新規オープン介護施設、失敗する要因【反面教師】
こんにちはアルゴです。
オープニング施設って憧れますよね!新しい環境で心機一転仕事ができる環境・・・どこかの施設を退職して転職を考えている介護士にとって、とても良い環境のように思われます。
しかし実際、オープンして2,3年でつぶれてしまうという施設もあります。
人手不足であったり、お客様が集まらなかったりすることが主な要因です。
私自身は過去にユニット型特養の立ち上げに関わったこともあります。
華やかなオープニングのイメージとはうらはらに、何もかもゼロから組み立てていく苦労は想像以上でした。
数々の失敗があり、「こういうふうにすれば良かったんじゃないか?」という点が多々ありました。今日はそれについてお話します。
仕組み作り・・・ゼロからやらなくて良いこと多数
コンビニやファミレスのように、全国的に事業展開しているフランチャイズであれば、しっかりとしたマニュアル、ノウハウがあるので、新しくオープンしてもスムーズに開始できます。
(その後、継続できるかはその店しだいですが…)
これに対し介護施設というのは、たとえば介護保険によって運営されている同じ特養であっても、使われているマニュアルや書類の形式、職員の動きとかが施設によって全然違うんですよね。
まぁ、建物の構造やお客様の特性、地域の味などが出ますから当然とも言えます。
それは良いところでもあり、悪いところでもあります。窓から海が見える特養とか、ステキじゃありませんか。そうなると、そこで行われるレクとかもそれを活かしたたものになりそうですよね。
(全国展開しているセ◯トケアなどもありますけど)
しかしオープニングで新しい施設の仕組みを作っていくということは、ものすごい大変なことなのです。
ただその中では、オープニングだからといって何もかも、ゼロからやるというのは無駄が増えます。
私が関わったオープニングがまさにそうで、
「事故報告書の書式はどうする?」
「アセスメントはどんな書式で行う?」
とか、一つ一つについて、オープニングスタッフで議論が交わされていました。
今思えば、これがかなり無駄な時間だったと感じます。
オープニングスタッフがたくさん集まって一つ一つの書式について考えても、全員の意見なんてまとまることはないし、皆、過去の介護経験にとらわれて話をします。
なので、管理職など責任のある人が、サクっと作って「とりあえずこれを使います」というカタチで運用したほうが良いのです。
結局オープニングで決めても、
「実際運用してみたけど、ここはこのように変えたほうが良いね」
という意見が必ず出てきます。その時に調整していくことになりますから。オープニングで時間をかけすぎて決めるのは時間の無駄です。
ノウハウや実績があり、完全にマニュアル化されているフランチャイズならともかく、これから何があるかわからないという状態では、オープニングでかけた多大な時間が無駄になってしまうも多いのです。
とりあえず6割〜7割くらいで走り出してみる・・・やりながら調整する・・・これで良いのだと思います。
休憩室や喫煙場所はあるか?
皆さんの施設に休憩室ってありますかね?
職員の休憩室はめちゃくちゃ大切だと私は思います。
私は就業した以外にも、研修や実習、見学などで様々な施設に行きましたが・・・
うまくいっている施設は職員用の休憩室がしっかり確保されていました。
最後に就職したブラック施設は休憩室がなく、お客様がいる場所で職員がご飯休憩をしていました。何かあると休憩中でもヘルプとして呼ばれてしまう状況です。
専用の休憩室があるかないかで、経営者がどれだけ職員のことを大切に思っているかがわかります。
ホーム長の部屋だけが豪華・・・というのは論外です。
そして休憩室と同じくらい大切なのは喫煙室です。
私自身はタバコを一切吸いません。ですが、喫煙者にとって喫煙がどれだけ重要なのかというのはわかっています。
喫煙じたいが悪いものなのではなく、それによって他の職員やお客様に害がおよぶことが問題です。
・しっかりと分煙できるスペース(近所迷惑にもならない)
・制服に臭いがつくのを防止するために着替えて吸う
・終了後は歯磨きやブレスケアなどをする
・各自が携帯灰皿を使用する
こういった一定のルールを設ければ問題ありません。
若者のタバコ離れ、世の中の分煙・禁煙風潮があるので、新しく作る施設は最初からタバコが吸える場所がないという事も多いようです。
私の関わったオープニング施設がまさにそうでした。ですが結局、多くの職員の要望を受けて後から増設するかたちになりました。
ともあれ、休憩室や喫煙室というのは、職員がホッとくつろぐために必要なスペースです。
