日本触媒では、社内システムとAIソリューションのハイブリッド運用による新たな活用方法が検討され始めています。具体的には、基幹システムのデータを活用し、日々の在庫変動を自動で可視化する試みが進行中です。また、最近の燃料価格の変動を受けて、市況に応じた柔軟な調整を継続して行っていきたいという力強いコメントもいただきました。
細やかな改善をベースに、社内システムとALGO ARTISのAIソリューションの融合からは、さらなる業務の効率化や新たな可能性が生まれるかもしれません。

これまでお伝えしてきた通り、生産計画業務の属人化は製造業をはじめとする多くの産業で共通の課題となっており、制約条件も年々複雑さを増しています。
一方今回の日本触媒の成功事例を通して、最適化AI(ヒューリスティックアルゴリズム)の活用により、生産計画の根本的な課題解決の可能性を感じていただけたのではないでしょうか。

ALGO ARTISは今後さらに価値提供の範囲をさらに拡げ、「社会基盤の最適化」というビジョンのもと、さまざまな分野の課題解決や、コスト・リスクの低減に貢献していきます。

お知らせ:9/26(木) 化学業界における生産計画をテーマにしたWebinar開催!【無料】

今回の記事にご登場いただいた、株式会社日本触媒 生産本部 生産技術部 主席 梅原 康平氏をゲストに迎え、生産計画のWebinarを開催します。興味をお持ちの方はぜひご参加ください!

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