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AIが切り拓く運行計画の新時代 ー 安全と効率を実現する最適化の可能性vol.1

私たちの生活に欠かせない電車やバス。
毎日、正しい時間に安全に乗れるという当たり前の光景の裏には綿密な「計画」が欠かせません。バスや鉄道の運行計画業務は、これまでお伝えしてきた生産計画や配船計画と同様に、属人化や人手不足といった課題を抱えています。

便利さを支える一方で、バスや鉄道の本数やルートの複雑さ、従業員のシフトを安全に管理する必要など、その計画には多くの配慮が求められ、非常に複雑です。
しかし、こうした課題に対してもAIを活用することで、解決の可能性が広がっています。
今回は、運行計画の概要や課題、そしてAIによるアプローチについて考えてみましょう。


1.運行計画とは

・乗務行路表と交番表の役割

運行計画には主に「乗務行路表」と「交番表」があり、それぞれ異なる役割を持っています。

「乗務行路表」は営業ダイヤを基に、乗務員の1勤務あたりの乗務スケジュールに組み直した行路をまとめたものです。運用番号ごとに行路の始まりと行路の終わりを記入するのが基本になります。

運用番号ごとに行路の始まりと終わりは異なるため、コピーアンドペーストで記入ができないのもポイント。また同じ運用番号であってもバス・鉄道車両によっては、行路の始まりと終わりが異なることがあるため、全体を俯瞰して正確に記入する必要があります。

「交番表」とは乗務員の日々の勤務予定をまとめたシフト表のこと。日時ごと・行路ごとに記入するのが基本ですが、交番表を作成することで担当乗務員と行路が一目で分かるようになります。

・運行計画は安全な運行に必須

鉄道会社やバス会社では、乗務行路表と交番表を作成する目的の一つに効率化がありますが、最も大切なのは安全な運行を確保することです。無理な運行計画を立てると、乗務員に過剰な負担がかかり、事故のリスクが高まります。適切な計画を立案することで、乗務員の疲労を軽減し、安全な運行を実現することができます。

2.運行計画の課題

<1>複雑、制約条件の多さで時間・工数を要する
計画を複雑にしてしまう下記のような要因によって、熟練の担当者が運行計画を立案しても、多くの時間と工数を要します。

  • 労働条件・スキル

  • 車両条件

  • 周辺施設、道路状況等

労働条件・スキル
バスや鉄道車両の乗務員の契約形態は多様で、運行計画時にはそれぞれの労働条件を考慮する必要があります。また、乗務経験によりスキルも異なるため、各乗務員に充てられる行路の選択肢には制限が加わります。
このような労働条件やスキルの違いを考慮するには、制約条件を整理した上で運行計画を立案する必要があります。しかし、現場で使われている表計算ソフトにはAIが搭載されておらず、自動で運行計画を提案することができません。多くの表計算ソフトに搭載されているIF関数を駆使すれば、簡単な人員配置は可能かもしれませんが、最適化にはほど遠いと言えます。

車両条件
バスや鉄道車両には定員があり、利用時間によっては定員オーバーの可能性があります。日本民営鉄道協会によると、鉄道車両には「座席定員」「サービス定員」「保安定員」という異なる基準が設けられています。特に、サービス定員をオーバーしないように、各鉄道会社は推定利用客数に基づき車両数を調整する必要があります。
また、車両のメンテナンス時期は法令で定められており、メンテナンス中の車両は運行計画から除外しなくてはなりません。

周辺施設、道路状況等
多数の利用客が見込まれる駅・バス停には多くの鉄道車両・バスが必要になります。
また周辺施設によっては、本数を調節し環境にも気を配らなければいけません。
バスの場合は道路状況にも気を配る必要があります。混雑すると予想される道路の場合は、運行計画に余裕を持たせなくてはいけません。

