価値提供の拡大を目指して「Planium(プラニウム)」誕生秘話〜新SaaS型プロダクト開発という挑戦 [前編]
みなさん、こんにちは。
今週は私たち ALGO ARTIS にとって特別な一週間でした。
昨年発表したSaaS型ソリューション「Planium(プラニウム)」が、いよいよ社会実装というモメンタムを迎えたのです。
「Planium」は、まだまだ進化の途中にあるプロダクトです。今回はなぜ開発に至ったのか、そこにどんな挑戦が待っていたのか、そしてこれからの展望について、少し裏側をお見せできたらと思っています。
…と書いているうちに、どうやら少し長めの読み物になりそうです。そのため、今回と次回の2回に分けてお届けします。どうぞ最後までお付き合いください。
01.Planium 開発の原動力
これまでもこのnoteでお伝えしてきた通り、ALGO ARTIS は、最適化AI(アルゴリズム)を活用したオーダーメイド型の計画最適化ソリューション「Optium(オプティウム)」を通じて、化学業界の計画業務に深く携わってきました。特に日本触媒様での導入事例は、同業界の計画最適化における課題解決の一つのモデルケースとなっています。この取り組みを通じて、化学業界特有の知見が蓄積されました。
従来、計画スケジューリングサービスは主に組立製造業向けに開発されたものが多く、タンク繰りやバッチ生産といった化学業界特有の制約条件に対応できないケースが少なくありません。そのため、多くの化学メーカーでは未だにExcelを駆使して計画を策定しているのが現状です。
化学業界の計画業務は複雑さを極めます。販売計画、生産計画、充填計画、購買計画、さらにはタンクやサイロの在庫管理など、多岐にわたる計画を同時に考慮しなければなりません。この結果、複数のExcelを使用した属人的な管理が一般的となり、部門間での調整も煩雑化。工数削減の余地が大きい分野として長らく課題とされてきました。
こうした背景の中で、化学業界特有の制約条件を考慮しつつ、複数の計画をワンストップで策定できるスケジューリングSaaSの価値は非常に高いと考えています。これが、Optium の知見を活かしてSaaS型ソリューション「Planium」を開発する原動力となりました。
02.これまでの知見を活かした新たなSaaS型ソリューション開発
「Optium」は日本触媒様をはじめ、数多くの大手企業の計画最適化を支援してきました。切り替え回数の削減や用役費の最小化、在庫の適正化など、具体的な最適化の効果が顕著に現れていることに加え、実際に操作されているご担当者様からは、「非常に使いやすい」「仕事がラクになった」と嬉しい声をいただいています。
しかし、Optium の導入には一定の期間と、比較的大きなコストが必要となるため、予算の制約がある中小規模のプロジェクトでは導入が難しいケースが少なくないことも、日頃の活動の中で感じていました。
こうした課題に対し、計画策定の効率化を通じて、企業の生産性を高め、DX(デジタルトランスフォーメーション)を後押しするためには、これまでOptium で培った技術やノウハウを活かした汎用的な新たなソリューション開発が必要だと考えました。そしてまずは、難易度の高い化学業界に特化することで、業界特有のニーズに応じた汎用化が可能になると確信し、「Planium」の開発がスタートしたのです。
03.「汎用化」という高い壁
Planium の開発において、最も大きな課題となったのが「汎用化」でした。
従来のOptium は、お客様それぞれの要件に合わせて個別にデータ構造やUI、アルゴリズムを設計していました。しかし、SaaS型のPlanium では、複数の化学工場で共通して使える「汎用的なデータ構造」が求められました。
UIやアルゴリズムの設計は、計画を立案する際に扱う「データのInput(入力)」、考慮すべき「制約条件」、そして最終的に出力される「Output(結果)」に大きく依存します。つまり、Inputデータ・制約条件を表現したデータ・Outputデータを統一しなければ、汎用的なUIやアルゴリズムは作れないのです。
