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霊性|鈴木大拙展 Life=Zen=Art
※2022年7月12日から10月30日に、ワタリウム 美術館で開催された展覧会についての記事です。
「霊性」をテーマした展覧会…というより
鈴木大拙と禅を全面にした展覧会です。
大拙は仏教に関する著作が数多く、代表作として挙げられることが多いのが『禅と日本文化』『日本的霊性』です。
※展示内容や構成について、既に大変多くの詳細なレポートがあるのでここでは割愛します。
「禅」を世界にひろめたとされる大拙がコロンビア大学で講義を行なった時に聴講したジョン・ケージや禅をモチーフにしたアートや、大拙の弟子であった柳宗悦、大拙の親友西田幾太郎の書、他にも岡倉天心、仙崖、マレーヴィッチ、ヨーゼフ・ボイス、ナムジュン・パイク、坂本龍一、山内祥太などが展示されました。
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壁面は《十牛図》
手前は《マルセルについて何も言いたくない》
会場のご挨拶文より
鈴木大拙は、現代芸術の一つの巨大な源泉である。大拙を軸にして、いまここに、美術の新たな歴史が築かれる
(中略)
鈴木大拙からはじまる表現の系譜、その未知なる可能性を、さらに未来へと切り拓いていくための試み
テキストは安藤礼二氏
挨拶文や関連する企画などで、テキストを担当した安藤礼二氏は、大拙だけでなくベアトリス夫人が信奉していた神智学やその周辺、大拙と書簡のやりとりがあったとされる(書簡は未発見)南方熊楠の思考もあわせ、「霊性」を現代アートに繋がるひとつの系譜として説いています。
安藤氏は、霊性をテーマにアートとの接続を試みる、霊性研修の先頭集団のうちのひとりだと思います。
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鈴木大拙館所蔵
霊性の研究者たち
では「霊性」をテーマのひとつにする研究者はどのような方か紹介したいと思います。
■第一人者は末木文美彦氏です。
「霊性」に限らず、仏教学・思想史家として仏教に関する多くの著作があります。大拙や霊性では、角川ソフィア文庫版『日本的霊性完全版』の解説文が簡潔かつ判り易いです。
数多くある大拙の評論の中でも際立っています。
本当に理解している人は説明も簡潔だという一例です。
■若松英輔氏は批評家・随筆家です。
「霊性」について、丁寧で読み易い文書で綴ってくれています。媒体への露出も多く優しい雰囲気にファンの方も多いようです。
■鎌田東二氏は宗教哲学者です。
大拙というより神道に重心において歴史を俯瞰した視線で「霊性」をひもといています。
■他にも「霊性」研究者はありますが、別の機会に触れて行きたいと思います。
鈴木大拙は1870年に生まれ1966年に亡くなりました。
やがて没後60年を迎えます。
その前後には、大拙研究論文や展示が増えるかもしれませんので、今から楽しみにしています。
ワタリウム 美術館 (東京 青山)
鈴木大拙館 (金沢 本多町)