こうしたスペースがなければ、職員のストレスが解消される場所がなく、それが人間関係の悪化、退職、接客レベルの低下に発展していくこともあります。
職員というのは介護施設の宝ですから、それを大切にしない施設はお客様を大切にしないというのも同然です。
見切り発進ではいけないこと、ユニット型施設の重要なポイント
ゼロから物事を作っていくというのはコスパが悪いということは本記事の最初にお話しました。
しかし逆に、絶対に見切り発進ではいけないことがあります。
それは人材確保と、お客様の誘致です。
私がオープニングを経験したユニット型特養のケースでお話します。
ユニットケアというのは良くも悪くも国が想定した人員配置というものがあります。これについては過去の記事で詳しくお話しています。
基本的には2:1です。 常勤職員1人に対して2人のご利用者(居室担当など)をケアする想定で、協力ユニット20人のご利用者に対して、常勤職員10人が必要という計算になります。
まぁ、ほとんどの施設がこれを確保できてないでしょう。
私が過去にユニットリーダーをやっていた経験から言うと、早番、遅番、日勤、夜勤(8時間)をまわしていくのに、協力ユニットで常勤が9人いればなんとかなる状態です。
8人になるとぎりアウトです。早番〜遅番、遅番〜夜勤などいわゆる『通し勤務』『超過勤務』などの残業が発生します。入浴が実施できないこともあります。7人のこともありましたが、シフトを組むことができず、リーダーの私が休日出勤することも多かったです。
人手不足から職員が過酷な勤務を強いられると、個々のモチベーションは低下し、サービスの質も低下します。
そして職員がどんどん辞めてしまい、さらなる人手不足・・・悪循環に陥ります。
なので、ユニットケアで推奨される1ユニットで常勤職員5人、協力ユニットで常勤職員10人というのは、なるほどたしかに理にかなう安定した数字です。
オープニングという観点で話を戻しますが、このユニットをオープンさせるために、必要などれだけ確保できているかというのはとても重要な問題です。
1ユニット常勤職員をユニットケアで基本とする5人と考え、これが全部で10ユニットあるとします。
いざオープニングでお年寄りが入居してくる・・・という段階になると、50人の常勤介護職員が必要という計算です。
オープニングは人が集まりやすいのですけど、50人という職員を確保できない場合に、全部のユニットを開放してしまうことは絶対にだめです。
当然ながら全体で50人いないので、全てのユニットで人手不足が発生します。
オープニングの段階で、ご利用者が同時に入居する事は考えにくいです。
なので最初は1つのユニットにご利用者1人だけ入所・・・少しずつ増やしていくというのが自然な流れです。
それはとても良いのですが、これを全ユニット同時に行うと大変なことになります。
そのユニットに入居しているご利用者がたとえ1人であっても、そこに必要な職員を配置しないと、早番、遅番、日勤、夜勤のシフトが作れなくなるからです。
なので、上図右側のように、最初は職員が不足なく、シフトがまわる状態でユニットを開放し、その後職員が入職などで増え、必要な人員数が確保できてから順次ユニットを開放していくというのが、オープニングの望ましいかたちなのです。
たぶん、オープニングに関わったことがある方は、
「それ普通だよ」
って思うかもしれませんが、私がはじめて立ち上げから関わったユニット型特養は、まさに悪い方の例でした。
全ユニットをオープンできる職員が集まっていないのにも関わらず、全ユニットにそれぞれお客様を招いてしまいました。
そうなると、どこのユニットでも人手不足は避けられません。無理なシフトを組み、職員が疲弊していきます。ユニット間で人員を援助しようにも、どこも人手不足なのでそれができなくなります。
オープニングはやりがいがあります
オープニング介護施設に関わるというのは、想像しているよりもめちゃくちゃ大変なことでしたが、新しいものを自分たちで造りあげていくという意味では、本当に楽しかったです。
職員が全員、その施設において新人ですから、皆、心機一転という気持ちで望んでいます。
ですが、他の施設に不満があって辞めてきた人も多いので、下手するとすぐに愚痴や不満の温床となってしまいます。
難しさもありますが、進め方しだいでは古い施設にはない良い施設が出来上がっていくと思います。
そして私がこんな記事を書いているのは、フリーランスとしてではありますが、この秋から再びオープニング介護施設に携わることになるからです。
以前のように正社員としてではないので気楽ではありますが、以前のオープニング失敗体験を活かせればと思ってます。
<著書>
介護リーダーの『裏』教科書