 <2>属人化、人手不足

運行計画業務は鉄道やバスの運行において欠かせない重要な業務ですが、現場では属人化と人手不足が常態化しています。

公共交通分野では、労働力不足や担い手の高齢化、バブル崩壊以降の採用抑制により30代への技術継承が滞っているという問題が長年懸念されてきました。さらに、2024年4月からの労働時間規制の変更により、この業界全体に「2024年問題」の影響が及んでいます。

こうした背景の中で、運行計画業務は特に属人化の問題が深刻です。特定の担当者が長期間にわたって計画業務を担当しているため、その担当者が休んだ場合に業務の継続に大きな支障が生じます。引継ぎが不可欠ですが、メモや表計算ソフト等による引継ぎでは視認性が低く、実用性が不足しているのが現状です。

人手不足の問題も依然として解決が難しい課題です。運行計画業務は非常に複雑であるため、数週間の研修では新たな人材に知識やスキルを十分に伝えることが難しく、結果として属人化がさらに進行してしまいます。

このような状況を打破するためには、AIなどの技術を活用して属人化を防ぎつつ、業務を効率化する取り組みが求められています。

<3>計画の良し悪しの評価ができない

本当に効率の良い運行計画になっているのか?もっと良い計画が存在するのではないか?これらの疑問は多くの担当者が抱える課題です。
理想的には、一つの画面で複数の運行計画パターンを比較・確認できることが望ましいですが、表計算ソフトなどの従来のツールではそれを実現するのは困難です。
さらなる効率化を図るためには、担当者の長年の経験と勘に加え、担当者を支えるテクノロジーの力が必要です。

3.課題解決のポイント

<1>安全・効率的な計画

安全で効率的な計画を実現するためには、制約条件を即座に反映できる柔軟な仕様と、それを支える高度なアルゴリズムが必要です。しかし、どれほど優れたアルゴリズムでも、多くのデータをインプットしなければならないAIソリューションでは、現場の負担を大幅に減らすことは難しいでしょう。

運行計画は季節や時期によって頻繁に変更が必要となるため、迅速に部分的な修正ができる仕様が求められます。ALGO ARTISのAIソリューションには「マスター」というデータを収める仕組みがあり、高度なアルゴリズムがこのマスターを柔軟に処理します。

また、ALGO ARTISのAIソリューションは完全なオーダーメイド仕様であるため、どのような運行計画においても最適化しやすく、現場特有の問題にも柔軟に対応できるのが特徴です。これにより、安全性と効率性の向上が実現します。

エンジニアが最適化の際に注意している点は以下の通りです:

  • 各種コストを削減

  • リスクを最小化

  • 環境負荷を低減

安全・効率的な運行計画はこれらの取り組みによって実現され、環境への配慮も世界的な課題に応じた取り組みの一つです。

<2>短時間での対応、緊急時にも柔軟に対応する業務負荷の改善

車両事故などの影響で急に運行計画を変更する必要がある場合も多く、その際に熟練の担当者がいないと対応が遅れる可能性があります。しかし、ALGO ARTISのAIソリューションは、簡単に操作でき習得しやすい仕様となっており、担当者が熟練者でなくても迅速に対応できるよう工夫されています。
計算時間は最短で数分、最大でも30分以内に結果を得られるため、緊急時でも速やかに対応が可能です。これにより、現場の業務負荷が軽減されます。これらの作業を全て人間が行うと、時間がかかり、運行計画の安全性を検証する時間を確保することが難しくなるでしょう。

<3>AIが作り人が判断する納得性

アルゴリズムによって効率的で制約条件に合致した案が策定されますが、担当者が内容に応じて修正できる仕様を備えることが重要です。AIが提案し、人間が最終判断を下し、必要に応じて修正を加えるというフローにより、多くの人が納得できる運行計画に繋がります。
また、AI最適化技術の導入は、運行計画担当者の人員補充にも良い影響を与えると考えられます。

ここまで、バスや鉄道車両における運行計画の概要とその課題についてお伝えしました。
次回は、名鉄バス株式会社におけるAIソリューション導入の事例をご紹介いたします。


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