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杉本博司「歴史の歴史」展 2003年銀座メゾンエルメス・フォーラム

現代美術 × 古美術スタイル

会場パンフレット(表紙・裏表紙)

杉本博司が自身の現代美術と古美術の作品を取り合わせて展示した最初の展覧会です。

評判が良かったのとご本人も手応えを感じた様子で、その後海外で展覧会が開催され、2008年には規模を拡大して同名の凱旋展覧会が国内開催されました。

この現代美術 × 古美術との取合わせは、これ以降の杉本博司の展示スタイルとなりました。
その試み的展示が、2003年に銀座メゾンエルメスのアートギャラリー「フォーラム」で開催された「歴史の歴史」展でした。

「歴史の歴史」2003年版図録

展覧会図録に掲載された展覧会タイトルの説明文末尾を次のように結んでいます。

書かれた歴史と書かれなかった歴史、それからもうひとつ、これから書かれる歴史がある。ここに掲載するのは歴史のほんの少しの断片であり、あなた自身が組み立てる未来の歴史の組立キットのためのパーツである。

『歴史の歴史 杉本博司』
2004年発行(六耀社)

図録の表紙作品

《時間の矢》1987年
(「海景」:1980年、火焔宝珠形舎利容器残欠:鎌倉時代)
ゼラチン・シルバー・プリント、銅に鍍金 H8.4cm

喪われた仏舎利のかわりに海景写真が嵌め込まれています。
火焔の中にたたずむ海を、地球が誕生して間もない歴史を連想させるという。
時間の矢が太古の海から鎌倉時代の縁を突き抜けて、今、私たちの目に届いた、という。

初めて見た時、そしてそのこころを聴いて唸った覚えがあります。

図録の裏表紙作品

《獅子座火焔宝珠形舎利容器》
獅子座:鎌倉時代、舎利容器:南北朝時代
木造彩色、玉眼(獅子座)、銅に鍍金(火焔)
H21cm × W21cm

獅子像に乗る文殊菩薩像は失われています。
叡尊などが喧伝した舎利信仰と文殊信仰の一体化という歴史を背景に、ほぼ同時代の金剛舎利容器を新造した蓮台部分を古色付けして据えたものです。

展示の様子

フォーラムの会場には、《海景》作品のほか、《ジオラマ》シリーズの中から選ばれ構成された《白黒因果史》がありました。

古美術作品では《春日若宮曼陀羅》や《女神像》など、最近も展示されている作品がありました。

護王神社の雛形(模型)は会場中央に鎮座していました。
現在は直島のベネッセに在るものです。

建築としての銀座メゾンエルメス

建築家はレンゾ・ピアノ
杉本博司は展覧会を開催した美術館や会場を、作品を展示する作家の立場から評価しています。
メゾンエルメスは満点の5ッ星です。
☆☆☆☆☆

地震国日本での耐震基準をクリアーし、かつ建築としての独自の表現を実現させ得た器量は評価される。二層吹き抜けのギャラリー空間には、ガラスブロックで透過された、独特の光りの質が充満している。

『空間感』杉本博司 2011年 マガジンハウス
「スターアーキテクト採点表」より
印象的なガラスブロック


銀座メゾンエルメス・フォーラム 杉本博司「歴史の歴史」展は、2003.10.20(月)~12.28(日)に開催されました。

https://www.hermes.com/jp/ja/content/maison-ginza/forum/031020/


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