一方、化学工場では、製品ごとの製造条件、原材料の供給状況、タンクやラインの稼働状況など、データとして表現すべき要素が多岐にわたります。さらに、計画ごとに重視するポイントも異なり、例えばある工場では在庫削減が最優先である一方、別の工場では製造ラインの切り替え回数を減らすことが最重要課題になります。
これらの条件を考慮しつつ、汎用性を持ったデータ構造を設計する必要がありました。具体的には、どの化学工場でも共通して使える「基本的なデータ要素」を整理し、それを抽象化したモデルにまとめることが求められました。こうしたデータ構造があれば、どの工場でも計画の特性に応じて適切な計画を自動で策定することが可能になります。
汎用的なデータ構造を設計するためには、膨大な現場データを収集・整理し、共通点を抽出する「モデル化」の作業が必要でした。これがPlanium 開発の最初にして最大の課題となり、チーム全体で徹底的に取り組むこととなったのです。
試行錯誤の日々
「汎用化」という大きな壁を乗り越えるため、開発チームはまず現場の深い理解を目指しました。パートナー企業である三井物産様と連携し、多くの化学メーカーにヒアリングのご協力をお願いしました。その中心を担ったのが、PdM(プロダクトマネージャー)の飯塚とアルゴリズムエンジニアの渡辺、秋吉でした。3人は毎日のように何時間も議論を重ね、少しでも「汎用的なデータ構造」の手がかりを探るため奔走しました。しかし、ヒアリングを進めるたびに、その難しさが鮮明になっていきます・・・。
浮き彫りになる課題
実際には、入力されるデータや考慮すべき条件は工場ごとに大きく異なります。例えば、ある工場では製造スケジュールに充填工程が含まれる一方で、別の工場では全く必要がない場合もあります。また、計画立案における優先順位も工場ごとに異なり、取捨選択しながらも汎用的なデータ構造を作ることは極めて困難でした。
またこうした違いを整理する中で、「この要件はこの企業だけの特殊なものだろう」と思われていた内容が、実は他の企業にも共通していることが後になって分かる場面もありました。このような発見は貴重である一方、同時に「どこまでを汎用化し、どこを柔軟にカスタマイズ可能な設計にするべきか」という新たな課題を突きつけられることになりました。
計画立案における条件や優先順位は企業ごとに異なる一方で、業界全体としての共通性を見出し、シンプルかつ実用的な形に落とし込む―この作業が、想像以上に困難であることを痛感したのです。
困難にチームで立ち向かう
収集したデータを整理し、モデル化する作業も大きな試練でした。計画業務の多様性と複雑さを抽象化し、一貫性のあるデータ構造を作り上げるには膨大な時間と労力が必要でした。しかし、どうしても「これならすべての化学工場で使える」と確信できる形にまとまりません。
毎日繰り返される議論の中で、チームは何度も「この方向性で本当に汎用化が実現できるのか」と自問しました。それでも、計画業務の複雑さに立ち向かう中で、小さな突破口や可能性を見出しながら、少しずつ道を切り開いていきました。
後編に続く
ヒアリングを重ね、試行錯誤を繰り返しながらも、なかなか突破口が見えない「汎用化」という課題。しかし、その壁を乗り越えるためにチームが行った大胆なアプローチが、「Planium」誕生への道を切り開くきっかけとなりました。
次回は、この「汎用化」の壁をどのように突破したのか、そしてPlanium が形になるまでの裏側をさらに深掘りしてお伝えします。困難な挑戦の中で生まれた意外なアイデアや、開発チームの奮闘に迫ります。どうぞお楽しみに!
Planium 化学 について:
最適化AIを活用したオーダーメイド型の計画最適化ソリューション「Optium(オプティウム)」の知見を元に開発されたSaaS型プロダクトです。汎用的なスケジューラーではカバーできない業界特有の制約やルールに対応した柔軟性のあるパッケージ型スケジューラーで、コストを抑えながらスピーディーな導入が可能です。
関連プレスリリース:
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